チームが同じ方向を向くために、言葉が要る。
こんにちは、あなたとあなたの組織の未来を共に創造し、組織の活性化を支援している【あおラボ】です。
「うちのチームは、みんなバラバラに動いている気がする」。そう感じたことはないだろうか。
目の前の仕事は、それぞれがきちんとこなしている。けれど、チームとして同じ方向を向いているという手応えがない。それは、方向性がないからではない。多くの場合、方向を表す共通の言葉がないからだ。頭の中では何となく共有しているつもりのことが、実は人によってまったく違う意味で受け取られている。そんなことは珍しくない。
前回(10月23日)は、メンバーが自ら動き出す問いかけの練習方法をお届けした。今日は、その問いかけを使いながら、チームが同じ方向を向くための「合言葉」をメンバーと一緒につくるワークをお届けする。ミーティング1回でできる。今週、チームで試してほしい。
Chapter 29 合言葉が、なぜチームを変えるのか
「合言葉なんて、ただのスローガンではないか」。そう感じるリーダーもいるかもしれない。けれど、つくり方と使い方しだいで、合言葉はチームの動き方を確かに変える。この章では、ワークに入る前に、合言葉がチームに与える影響を4つの面から確かめておきたい。
合言葉は、日々の判断の基準になる
チームに「ひとりで抱え込まない」という合言葉があれば、誰かが困ったときに「これは相談していいんだ」と判断できる。
「まず動いてみる」という合言葉があれば、「完璧でなくても試していいんだ」と判断できる。合言葉は、日々の小さな判断に基準を与えてくれるのだ。仕事の中では、上司に確かめる余裕のない判断が毎日のように生まれる。そのたびに、「チームの合言葉に沿っているか?」という問いが頭に浮かぶようになると、メンバーの行動が少しずつ揃い始める。言葉を共有することが、行動を共有することにつながっていく。判断の基準がそろえば、リーダーが細かく指示を出す必要も減っていく。
今のチームで、メンバーの判断が分かれやすい場面を1つ思い浮かべてほしい。その場面こそ、合言葉がいちばん役に立つ場所である。
「なんとなく共有できている」は、あぶない
「チームの方向性は、メンバーもわかっているはずだ」。そう思っていても、確かめてみると、一人ひとりが違う受け取り方をしていることは珍しくない。
たとえば「お客様第一」という言葉1つをとっても、「言われたことは何でもやる」と受け取る人がいれば、「お客様が長く喜ぶものを届ける」と受け取る人もいる。受け取り方が違えば、行動もまったく違ってくる。だから、言葉にして、共有して、同じ意味として腹に落とす必要があるのだ。「言わなくてもわかる」は、チームの中にすれ違いを生む。言葉にして確かめることで、はじめて同じ方向を向ける。
今のチームで大切にしている言葉を1つ選び、次の1on1で「この言葉、どういう意味だと思う?」と聞いてみてほしい。答えの違いに、驚くかもしれない。
チームで決めた言葉は、守られやすい
リーダーが決めた言葉と、チームで話し合って決めた言葉。メンバーへの根づき方は、大きく違う。
自分たちで話し合い、自分たちで選んだ言葉は、「自分たちのもの」として大切にされる。上から与えられたスローガンが形だけになりやすいのは、「自分たちで決めた」という感覚がないからである。壁に貼られたまま、誰も口にしない標語を見たことはないだろうか。今日のワークで大切なのは、リーダーが答えを出すのではなく、チームと一緒に言葉をつくる過程そのものだ。その過程で、10月23日にお届けした問いかけが役に立つ。
ワークの間、リーダーは答えを言わない役に徹してほしい。「どう思う?」と問いかけることに集中してほしい。リーダーの意見は、最後に一言添えるだけで十分だ。
合言葉は、小さくていい
「お客様に寄り添い続けるチームへ」「挑戦を恐れない職場」。こうした立派な言葉が浮かぶかもしれない。けれど、合言葉は大きく構えなくていい。
「まず話しかける」「困ったら声に出す」「ありがとうを言う」。こうした小さな言葉のほうが、毎日の行動に落とし込みやすい。立派な言葉は、聞いたときには心に響く。けれど、明日の朝、何をすればいいのかまでは教えてくれない。難しい言葉より、明日から使える言葉のほうが、チームにはずっと根づきやすいのだ。合言葉は、飾るための言葉ではなく、使うための言葉である。
合言葉の候補を考えるときは、「明日の朝、この言葉で何をするか」が浮かぶかどうかを基準にしてほしい。浮かばない言葉は、もう一段小さくしてほしい。

Chapter 30 ミーティング1回でできる合言葉ワーク
準備するものは、付せんとペンだけだ。時間は30〜45分を目安にしてほしい。ここから、ワークの進め方を4つのステップに分けてお伝えする。リーダーは進行役に徹し、答えを出すのはメンバーだ、という前提で読んでほしい。
ステップ① 「いいチームだと感じた場面」を一人ひとりが書く
最初に、全員に付せんを3枚ずつ配る。そして、「このチームで、いいなと感じた場面」や「こんなチームになったらいいなと思う場面」を書いてもらう。
1枚に1つの場面を書く。「誰かが困っていたとき、自然に声をかけてくれた」「ミーティングで、誰でも意見を言えた」「締め切りより早く仕上げて、助けてくれた」。どんな場面でもかまわない。このとき大切なのは、最初は一人ひとりが黙って書くことだ。いきなり話し合うと、声の大きな人の意見に引っ張られてしまう。まず自分の言葉で書く時間をとることで、全員の声がそろう。書く時間は、5分ほどで十分である。
書き終わったら、付せんを机の上や壁に並べてほしい。この時点では、良し悪しの判断はしないでほしい。全部の付せんを、同じように扱うことが大切だ。
ステップ② 共通するテーマでまとめる
全員の付せんを並べて見渡すと、似ている場面がいくつも見えてくる。
「相談しやすい」「助け合える」「率直に話せる」「失敗を責めない」。こうしたテーマで、付せんをまとめていく。リーダーが手を動かしてもいいし、全員で動かしてもいい。大切なのは、「全員の声が入っている」と感じられるようにすることだ。誰かの付せんを外すのではなく、似たものを寄せながら、共通する点を見つけていく作業である。どこにも入らない付せんがあれば、それも1つのテーマとして残しておく。少数の声の中に、大切な視点が隠れていることもあるからだ。
まとめ終わったら、それぞれのテーマに短い名前をつけてほしい。名前をつけるときも、「この固まりは、何と呼べばいいと思う?」と問いかけてほしい。
ステップ③ テーマの中から、合言葉を選ぶ
まとまったテーマの中から、「チームの合言葉にしたい言葉」を全員で選ぶ。
多数決でも、話し合いでもかまわない。選ぶ基準は、覚えやすいかどうか、そして明日から使えるかどうかだ。「話して、動いて、支え合う」でも、「まず聞く、一緒に考える」でもいい。チームが「これは自分たちの言葉だ」と感じられれば、それが正解である。リーダーが10月9日のワークで書いた一言があれば、ここで候補の1つとして出してもいい。ただし、リーダーの案を優先させないこと。候補の1つとして、同じように扱ってほしい。
言葉が決まったら、全員で一度声に出して読み上げてほしい。声に出して違和感がなければ、「この言葉でいこう」と確かめ合ってワークは完了である。
ステップ④ 合言葉を「目に入る場所」に置く
決まった合言葉は、チームの誰もがふだん目にする場所に置いてほしい。
ホワイトボードに書く。チャットのグループの説明欄に入れる。朝礼で毎回読み上げる。形はどれでもかまわない。大切なのは、「このチームには合言葉がある」と、毎日の中で思い出せる仕組みをつくることだ。目に入らなくなった言葉は、驚くほど早く忘れられていく。どんなに良い言葉でも、忘れられてしまえば、チームを動かす力は持てない。日常の中に溶け込ませて、はじめて合言葉は生きてくる。
ワークが終わったその日のうちに、合言葉を目に入る場所に置いてほしい。置く場所も、メンバーに決めてもらうといい。自分たちで決めた場所なら、目に入るたびに言葉を思い出せる。貼った後は、1週間ほどで見え方を確かめてほしい。
Chapter 31 合言葉を「行動」につなげる
合言葉は、決めて終わりではない。むしろ、決めた日からが本番である。この章では、合言葉を毎日の行動に落とし込み、チームの文化として育てていくための方法を、4つの面からお伝えする。
合言葉から「今週の行動」を1つ決める
合言葉が決まったら、「今週、この合言葉に沿って1つだけやること」をチームで決めてほしい。
合言葉が「ひとりで抱え込まない」なら、「今週、困ったら必ず誰かに声をかける」。「まず動いてみる」なら、「今週の課題の中から1つ、すぐに試してみる」。このように行動に落とすと、合言葉は飾りではなく、動くための言葉になる。行動が決まっていない合言葉は、どれだけ良い言葉でも、やがて壁の模様になってしまう。合言葉と行動をセットにする。この習慣が、合言葉を文化へと育てていく。
ワークの最後の5分で、「今週の行動」を1つ決めてほしい。決めた行動は、合言葉の下に書き添えておいてほしい。週が変わったら、新しい行動に書き換えてほしい。
合言葉を、振り返りに使う
週に1度の振り返りで、「今週、合言葉に沿えたか」を確かめる時間を持ってほしい。
「助け合えた場面はあったか」「困ったときに声に出せたか」。合言葉を軸にして振り返ると、行動の質が少しずつ上がっていく。振り返りの目的は、責めることではない。「来週はどう動くか」を考えることである。できなかったことより、できた場面を先に話すと、振り返りの空気が明るくなる。合言葉を軸にした振り返りをくり返すうちに、チームの中に「自分たちのやり方」が根づいていく。10月2日にお伝えした毎週5分の振り返りに、この問いを加えてもいい。
今週の金曜日に、チームで5分だけ振り返りの時間をとってほしい。最初の問いは、「合言葉に沿えた場面はどこだった?」にしてほしい。
合言葉は、育てていい
一度決めた合言葉を、ずっと変えてはいけないわけではない。チームの状態が変わるにつれて、言葉も変わっていく。
「前の合言葉より、今はこちらのほうがしっくりくる」と感じたら、また話し合えばいい。合言葉をつくり直すこと自体が、チームの対話の機会になる。むしろ、合言葉が現状に合わなくなっているのに使い続けるほうが、言葉の力を弱めてしまう。定期的に、「今の合言葉は、まだ自分たちに合っているか」を確かめる場を持ってほしい。3ヶ月に1度くらいが、ちょうどいい間隔だろう。
3ヶ月後の日付に、「合言葉の見直し」と予定を入れておいてほしい。その日は、同じ付せんのワークをもう一度行うといい。前回の付せんを残しておくと、変化が見比べやすい。
合言葉をつくる前の状態を、記録しておく
合言葉をつくったことで何が変わったのかを実感するために、つくる前の状態を記録しておいてほしい。
「会議で話すのは3人だけ」「困りごとの報告は、ほとんど上がってこない」。こうした今の状態を、簡単にメモしておく。1ヶ月後に読み返したとき、「言葉ができてから、チームが変わった」と実感できるはずだ。変化は、比べる相手があってはじめて見える。記録がなければ、変化は「なんとなく良くなった気がする」で終わってしまう。10月5日のチェックシートがあれば、それを使って記録してもいい。
ワークの前日までに、今のチームの状態を3行でメモしておいてほしい。そのメモは、1ヶ月後に読み返すまで、しまっておいてほしい。読み返す日も、あわせて決めておいてほしい。

Chapter 32 合言葉が生まれたチームの、次の一歩
合言葉ができたチームは、ここからさらに前に進むことができる。最後の章では、合言葉づくりをきっかけに、チームの話し合いを習慣にし、行動を認め合い、やがて外にまで伝わるチームへと育っていくための道筋をお伝えしたい。
合言葉づくりを、話し合いの習慣の入り口にする
合言葉をつくるワークは、チームにとって「一緒に話し合って決める」経験の始まりである。
このワークがうまくいったなら、次は、チームで話し合うこと自体を定期的な習慣にしていってほしい。月に1度のチームミーティングに、「今月の振り返りと、合言葉の確認」を入れるだけでいい。話し合って決めることが当たり前になっているチームは、問題が起きたときにも「みんなで考えよう」と動ける。合言葉づくりは、その習慣への入り口なのだ。一度の経験で終わらせず、次の話し合いへとつなげていってほしい。
来月のチームミーティングの議題に、「合言葉の確認」を今のうちに入れておいてほしい。5分の枠で十分である。進行役は、メンバーに持ち回りで任せてみてほしい。
合言葉に沿った行動を、見つけて伝える
合言葉を決めた後は、メンバーが合言葉に沿って行動している場面を見つけ、必ず言葉にして伝えてほしい。
「今のは、まさに合言葉どおりだったね」。この一言で、メンバーは「合言葉は本物なのだ」と感じる。認められた行動は、根づいていく。合言葉は、掲げるだけでは文化にならない。行動を認める言葉とセットになって、はじめて文化になるのだ。リーダーが見つけて伝えることをくり返すと、やがてメンバー同士でも「今の、合言葉どおりだね」と言い合うようになる。そうなれば、合言葉はもうチームのものである。
今週、合言葉に沿った行動を3つ見つけて、その場で伝えてほしい。伝えた場面は、手帳に書き留めておいてほしい。月末に読み返すと、合言葉の広がりが見えてくる。
合言葉が、外にも伝わり始めるとき
チームの合言葉が、メンバー以外にも伝わり始めたとき、それは文化として根づいたしるしである。
「あのチームは、いつも声をかけ合っているね」。社内や取引先から、そんな声が聞こえてくるようになる。その評判は、採用にも影響する。「あのチームで働きたい」と思う人が増えていくからだ。中小企業にとって、これは大きな力になる。合言葉は内向きの言葉として始まるが、やがて外向きの力を持つようになるのだ。ただし、今はまだ内向きでかまわない。まずはチームの内側で、しっかりと根づかせることに集中してほしい。
外からの声が聞こえてきたら、それをチームに伝えてほしい。外からの評価は、メンバーの大きな自信になる。伝えるときは、合言葉と結びつけて話してほしい。
合言葉は、リーダー自身の支えにもなる
チームで一緒につくった合言葉は、リーダーにとっても特別な言葉になる。
「自分たちは、こういうチームだ」と言える言葉を持つことは、リーダーとしての誇りにつながる。難しい局面に立ったときも、「うちのチームには、この言葉がある」という軸があれば、迷いが減る。判断に迷ったとき、合言葉に立ち返れば、進む方向が見えてくるからだ。合言葉をつくることは、チームのためであると同時に、リーダー自身の足場をつくることでもある。一緒につくった言葉は、ひとりで考えた言葉よりもずっと強く、リーダーを支えてくれる。
判断に迷ったときは、まず合言葉を声に出して読んでほしい。答えは、そこから見えてくるはずだ。合言葉は、リーダーにとっての道しるべでもある。
今日のまとめ
チームが同じ方向を向くには、共通の言葉が要る。「なんとなく共有できている」と思っていることほど、実は人によって受け取り方が違っている。
合言葉は、日々の判断の基準になる。そして、リーダーが決めた言葉より、チームで話し合って決めた言葉のほうが、ずっと守られやすい。立派な言葉より、明日から使える小さな言葉を選んでほしい。
ワークは、付せんとペンがあれば、ミーティング1回でできる。一人ひとりが場面を書き、共通するテーマでまとめ、全員で言葉を選び、目に入る場所に置く。この4つのステップだ。
決めた合言葉は、今週の行動と、週に1度の振り返りにつなげてほしい。合言葉に沿った行動を見つけたら、その場で伝えてほしい。
次回(10月30日)は、10月の連載の最終回として、ここまで始めたことを年末まで続けるための「仕組み」をお届けする。一緒に考えていきたい。
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