毎年同じ質問に、飽きていませんか
こんにちは、あなたらしいキャリアの一歩を、いっしょに考える【あおラボ】です。
「自己PRをお書きください」「学生時代に力を入れたことは何ですか」。ESや面接の質問を調べると、どれも見たことのあるものばかりだ。先輩の体験談にも、ネットの例文にも、同じ質問が並んでいる。
そう思うと、少し気が抜けないだろうか。「どうせ定番だから、型どおりに答えておけばいい」と。あるいは逆に、「みんな同じ答えになりそうで、どう差をつければいいかわからない」と。
今日から11月の連載が始まる。この1か月は、定番の質問を使って、自分をもう一段深く掘っていく。最初の一歩として、なぜ質問が毎年同じなのか、その裏で企業が何を知りたいのかを、あなたの目線で読み解いてみたい。
Chapter 1 「定番質問」は、なぜ定番なのか
最初に、素朴な疑問から始めたい。質問が毎年同じなら、企業は工夫が足りないのだろうか。実は、同じであることには、はっきりした理由がある。その理由を知ると、定番質問の見え方が変わってくる。
1-1 質問が同じなのは、手抜きではない
「企業は毎年、同じ質問ばかりしている」。そう感じるのは自然なことだ。私も、学生から「もっと新しい質問はないのでしょうか」と聞かれたことがある。
けれど、同じ質問が長く使われているのは、使い続ける価値があるからだ。企業にとって、選考は人を見極める大切な機会である。入社後に長く一緒に働く人を選ぶのだから、よく錬らた質問は、簡単には手放さない。
あおラボが学生や企業の方と接していても、質問の顔ぶれは、ここ数年ほとんど変わっていない。変わるのは言い回しや順番くらいだ。
つまり、定番質問は「考えるのをやめた結果」ではなく、「残るべくして残った質問」だと言える。そう受け取ると、型どおりに流す気持ちにはなれなくなるはずだ。向き合う価値のある質問が、毎年まっすぐ用意されているのだから。
1-2 短い時間で、企業が知りたいことは限られている
面接は、たいてい30分から1時間ほどだ。ESは、数百字の欄がいくつかあるだけである。企業は、その限られた材料で、その人を理解しなければならない。
しかも、知りたいことは、実はそれほど多くない。この人と一緒に働けるか。仕事を任せたとき、どう動く人か。うちの会社を選ぶ理由があるか。大きく言えば、この3つに集まっていく。
日本経団連が会員企業に行っている「新卒採用に関するアンケート調査」の2018年度分 では、選考にあたって特に重視した点(25項目から5つを選ぶ形式)の1位が「コミュニケーション能力」の82.4%、2位が「主体性」の64.3%だった。上位に並ぶのは、人柄や行動にかかわる項目である。(出典は同調査を紹介した報道による。最新年度の数値ではないが、長く同じ傾向が続いている)
見たいものが決まっているから、質問も決まってくる。定番になるのは、当然の流れなのだ。
1-3 同じ質問だから、比べることができる
もう一つ、大切な理由がある。同じ質問をするから、人と人を比べられるのだ。
面接官が、学生ごとにまったく違う質問をしたら、どうなるだろう。Aさんには趣味を聞き、Bさんには部活を聞く。それでは、どちらが自社に合うのか、判断のしようがない。
人事の研究では、あらかじめ質問を決めて、同じ基準で評価する「構造化面接」のほうが、その場の流れで聞く面接より、入社後の成果を予測しやすいことが知られている。シュミットとハンターが1998年に発表した、85年分の研究をまとめた分析では、予測の精度を表す数値が、構造化面接で0.51、構造化されていない面接で0.38だった。(のちに2022年、サケットらがこの数値を計算し直し、全体に低めの値になったが、構造化面接のほうが有利という点は変わらなかったと報告されている)
企業が質問をそろえるのは、公平に、きちんと見るための工夫である。あなたにとっても、同じ土俵で見てもらえるということだ。
1-4 定番だからこそ、準備が結果に出る
ここまで読むと、少し見方が変わったのではないだろうか。定番質問は、予告された試験問題のようなものだ。出ることがわかっている。
出ることがわかっている問いに、準備せずに臨むのは、もったいない。反対に、準備した人は、はっきり差がつく。毎年同じ質問だからこそ、答えに君の深さが出る。
ここで言う準備とは、立派な文章を暗記することではない。質問を受けたとき、君の中に答えの材料がある状態をつくることだ。10月の連載で書き出した動詞のリストや、一行は、まさにその材料になっている。
この1か月は、その材料を使って、定番質問のひとつひとつに向き合っていく。順番に掘ることで、ESにも面接にも使える自分の言葉が育っていく。

Chapter 2 質問の裏にある、企業の知りたいこと
質問には、必ず「訊く理由」がある。表に出ている問いと、裏にある本当の問いは、少し違うことが多い。ここでは、よく出る質問を取り上げて、その裏側を読んでみたい。
2-1 「自己PR」は、再現できる強みかを見ている
自己PRを聞かれたとき、多くの学生は「自分の良いところを教えてください」という意味だと受け取る。もちろん、それも間違いではない。
けれど、企業が本当に知りたいのは、その強みが「入社後に活かされるか」という点だ。学生時代に一度うまくいった話ではなく、場所が変わっても発揮される力かどうかを見たい。
10月の連載で、「スキル」は場所によって価値が変わるが、「コンピテンシー」は持ち運べる、という話をした。企業が見ているのは、まさにこの持ち運べる力である。
だから、自己PRの答えには、「私の強みは○○です」だけでなく、それが発揮した場面が欠かせない。場面があると、聞き手は「この人は、うちでも同じように動きそうだ」と想像できる。強みの名前より、場面のほうが、再現性を伝える力を持っている。
2-2 「ガクチカ」は、行動のくせを見ている
「学生時代に力を入れたことは何ですか」。この質問で、企業は成果の大きさを知りたいわけではない。全国大会に出たか、何人まとめたか、といった肩書きは、実はそれほど重要ではない。
見ているのは、その経験の中で、君がどう考え、どう動いたかだ。困ったとき、まず何をするのか。人に頼るのか、ひとりで抱えるのか。その行動のくせは、入社後の仕事でも、ほぼそのまま出る。
だから、経験の大きさで悩む必要はない。アルバイトでも、ゼミでも、サークルの裏方でも構わない。自分が考えて動いた場面があれば、ガクチカの材料になる。
大きな経験やキラキラした経験がないと焦っている人ほど、まず、自分が動いた場面を思い出してほしい。小さな場面でも、そこにあなたの動き方が表れている。企業は、そこを見ているのだ。
2-3 「志望動機」は、合うかどうかを確かめている
志望動機は、「うちの会社を好きかどうか」を聞いているように見える。しかし、本当の問いは少し違う。「入社したあと、お互いに不幸にならないか」を確かめているのだ。
企業にとって、早期の離職は大きな損失である。学生にとっても、合わない職場で働くのはつらい。だから志望動機の質問は、双方のためのすり合わせの場になっている。
この質問に、会社の特徴をほめる言葉を並べても、あまり伝わらない。「御社の理念に共感しました」だけでは、どの会社にも言えてしまうからだ。
伝わるのは、自分の強みや大切にしたいことと、その会社の仕事の中身が、どう重なるかを語った答えである。つまり志望動機は、企業の話に見えて、自己分析の続きでもある。この点は、11月の後半で詳しく扱う。
2-4 「長所と短所」は、自分を客観的に見られるかを見ている
長所と短所は、定番中の定番だ。ここで企業が見ているのは、実は長所そのものではない。自分を、冷静に、少し離れた目で見られるかどうかである。
短所を聞かれて、「特にありません」と答える人はいない。かといって、致命的な欠点を言う必要もない。見られているのは、自分の弱みを知っていて、それとどう付き合っているかだ。
仕事には、必ず苦手なことが出てくる。そのとき、苦手を認めて工夫できる人か、認められずに固まってしまう人か。企業は、その違いを知りたいのだ。
10月の連載で、偏りは欠点ではなく、選ぶための物差しになると書いた。長所と短所は、同じ根っこから出ている。この見方ができる人は、短所の話をするときも、落ち着いて話すことができる。
Chapter 3 学生の目線で、読み直してみる
企業側の事情がわかったら、次は、君の側から見直してみたい。定番質問は、企業のためだけのものではない。使い方次第で、君が自分を知るための道具にもなる。
3-1 試されているのは、「正解」ではない
面接の前は、「正しい答えを言わなければ」と緊張しやすい。けれど、定番質問に、決まった正解はない。
正解があるなら、企業は質問などせず、答えのチェックリストを配れば済む。そうしないのは、答えの中身ではなく、君がどう考えて、どう話すかを観たいからだ。
だから、模範解答を探すほど、かえって遠回りになる。例文を集めて、いちばん良さそうなものを選んでも、それは君の答えではない。聞き手には、借り物の言葉はすぐに伝わってしまう。
大切なのは、君の経験から出た、君の言葉で答えることだ。言葉は多少ぎこちなくても構わない。ぎこちなさの中に、君自身の実感があるほうが、ずっと信頼される。正解を探すのをやめた瞬間から、準備は楽になる。
3-2 企業も、あなたを知りたくて不安なのだ
選考の場では、学生のほうが一方的に評価されている気がしやすい。しかし、企業の側にも、大きな不安がある。
限られた時間で、その人の人柄と力を見極めなければならない。見誤れば、採用にかけた費用も、入社後の時間も、お互いに失われる。だから、面接官も真剣に、あなたのことを知ろうとしている。
そう思えると、質問の見え方が変わってこないだろうか。定番質問は、あなたを落とすための罠ではない。あなたを知るための、金言なのである。
面接官は、あなたを理解したくて質問している。その気持ちに、こちらも、自分を知ってもらいたい気持ちで応えればいい。うまく見せようとするより、ありのままを正確に伝えるほうが、結果的に、お互いにとって良い出会いにつながる。
3-3 同じ質問でも、答えは人の数だけある
「みんなが同じ質問に答えるなら、同じような答えになるのでは」。そんな心配を、よく聞く。
けれど実際には、同じ質問への答えは、驚くほど人によって違う。経験が違い、感じ方が違い、選んだ言葉が違うからだ。「サークルで部長をしました」という同じ事実でも、何に悩み、どう動いたかは、一人ひとりまったく異なる。
差がつくのは、題材の派手さではなく、その経験を君がどう受け止めたかの深さである。同じ質問が続くからこそ、答えの深さが、そのまま人柄の違いとして伝わる。
だから、他の人と違うことを言おうと、無理にひねる必要はない。君の経験を、君の考察で正直に掘っていけば、それだけで、他にない答えになる。個性は、探しに行くものではなく、掘れば出てくるものだ。
3-4 質問は、君を深める問いとして使える
ここまで、企業の側と、君の側から、定番質問を見てきた。もう一つ、大切な見方がある。
定番質問は、実によくできた問いの集まりだ。「あなたの強みは何か」「何に力を入れたか」「なぜその道を選ぶのか」。これらは、人生のさまざまな場面で、自分に問い直したくなる問いでもある。
選考のための質問に見えて、その答えを考える過程は、自己理解そのものである。ESや面接が終わっても、君の中に残る。
あおラボは、キャリア形成を就職活動だけで終わるものだとは考えていない。働くことも含めて、どう生きたいかという、人生丸ごとでキャリアを捉えている。定番質問に向き合う時間は、そのための練習にもなる。内定のためだけでなく、君自身のために、質問を使ってみてほしい。

Chapter 4 今日から、できること
企業の知りたいことが見えたところで、動き出すための話をしたい。学年によって、いまの時期にできることは少し違う。それぞれの立場で、無理なく始められる動き方を整理した。
4-1 3年生は、本選考を見据えて「材料」を確かめる
大学3年生のあなたは、夏のインターンを終えて、秋冬のインターンと、(早期)本選考の準備が重なる時期にいると思う。まわりの動きが早く感じられて、気持ちが急く人もいるだろう。
あおラボが学生と接している実感としても、ここ数年、就活の動き出しは早くなっている。だからといって、焦って文章を量産する必要はない。
まずやってほしいのは、10月につくった材料の確認だ。動詞のリスト、一行、ES用の下書き。これらが手元にあるかを確かめる。次に、この連載で扱う定番質問を、自分の材料とつなげていく。
インターンで質問を受ける機会があれば、それも貴重な練習になる。うまく答えられなかった質問は、記録しておくといい。それが、本選考の前に深めるべき場所を教えてくれる。
4-2 2年生は、質問に慣れることから始める
大学2年生のあなたにとって、就活はまだ少し先の話に感じられるかもしれない。それで大丈夫だ。今日から、本気で準備を始める必要はない。
2年生のうちにできるいちばん良いことは、質問に「慣れておく」ことだ。定番質問を読んで、「自分ならどう答えるだろう」と、頭の中で考えてみる。それだけで十分に価値がある。
答えが出なくても、構わない。答えられない問いは、これから経験を積む場所を教えてくれる。「ガクチカが思いつかない」と気づけたなら、残りの学生生活で何に取り組むかを、君自身で選べる。
早く気づいた人には、時間という大きな味方が手に入る。これからの経験を、質問を意識しながら過ごすだけで、後の自己分析が深くなる。急がなくていい。ただ、知っておくだけで、違ってくる。
もうひとつ、多くの2年生は3年生の夏にインターンシップ参加を考えていると思う。実は企業によってはインターンにも本選考レベルの選考が行われる。だから、2年生のこの時期から着手することは決して早すぎる話ではないのだ。
4-3 定番質問を、10個書き出してみる
今日の作業を一つ、提案したい。ES・面接でよく出る質問を、自分の手で10個、書き出してほしい。
例を挙げる。自己PR、ガクチカ、志望動機、長所、短所、挫折の経験、困難を乗り越えた経験、チームでの役割、将来の目標、最後に一言。思いつかなければ、この例を使っても構わない。
書き出すときのコツは、答えを書かないことだ。質問だけを、ノートに並べる。答えを考え始めると、手が止まってしまう。
並べたら、それぞれの質問の隣に、「企業は、これで何を知りたいのだろう」と、一言だけ書き添えてみる。たとえば、自己PRの隣に「再現できる強みか」。この一言を書く作業が、今日の頭の使い方になる。10個書き終えるまで、20分もかからないはずだ。
4-4 わからなかった質問に、印をつける
10個の質問を書き、企業の意図を書き添えたら、最後に一つだけ作業をしてほしい。書きにくかった質問に、印をつけるのだ。
たとえば、意図がまったく思い浮かばなかったもの。あるいは、考えると気が重くなったもの。そこには、あなたがまだ深く向き合っていない部分がある。
印がついた質問は、苦手な問いというより、これから伸びしろがある問いである。多くの学生が、苦手な質問を避けて、得意な質問ばかり練習してしまう。けれど、面接は、苦手な質問も平等に聞いてくる。
印をつけておくと、この1か月の連載で、どこに時間をかければいいかが、自分でわかるようになる。完璧に書き出す必要はない。印がつけば、それで今日の作業は十分だ。
今日のまとめ
ESや面接の質問が毎年同じなのは、手抜きではない。企業が限られた時間で見極めたいことは決まっていて、同じ質問のほうが、公平に比べられるからだ。
質問の裏には、それぞれ本当の問いがある。自己PRは、再現できる強みか。ガクチカは、行動のくせ。志望動機は、お互いに合うかどうか。長所と短所は、自分を客観的に見られるか。
定番質問に、決まった正解はない。あなたが自分の経験から出した言葉で答えることが、いちばん伝わる。そして、その答えを考える時間は、あなた自身を深める時間にもなる。
3年生は材料の確認を、2年生は質問に慣れることを。今日は、定番質問を10個書き出して、意図を一言添えてみてほしい。定番だからこそ、準備した分だけ、あなたの言葉になっていくのだ。
自己分析は、一度で終わるものではなく、問いを重ねるたびに深まっていくものだと、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。