情報は、ネットではなく現場にある

調べれば調べるほど、迷う理由

こんにちは、あなたらしく輝ける未来を共に創造して、キャリア形成や就活の支援をおこなっている【あおラボ】です。

9月から、学生向けの記事は火・水・木の週3日でお届けする。3日間で1つのテーマを扱う連載形式は、これまでと変わらない。

先月の最終回で、こう書いた。「動機は、机の上だけでは育たない。現場に触れることで、はっきりしていく」と。

今月は、その続きだ。テーマは「外に出て、確かめる」。今日から3日間は、その第一歩――なぜ調べるだけでは足りないのか、そして最初の半歩をどう出すかを、一緒に見ていく。

Chapter 1 なぜ、調べても答えが出ないのか

真面目な学生ほど、まず調べる。業界研究サイトを開き、口コミを読み、動画を見る。それ自体は、正しい行動だ。でも、調べるほど迷いが深くなる、という経験はないだろうか。この章では、その理由をはっきりさせておこう。

1-1 調べれば調べるほど、迷いが増える

就活の準備を始めた学生から、よくこう聞く。「調べているのに、何も決まらないんです」。

不思議に思うかもしれないが、これはよく起きる。情報を集めるほど、選択肢と判断軸が増えて、かえって決められなくなるからだ。ある記事は「大手が安心」と言い、別の記事は「これからは中小」と言う。どちらも、それなりに筋が通っている。だから、読むたびに気持ちが揺れる。集めた情報の量と、決断の速さは、比例しない。むしろ、ある量を超えると、反比例し始める。

「もっと調べれば決まる」と思っているなら、いったん止まってほしい。調べる量ではなく、情報の種類を変える必要があるのかもしれない。手を止めることも、前進のうちだ。迷いは、努力不足の証拠ではない。

1-2 ネットの情報は、平均値でできている

なぜ、いくら読んでも自分の答えにならないのか。理由は、情報の性質にある。

ネット上の情報の多くは、たくさんの人の意見をならした「平均値」だ。「この業界の平均年収は」「この会社の残業時間は」「就活生の何%が」。どれも、集団を説明する数字である。でも、あなたは集団ではない。1人の個人だ。平均値は、全体の傾向を知るには役立つが、目の前の1人がどう感じるかは、教えてくれない。だから、いくら読んでも、自分の判断には届かない。ここが、根本的なずれになっている。

いま読んでいる情報が、平均値なのか、個別の話なのかを、意識してみてほしい。区別できるだけで、情報の使い方が変わる。平均値は、地図として使えばいい。歩くのは、あなただ。

1-3 「みんなの正解」は、あなたの正解ではない

もう1つ、やっかいなことがある。平均値の情報を読み続けると、「みんなの正解」が、自分の正解のように思えてくることだ。

人気ランキングの上位企業が、良い会社に見えてくる。多くの人が勧める進め方が、自分にも合う気がしてくる。でも、よく考えてほしい。何万人もの学生が同じ情報を読み、同じ結論に近づいている。その中で、あなたはどこで差がつくのだろう。しかも、その「みんなの正解」は、あなたが大事にしているものを、まったく考慮していない。誰にとっても60点の答えは、あなたにとっての100点にはならない。

自分の判断が、「みんながそう言うから」に寄っていないか、確かめてほしい。寄っているなら、情報源を変える合図だ。人と同じ場所を見ていて、人とちがう答えは出ない。

1-4 足りないのは量ではなく、種類

ここまでをまとめると、問題は情報が足りないことではない。種類がちがう、ということだ。

情報には、2つの種類がある。1つは、誰かがまとめてくれた「加工済みの情報」。もう1つは、自分が直接手に入れた「一次情報」だ。ネットにあるのは、ほとんどが前者である。加工済みの情報は、効率よく全体像をつかむのに向いている。でも、判断の決め手にはなりにくい。決め手になるのは、自分が見て、聞いて、感じた一次情報のほうだ。だから、調べる段階から、動く段階へ移る必要がある。

「もう十分調べた」と感じたら、次は動く番だ。同じ種類の情報を足しても、答えは出ない。種類を変えよう。調べる時間の一部を、動く時間に振り替えるだけでいい。

Chapter 2 現場でしか、手に入らないもの

では、現場に行くと何が手に入るのか。ここがはっきりしないと、動く気にはなれない。この章では、実際に足を運んだ人だけが持ち帰れるものを、4つに分けて見ていこう。どれも、画面の中にはないものだ。

2-1 空気は、文字にならない

会社説明会でも、職場見学でも、行った人が必ず口にすることがある。「思っていた雰囲気と、ちがいました」。

これは、情報が間違っていたからではない。空気というものが、文字にならないからだ。社員同士の話し方の速さ。誰かが質問したときの、まわりの反応。オフィスに入った瞬間の静けさ、あるいは賑やかさ。こういうものは、どんなに詳しい記事にも書かれていない。書けないのだ。そして、あなたが何年も過ごすかどうかを決めるのは、じつはこの空気のほうだったりする。

一度でいいので、実際にその場の空気を感じてきてほしい。行かなければ、一生手に入らない情報がある。しかも、感じたことは、あとから言葉にできる。まず、その場に立つことだ。

2-2 人の表情と、言いよどみ

現場でしか手に入らないもの、2つ目は、人の反応だ。とくに、言葉になっていない部分である。

たとえば、社員に「大変なことは何ですか」と聞いたとする。返ってきた言葉そのものも大事だが、それ以上に、答える前の間や、少し言いよどんだ様子に、多くのことが表れる。逆に、仕事の話をするときに目が輝く人もいる。この差は、録音した文字だけを読んでも、絶対に伝わらない。会っている人だけが受け取れる情報だ。しかも、こういう観察は、あなたの中に強く残る。

人に会うときは、言葉だけでなく、表情や間にも注目してみてほしい。そこに、いちばん正直な情報がある。うまく観察できなくても、気にしなくていい。見ようとした分だけ、見えてくる。

2-3 「思っていたのとちがう」は、大きな収穫

現場に行くと、期待していたものとちがう、という経験をすることがある。がっかりするかもしれない。でも、これは失敗ではない。

むしろ、大きな収穫だ。想像と現実のずれに気づけたのだから、それだけ判断が正確になる。もし行かなければ、ずれたまま就職して、入社後に気づくことになる。そのほうが、はるかに大きな損失だ。「ちがった」とわかることは、「合っていた」とわかるのと同じくらい価値がある。むしろ、選択肢を減らせるぶん、前に進みやすくなる。

「ちがった」と感じたら、がっかりせず、ノートに書き残してほしい。何がどうちがったのか。それが、あなたの基準を明確にしてくれる。合わない場所を知ることも、探す作業の一部だ。むしろ、早く知れたほうがいい。

2-4 一次情報は、あなただけのものになる

現場で得た情報には、もう1つの強みがある。他の誰も持っていない、ということだ。

ネットで調べたことは、何万人もの学生が同じように知っている。だから、面接で話しても、印象に残らない。でも、「地元の工務店を3軒まわって、社長さんに話を聞いてきました」は、あなたしか持っていない。しかも、そこで感じたことは、あなたの言葉でしか語れない。先月の連載でも触れたが、面接で効くのは、借りものではない言葉だ。一次情報は、その言葉の材料そのものになる。

自分だけの情報を、1つでも持っておいてほしい。取材のような大げさなものでなくていい。行って、聞いて、書きとめる。それだけだ。1つあれば、話に体温が宿る。そして、その1つが、次の1つを呼んでくる。

Chapter 3 動いた人と、動かなかった人の差

半年後、就活が本格化したとき、この秋に動いた人と動かなかった人のあいだには、はっきりした差が生まれている。この章では、その差がどこに出るのかを、具体的に見ておこう。先に知っておくと、動く気になれる。

3-1 半年後、語れる材料の量がちがう

いちばんはっきり出るのが、材料の量だ。

エントリーシートを書く段階になると、多くの学生が同じ壁にぶつかる。「書くことがない」。でも、これは経験がないのではなく、材料を集めていないだけのことが多い。この秋に5人の社会人に会った人は、5つの場面を持っている。3社を訪ねた人は、3つの比較を持っている。動かなかった人は、ゼロから絞り出すことになる。同じ時間で書いても、出てくるものの厚みが、まるでちがう。

「秋のうちに、いくつ現場に触れられるか」を、数で意識してみてほしい。数が、そのまま半年後の余裕になる。目標は、3つでも5つでもいい。数えられる形にしておくことが大事だ。そして、数えると、自然に動きたくなってくる。

3-2 志望動機の重さが、ちがってくる

2つ目の差は、志望動機に出る。ここは、採用担当者がいちばん見ているところだ。

調べただけの志望動機は、どうしても軽くなる。「御社の理念に共感しました」。理念はホームページに書いてあるので、誰でも書ける。一方、現場に触れた人は、こう書ける。「説明会のあと、社員の方が新人の質問に10分近くかけて答えていた。あの向き合い方に、理念が形になっているのを見ました」。同じ理念への共感でも、後者には裏づけがある。読む側は、この差をはっきり感じ取る。

志望動機を書く前に、「自分は、その会社の何を実際に見たか」と問うてほしい。見ていないなら、まず見に行こう。書くのは、そのあとでいい。順番を守るほうが、結局は早い。書けないのは、まだ見ていないからだ。

3-3 動くと、次の縁が生まれる

3つ目の差は、少し先で効いてくる。動いた人には、次の縁が生まれる、ということだ。

1人に会うと、その人から別の人を紹介してもらえることがある。訪ねた会社で、「またおいで」と言われることもある。こうした縁は、動いた人にしか生まれない。しかも、縁は連鎖する。1人目が2人目を呼び、2人目が3人目を呼ぶ。逆に、動かない人のところには、何も来ない。当たり前のことだが、この差は、時間がたつほど開いていく。半年後には、大きな違いになっている。

会った人には、必ずお礼を伝えてほしい。そして、「もし可能なら、どなたか紹介いただけませんか」と聞いてみる。縁は、そこから広がる。断られても、失うものは何もない。聞かなければ、ゼロのままだ。

3-4 動かない理由は、たいてい後づけ

ここまで読んで、それでも動けない人がいると思う。私も、その気持ちはよくわかる。

でも、1つ知っておいてほしい。動かない理由は、たいてい後づけだということだ。「忙しいから」「まだ早いから」「準備ができていないから」。どれも本当のようで、じつはその手前に「こわい」「面倒だ」という気持ちがある。そして、その気持ちに理由をつけているだけのことが多い。これは責めているのではない。人間は、そういうふうにできている。だから、理由を疑う習慣を持つだけで、動きやすくなる。

「行かない理由」が浮かんだら、「それは本当の理由か」と一度だけ問うてほしい。後づけだと気づけば、足は動きやすくなる。こわいと認めてしまうほうが、じつは前に進める。

Chapter 4 今日から始める、最初の半歩

理屈はここまでだ。最後は、実際にどう動き出すかになる。この章では、今日から出せる「半歩」の作り方を紹介する。大きく踏み出す必要は、まったくない。むしろ、大きくしないことがコツになる。

4-1 いきなり大きく動こうとしない

「よし、動こう」と決めた人が、次にやりがちな失敗がある。いきなり大きな一歩を設定してしまうことだ。

「憧れの企業に、メールで訪問をお願いする」「業界トップの人に話を聞きに行く」。志は立派だが、たいてい実行されない。ハードルが高すぎて、準備しているうちに気持ちがしぼむからだ。そして「やっぱり自分には無理だ」と、動かない理由が1つ増えてしまう。これは、いちばんもったいない失敗だ。大きな一歩は、動ける人になってから出せばいい。最初は、確実に踏める大きさにする。

最初の行動は、「これなら絶対にできる」と思える大きさまで下げてほしい。小さすぎるくらいで、ちょうどいい。一度動けた人は、2度目のハードルが自然と下がる。

4-2 「半歩」とは、どれくらいか

では、半歩とはどれくらいの大きさか。目安を書いておく。

準備に30分以上かかるものは、半歩ではない。今日か明日のうちに、手をつけられるもの。それが半歩だ。たとえば、興味のある会社のホームページで、社員紹介のページだけを読む。地元の企業が出ている記事を1本探す。大学のキャリアセンターに、予約なしで顔を出す。学内の企業説明会の日程を、カレンダーに入れる。どれも、勇気も準備もほとんどいらない。でも、確実に「外」につながる行動だ。

「30分以内に始められるか」を基準に、行動を選んでほしい。始められるサイズかどうかが、いちばん大事になる。立派さは、まったく必要ない。外につながっていれば、それでいい。まず、1つ選ぼう。

4-3 今週の予定に、1つだけ入れる

半歩を決めたら、次にすることは1つだ。予定に入れる。

「そのうちやろう」では、絶対にやらない。先月も書いたが、締め切りのないことは、後回しになり続けるからだ。だから、カレンダーやスマホの予定表に、日付と時間を入れてしまう。「木曜16時、キャリアセンターに行く」。ここまで書けば、動く確率は大きく上がる。逆に言えば、予定に入っていない行動は、実行されないものだと思ったほうがいい。意志ではなく、予定で動く。これが、確実な方法だ。

今日中に、今週の予定へ半歩を1つ入れてほしい。日付と時間まで書く。それだけで、この記事は読んだ価値が出る。入れたら、あとは当日の自分に任せればいい。決めるのは今日、動くのは当日でいい。

4-4 行く前に、問いを1つ持つ

最後に、半歩の効果を何倍にもする工夫を紹介する。行く前に、問いを1つ持っていくことだ。

同じ説明会に出ても、問いを持っている人と、いない人では、持ち帰る量がまるでちがう。「この会社の人は、どんな表情で仕事の話をするのだろう」。この1問を持っているだけで、見るところが変わる。逆に、問いがないと、話を聞いて「へえ」で終わってしまう。問いは、情報を引き寄せる網のようなものだ。網がなければ、いくら水の中にいても、何もすくえない。

出かける前に、「今日は何を確かめたいのか」を1行書いてほしい。たった1行で、その日の収穫が変わる。答えが出なくても構わない。問いを持って行くこと自体に、意味がある。持っていく網は、大きいほどいい。

今日のまとめ

調べても答えが出ないのは、あなたの調べ方が悪いからではない。ネット上の情報は「平均値」でできていて、個人の判断材料としては、そもそも設計がちがうからだ。

足りないのは量ではなく、種類だ。加工済みの情報をいくら足しても、決め手にはならない。決め手になるのは、自分が見て、聞いて、感じた一次情報のほうである。

現場でしか手に入らないものは、4つある。文字にならない空気。人の表情と言いよどみ。「思っていたのとちがう」という気づき。そして、あなただけが持てる材料だ。

そして、この秋に動いた人と動かなかった人の差は、半年後にはっきり出る。語れる材料の量、志望動機の重さ、そして次の縁。動かない理由は、たいてい後づけであることも、覚えておいてほしい。

今日やってほしいのは、1つだけ。30分以内に始められる「半歩」を決めて、今週の予定に日付と時間を入れることだ。

明日は、その半歩をどう出すかを、もっと具体的に見ていく。ハードルの下げ方、断られたときの受け止め方、そして今週できる5つの半歩。一緒に考えていこう。

一次情報は、動いた人にしか手に入らないと、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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