11月は「言葉と行動」を揃える月——10月の続きの地図

10月に試したことを、11月は「習慣化」する。

こんにちは、あなたと、あなたの組織が、もっと元気になるお手伝いをしている【あおラボ】です。

10月に、あいさつを変えてみた。声のかけ方を変えてみた。メンバーに問いかけてみた。そのあと、どうなっただろうか。

1回やってみて、手応えがあった日もあれば、忙しさに流されて、そのままになった日もあったと思う。それは自然なこと。試すところまで進めたこと自体が、すでに大きな一歩。今月は、試したことを「毎日の習慣」に育てていく月とします。

この連載の2か月目のテーマは「言葉と行動を揃える」ことだ。今日は、10月を振り返り、今月の流れをつかみ、読み終えたその瞬間から、1つ選んで動けるように、地図を広げたい。

Chapter 1 10月に試したことを、振り返る

10月は、現状をつかみ、土台を整える月だった。振り返りは、できなかったことを数える時間ではない。やってみたことを、確かめる時間である。この章では、10月に試した5つのことを、もう一度、手元に引き寄せてみる。うまくいったかどうかは、あとで考えればいい。まず、何をやったかを並べてみよう。

1-1 チームの「今」を見たことは、出発点になっている

10月の最初に取り組んだのは、チームの今を、チェックシートで確かめることだった。

報告は上がってくるか。発言は偏っていないか。メンバーは困りごとを話してくれるか。こうした点を、感覚ではなく、目で見て確かめた。ここで大切なのは、点数の良し悪しではない。「うちのチームは、ここが弱い」「ここは意外とできている」という現在地が、言葉になったことである。現在地がわかっていれば、11月に何を揃えるかを、自分で選ぶことができる。

もしチェックシートを手元に残しているなら、もう一度、開いてみてほしい。「低かった項目」が、今月、最初に手を入れる場所の候補になる。見つからなければ、今のチームの様子を思い出して、気になる場面を1つ、書き出してみるだけでもいい。

1-2 あいさつと声かけは、一度で終わらせない

10月の中ごろには、あいさつを変え、声かけを変えてみた。

「おはよう」に名前を添える。「お疲れさま」のあとに、一言だけ足す。どれも小さな行動だが、メンバーにとっては「リーダーの何かが変わった」という合図になる。ただ、合図は、一度では届ききらない。昨日と同じあいさつを、今日も、明日も続けて、はじめて「この人は、本気で変えようとしている」と受け取ってもらえる。あいさつは、くり返されるほど意味が深くなる行動なのだ。

10月に、何日続いたかを数える必要はない。続かなかった日があっても、責めなくていい。思い出してほしいのは、あいさつを変えたとき、メンバーの返事や表情に、どんな変化があったかである。小さな変化を1つ、思い出してみてほしい。

1-3 問いかけと合言葉は、まだ「芽」の段階にある

10月の後半に試した「問いかけ」と「合言葉」は、まだ芽が出たばかりの段階である。

「どう思う?」と聞いてみた。チームで、大切にしたい言葉を決めてみた。どちらも、リーダーが何かを「言う」ことから始まる取り組みだ。だからこそ、気をつけたいことがある。言葉は、置かれただけでは、まだ職場の空気にならない。問いかけたあとに、メンバーの答えを待つ。合言葉を決めたあとに、その言葉どおりに動いてみる。言葉のあとに行動が続いて、はじめて、言葉は根を張る。今月は、その根を張らせる月にしよう。

あなたが決めた合言葉があるなら、今、頭の中で言ってみてほしい。そして、その言葉どおりに動いた場面を、最近のなかから1つ探してみてほしい。見つかれば、それは大切な手がかりになる。見つからなくても、それはそれで、手を入れる場所が見えたということである。

1-4 「やってみた」という事実が、いちばんの資産になる

10月にやったことを思い返すと、「中途半端だった」と感じる人もいるかもしれない。

けれど、読むだけで終わらせず、実際に試した経験は、それだけで大きな資産である。うまくいかなかった場面も、「この言い方は、うちのチームには合わなかった」という、貴重な情報になる。経験のない状態で11月の話を読むのと、試した経験をもって読むのとでは、言葉の入り方がまったく違ってくる。試した人だけが、「だから、揃えることが大事なのか」と、実感をもって受け取れるのだ。

手帳やメモに、10月に試したことを、箇条書きで書き出してほしい。3行でも5行でもいい。書き出した紙は、この1か月、手元に置いておく。今月の終わりに見返したとき、自分の歩みが、はっきり見えてくる。

Chapter 2 なぜ、言葉と行動を「揃える」のか

今月の中心は、「言っていること」と「やっていること」を揃えることだ。つまり「言行一致」だ。なぜ、それほど大切なのか。メンバーは、リーダーの言葉を聞いているようで、実は、行動のほうをよく見ているからである。この章では、研究や書籍の知見を手がかりに、揃えることの意味と、習慣になるまでの時間について、確かめておきたい。

2-1 メンバーは、言葉より行動を見ている

「言っていることと、やっていることが同じかどうか」。この視点には、研究の裏づけがある。

組織行動論の研究者、米国コーネル大学のトニー・サイモンズ氏は、管理職の「言葉と行動が一致していると、部下がどれだけ感じているか」を「ビヘイビアル・インテグリティ(行動の一貫性)」と呼んで研究した。米国とカナダの76のホテルで、およそ6,500人以上の従業員に調査をした結果、管理職が約束を守ると従業員が感じている職場ほど、従業員の仕事への思い入れが強く、収益も高い傾向が見られたという(同氏の研究は、2002年にハーバード・ビジネス・レビュー誌でも紹介されている)。ホテルの調査の一例だが、中小企業のチームにも通じる話だと思う。リーダーが何を言うかと同じくらい、言ったことをやるかどうかが、チームの力を左右する。

ここで、気をつけたいことが1つある。この研究が測っているのは、「部下がどう感じているか」であって、リーダーの意図ではない。自分では守っているつもりでも、相手にそう見えていなければ、揃っていないことになる。自分の行動が、相手の目にどう映っているか。今月は、その視点を、少しだけ持ってみてほしい。

2-2 言葉が先に走ると、かえって逆効果になる

「なんでも相談してほしい」。多くのリーダーが、メンバーにそう伝えている。

とても大切な言葉だ。ただ、この言葉のあとに、相談されたときのリーダーの行動が続かなければ、事態は逆に動く。パソコンの画面から目を離さないまま「どうした」と答える。話の途中で「結論から言って」と遮る。メンバーは、「相談してと言われたけれど、やはり、相談しにくい」と学習してしまう。言葉があるぶん、「言っているのにやらない人」という印象が、残ってしまうのである。良かれと思って伝えた言葉が、信頼を減らすことになるのだ。

だから、今月は「言葉を増やす月」にしない。すでに口にしていることを、行動で裏づける月にする。「なんでも相談して」と言っているなら、相談が来た最初の10秒だけ、手を止めて顔を見る。たった10秒でも、行動が言葉に追いつくと、言葉の重みが変わっていく。

2-3 習慣になるまで、思ったより時間がかかる

「1週間続けたのに、まだ自然にできない」。そう感じても、がっかりしなくていい。

ロンドン大学(UCL)のフィリッパ・ラリー氏らの研究(2010年、European Journal of Social Psychology に掲載)では、新しい行動が「意識しなくてもできる」状態に近づくまでに、平均で66日かかったと報告されている。しかも、人や行動によって幅が大きく、18日から254日までと、大きな開きがあった。この研究は、健康に関わる行動を、毎日1回くり返す実験だ。職場のあいさつや声かけと、まったく同じとは言えない。ただ、「習慣は、数日では身につかない」という目安には、なると思う。

ここで大切なのは、66日という数字そのものではない。今月1か月は、習慣になる途中の、いちばん大変な時期にあたるということだ。うまくいかない日があっても、それは失敗ではなく、途中の景色なのである。

【H3】2-4 ずれは、次に手を入れる場所になる

言葉と行動がずれている場所を見つけると、少し気まずい気持ちになるかもしれない。

けれど、ずれは、責められるべきものではない。次に手を入れる場所を、教えてくれる目印である。米国スタンフォード大学のジェフリー・フェファー氏とロバート・サットン氏は、著書『なぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント』のなかで、「知識と行動のギャップ」 (The Knowing-Doing Gap) を埋めなければ、どれほど立派な経営理念を掲げても、会社は変われない。やるべきことを知っているだけでは不十分なのだ、と教えてくれている。

だから、ずれを見つけたら、「ここが、次の場所だ」と受け止めてほしい。自分を責めなくていい。大切なのは、ずれに気づいたあとに、行動を1つ変えることだ。今月のなかで見つけるずれは、12月の「続ける仕組み」をつくるときに、いちばん確かな材料になる。

Chapter 3 今月の流れを、先に見ておく

今月は、全部で9本の記事で、一歩ずつ進んでいく。どれも「読んで終わり」ではなく、「やってみる」ことを中心にした内容だ。ここでは、1か月の大きな流れを、週ごとに見渡しておきたい。全部を覚える必要はない。今の自分に近いところから、選んで始めてほしい。

3-1 今月の前半は、「聞く」と「口ぐせ」から始まる

最初に取り組むのは、リーダー自身の「聞く姿勢」と「口ぐせ」である。

相談されたとき、手を止めて最後まで聞けているか。自分がよく口にする言葉は、何か。「忙しい」「なんでできない」といった言葉が、知らず知らずのうちに、メンバーの動きを止めていることがある。口ぐせは、無意識の言葉と行動の記録だ。書き出して眺めると、自分では気づかなかったずれが、浮かび上がってくる。

聞く姿勢と口ぐせは、お金も時間もかからない。手帳が1冊あれば始められる。まず、自分を知ることから始めるのが、いちばん近道だと思う。

ここで取り組むのは、誰かを変えることではない。自分の言葉と行動を、静かに観察することだ。観察を始めると、「あのとき、画面を見たまま返事をしていた」「今週は、『忙しい』と何度も言っていた」といった気づきが、少しずつ集まってくる。気づきが集まれば、何を揃えるかは、自然に見えてくる。最初の週は、直そうとしなくていい。見るだけで十分である。

3-2 中ほどでは、ずれを見つけ、感謝を具体的にする

次に、言葉と行動の「ずれ」を、見つける方法を使ってみる。

「自分が言ったこと」「自分が実際にやったこと」「メンバーが受け取ったこと」。この3つを、並べて眺めるだけで、ずれは見つかる。そして、ずれを見つけたら、悪いところを探すだけでなく、良いところも、言葉にして伝えていく。「ありがとう」の一言に、「何が、どう助かったか」を足してみる。たとえば「資料を前日にまとめてくれて、会議の準備が楽になった」というふうにだ。感謝の言葉が、具体的な行動の中身で裏づけられると、メンバーには、確かに届く。

「ありがとう」だけでは、言われた側は、自分のどの行動が良かったのかがわからない。わからなければ、同じ行動をくり返すこともできない。何が助かったかまで言葉にすると、その行動は、チームの「良い見本」になっていく。ずれを見つける作業と、感謝を伝える作業。この2つを並べて進めることで、自分を厳しく見るだけの1か月にならずに済む。

3-3 後半は、問いかけと合言葉を、行動の基準にする

月の後半では、10月に芽を出した「問いかけ」と「合言葉」を、毎日の行動に落とし込む。

朝礼や1on1で、同じ問いをくり返す。合言葉を、「こんなときは、こうする」という行動の基準に言い換える。問いと合言葉は、一度決めたら終わりではない。使い続けるなかで、はじめて、チームの共通の言語になる。ここまで進むと、言葉と行動は、かなり近づいているはずだ。

どちらも、特別な道具はいらない。いつもの朝礼、いつもの1on1、いつものミーティングのなかに、一言だけ足せばいい。

ポイントは、新しい場をつくらないことだ。新しい会議や、新しい資料を増やすと、それ自体が負担になって、続かなくなる。すでにある場の、最初か最後の一言を変える。そのくらいの小ささが、ちょうどいい。同じ問いが、毎日同じ時間に届くと、メンバーの側にも、「そろそろ聞かれるな」と考えておく余裕が生まれる。

3-4 最後は、小さな約束を守り、1か月をふり返る

月の終わりには、言葉と行動を揃える「土台」を整え、1か月をふり返る。

土台とは、約束を守ることだ。守れる約束だけをする。守れなかったときは、早めに、正直に伝える。小さな約束を守る積み重ねが、信頼をつくる。そして、今月の最後の日には、1か月のメモを見返して、「揃ったこと」を確かめる。10月のふり返りと同じように、できたことを数える時間にしたい。ここまでたどり着いた自分を、しっかり認めてあげてほしい。

約束を守るというと、大きなことを想像しがちだが、そうではない。「あとで連絡する」と言ったら、その日のうちに連絡する。「確認しておく」と言ったことを、確認する。そのくらいの小さな約束である。守れそうにないことは、最初から引き受けない。もし守れなくなったときは、気づいた時点で、早めに理由を添えて伝える。この小さな誠実さの積み重ねが、リーダーの言葉に重みを与えていく。

Chapter 4 読み終えたら、まず「1つだけ」選ぶ

ここまで読んで、「やることが多そうだ」と感じたかもしれない。でも、安心してほしい。今月にやることは、結局、1つずつだ。一度に全部を揃えようとすると、かえって続かなくなる。この章では、今日から動き出すための選び方と、続けるための小さな工夫、そして部下や組織にとっての意味を、お伝えしたい。

4-1 10月に試したことから、1つだけ選ぶ

選ぶ基準は、とてもシンプルである。10月に試したなかで、「もう少し続けてみたい」と思ったものを、1つ選べばいい。

あいさつ、声かけ、問いかけ、合言葉、チェックシート。どれでもかまわない。うまくいったものを選んでもいいし、うまくいかなかったものを、もう一度やってみる、という選び方もある。大切なのは、「今日から月末まで、これだけは続ける」と決めることだ。1つに絞ると、行動が具体的になる。「声かけを頑張る」ではなく、「朝のあいさつで、必ず名前を呼ぶ」というところまで、小さく決めてしまう。

迷ったら、いちばん「簡単そうなもの」を選んでほしい。簡単なものから動き出したほうが、続く可能性は高い。続いた実感が、次の行動への力になる。

4-2 「いつ」「どこで」を決めておく

行動を習慣にするには、「いつ、どこで」を決めておくことが、助けになる。

「時間があるときに」と思っていると、時間がある日は、なかなか来ない。そこで、毎日必ず起こる出来事に、行動をくっつけてしまう。出社して席に座ったら、まず、メンバーの名前を呼んであいさつする。朝礼が終わったら、メモに一言だけ書く。こうして、すでにある習慣の「あと」に、新しい行動を置いておくと、思い出しやすくなる。意志の強さに頼らなくても、行動の流れのなかに、自然に組み込めるからだ。

あなたの毎日の流れを、頭の中でたどってみてほしい。出社、朝礼、昼休み、終業。そのなかで、いちばん安定している場面はどこか。そこに、今日選んだ行動を、くっつけてみてほしい。

4-3 毎週5分、自分の行動をふり返る

10月から続けてほしいと伝えてきた、毎週5分のふり返りは、今月も続ける。

今週、選んだ行動は何回できたか。できなかった日は、何があったか。長く書く必要はない。できたことに丸をつけて、できなかった日には、一言だけ理由を書く。この記録が、今月末に見返すときの、大きな材料になる。そして、記録を見ていると、自分の行動の癖が見えてくる。「月曜日は、いつも忙しくてできない」というふうに、傾向がわかれば、対策も立てられる。たとえば、月曜日にできないなら、月曜日の行動は「あいさつで名前を呼ぶ」だけに小さくしてもいい。続けるために行動の大きさを調整するのは、逃げではなく、工夫である。

ふり返りを書く場所は、1つに決めておくといい。手帳でも、スマホのメモでもかまわない。次の金曜日の夕方に、5分だけ、カレンダーに予定を入れておこう。

4-4 揃えることは、部下と組織のためになる

言葉と行動を揃えることは、リーダー自身の成長だけでなく、部下と組織のためにもなる。

言ったことをやるリーダーのもとでは、メンバーは、安心して相談できる。何を期待されているのかが、はっきりとわかる。「どうせ言うだけだろう」という、あきらめの空気が少なくなれば、ちょっとした気づきや、困りごとが、早めに上がってくるようになる。それは、ミスの早期発見や、チームの助け合いにつながり、組織全体の力になっていく。リーダーが行動を変える意味は、リーダー個人にとどまらない。

だから、あなたが選ぶ、たった1つの行動は、あなただけのためのものではない。まだ見えていない、メンバーの安心のためでもある。この記事を閉じる前に、選んだ行動を、手帳に1行、書き留めてほしい。

今日のまとめ

今月は、10月に試したことを、言葉と行動の両面から、毎日の習慣にしていく月である。

10月に、あなたは、チームの今を見て、あいさつや声かけを変え、問いかけと合言葉を試した。それだけで十分に、前へ進んでいる。メンバーは、言葉よりも行動を見ている。言葉が先に走らないよう、すでに口にしていることを、行動で裏づけていく。習慣になるまでには時間がかかるので、うまくいかない日があっても、途中の景色として受け止めればいい。そして、ずれは、責めるものではなく、次に手を入れる場所を教えてくれる目印である。

今日やることは、1つでいい。10月に試したなかから、続けたいことを1つだけ選ぶ。それを「いつ、どこで」やるかを決めて、手帳に1行、書き留める。それだけで、今月の第一歩は、もう踏み出せたことになるのだ。

あなたの一歩は、あなた自身のためだけでなく、メンバーのため、そして職場全体のためになると、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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