事実に、意図と変化を足す

「〇〇をしました」で、止まっていないか

こんにちは、あなたらしく輝ける未来を共に創造して、キャリア形成や就活の支援をおこなっている【あおラボ】です。

昨日は、経験を残す方法を書いた。3行でいい。やったこと、気づいたこと、感じたこと。その日の帰り道に書ききる。

今日は、その次の工程だ。残した記録を、人に伝わる形に変える。

じつは、多くの学生がここでつまずく。記録はある。経験もある。それなのに、話すと「〇〇をしました」で終わってしまう。今日は、その理由と、直し方を扱う。

Chapter 5 事実だけでは、伝わらない

まず、なぜ伝わらないのかをはっきりさせておきたい。原因は、能力ではなく構造にある。この章では、その構造を4つに分けて確かめておこう。ここがわかると、直し方も見えてくる。

5-1 「〇〇をしました」で止まる

学生の話を聞いていると、こういう形になることが多い。「3日間のインターンに参加しました」「アルバイトを2年間続けました」「サークルで会計を担当しました」。

どれも事実である。ただ、聞いている側からすると、まだ何もわかっていない。参加して、どうだったのか。2年続けて、何があったのか。会計として、何をしたのか。事実は、出来事の外側しか示さない。中身は、まだ語られていないのだ。しかも、本人はきちんと話したつもりでいる。だから、伝わっていないことに気づかない。ここが、いちばん多い行きちがいである。

自分の話が「〇〇をしました」で終わっていないか、一度確かめてほしい。そこで止まっていたら、まだ半分だ。足すべきものは、このあと2つ紹介する。

5-2 面接官が知りたいのは、中身

では、聞いている側は何を知りたいのか。ここを取りちがえている学生が、とても多い。

8月の連載でも書いたが、企業が見ているのは成果の大きさではない。知りたいのは、あなたがどう考え、どう動く人なのかだ。だから、事実そのものより、その事実の中身に関心がある。なぜそれを選んだのか。どこで迷ったのか。うまくいかないとき、どうしたのか。ここに、あなたの考え方が出る。逆に言えば、事実だけを並べても、判断の材料にならない。相手は、あなたを知りたいのであって、出来事を知りたいわけではないのだ。

相手が知りたいのは、出来事ではなくあなただと考えてほしい。この前提で、話を組み直せばいい。順番を変えるだけでも、伝わり方は変わる。

5-3 すごい経験を、探さなくていい

ここで、多くの学生が誤解する。「もっとすごい経験がないと」と思ってしまうのだ。でも、それはちがう。

留学経験も、大会での入賞も、必要ではない。実際、採用の現場で強く印象に残るのは、アルバイトや、日々の学業や、サークルの地味な役割の話であることが多い。なぜなら、そこにこそ考え方が出るからだ。派手な経験を持っている学生でも、中身を語れなければ、印象には残らない。逆に、身近な経験でも、意図と変化まで語れる学生は、はっきり伝わる。差がつくのは、経験の種類ではなく、語り方のほうである。

新しい経験を探す前に、手元の経験を掘ってみてほしい。すでに、材料は持っているはずだ。足りないのは経験ではなく、語り方のほうである。

5-4 記録があれば、思い出さなくて済む

そして、ここで昨日の話がつながる。中身を語るには、細部が必要になる。

「どこで迷いましたか」と聞かれて、答えられるかどうか。これは、記憶ではなく記録の問題だ。昨日書いたとおり、経験は放っておくと消える。印象だけが残り、事実が抜けていく。ところが、3行の記録があれば、そこから細部を引き出せる。「あのとき、こう感じた」が残っているからだ。書く工程と、語る工程は、2つでひと組になっている。記録がないまま語ろうとすると、どうしても抽象的になってしまう。

昨日の3行を、今日の材料として使ってほしい。記録は、語るためにある。3行あれば、そこから広げられる。しかも、書いた本人にしか出せない細部が残っている。それが、話に厚みを生む。

Chapter 6 意図を、足す

事実に足すべきものは、2つある。1つ目が「意図」だ。なぜ、それをやったのか。ここが入ると、話の見え方が一気に変わる。この章では、意図の見つけ方を4つに分けて扱う。

6-1 なぜ、それをやったのか

意図とは、行動の理由のことだ。むずかしく考える必要はない。

「3日間のインターンに参加しました」に、意図を足してみる。「人と関わる仕事が自分に合うかを確かめたくて、社員と話せる時間が多い企業を選び、3日間のインターンに参加しました」。同じ事実なのに、印象がまるでちがう。前者は、ただ参加した人に見える。後者は、考えて動いた人に見える。しかも、後者には次の話が続けやすい。「では、確かめられましたか」と聞かれる。会話が、自然に深まっていくのだ。

事実を書いたら、その前に「なぜ」を1行足してほしい。それだけで、伝わり方が変わる。しかも、会話が続きやすくなる。相手からの質問も、自然に生まれてくる。考えて動いた人だと、伝わるからだ。

6-2 目的がない行動は、ほとんどない

「自分には、そんな立派な理由はない」と言う学生がいる。でも、掘ってみると、たいてい理由は出てくる。

たとえば、アルバイトを選んだ理由。「家から近かったから」でもいい。なぜ近さを優先したのか。「学業と両立したかったから」。ここまで来れば、立派な意図である。優先順位をつけて選んだ、ということだからだ。サークルで会計を引き受けた理由。「誰もやらなかったから」。なぜ、自分がやろうと思ったのか。「誰かがやらないと、活動が止まると思ったから」。これも意図だ。行動には、必ず理由がある。気づいていないだけである。

「なんとなく」で終わらせず、一度だけ掘ってみてほしい。理由は、たいてい出てくる。立派である必要は、まったくない。

6-3 「言われたから」でも、掘れる

もう一段むずかしいのが、自分で選んでいない場合だ。「先輩に頼まれたから」「授業で決められていたから」。こういう経験も、たくさんある。

この場合でも、掘る場所はある。頼まれたあと、どう取り組んだか。ここに、あなたの意図が出るからだ。「頼まれた仕事だったが、どうせやるなら次の人が楽になる形にしようと思い、手順書を残した」。これは、立派な意図である。きっかけは他人でも、取り組み方は自分で決めている。ここを見落とさないでほしい。8月の連載で「過程を語る」と書いたが、その過程は、まさにこの部分にある。

きっかけではなく、取り組み方に目を向けてほしい。そこに、あなたの選択が残っている。頼まれた仕事でも、材料になる。

6-4 意図が入ると、人が見える

なぜ意図が大事なのか。理由を、はっきり書いておきたい。

意図は、その人の判断が出る場所だからだ。同じアルバイトをしていても、何を優先して選んだかは人によってちがう。同じ役割を引き受けても、どういうつもりで取り組んだかはちがう。そのちがいが、その人らしさになる。だから、意図を語ると、相手にはあなたの輪郭が見えてくる。逆に、事実だけを並べると、誰が話しても同じになってしまう。「アルバイトを2年続けました」は、何万人もが言える。そこに意図が入って、初めてあなたの話になる。

意図を、遠慮せずに書いてほしい。それが、あなたと他の人を分ける部分になる。同じ経験でも、意図は人それぞれちがう。そのちがいこそが、あなたらしさになる。

Chapter 7 変化を、足す

足すべきもう1つが「変化」だ。前と後で、何が変わったのか。ここまで語れると、経験は完全な形になる。この章では、変化の見つけ方を4つに分けて扱う。

7-1 前と後で、何が変わったか

変化とは、その経験の前と後のちがいのことだ。ここも、大がかりに考えなくていい。

「インターンに参加する前は、人と関わる仕事がいいと漠然と思っていた。参加してみて、人と関わるといっても、話す仕事と、聞いて整理する仕事があると気づいた。自分は、後者のほうが向いていそうだと感じている」。これで、変化が語れている。考え方が、一段細かくなったからだ。変化は、成果である必要はない。気づきでもいい。見方が変わったことでも、行動が変わったことでもいい。前と後で、何かがちがっていればいい。

経験ごとに、「前と後で何が変わったか」を書いてほしい。1行でかまわない。気づきでもいいので、前と後を比べてみよう。書いてみると、意外と出てくるものだ。

7-2 成果ではなく、変化を語る

ここで、多くの学生が身構える。「大きな成果を出していないと、書けない」と思うからだ。でも、それは必要ない。

8月の連載でも書いたが、企業が見ているのは成果の大きさではない。売上を伸ばした、大会で勝った。そういう話でなくていいのだ。むしろ、成果だけを並べると、その人が何を学んだのかが見えなくなる。「3か月で売上を2割伸ばしました」だけでは、どう考えて動いたかがわからない。一方、「うまくいかない時期に、原因を1つずつ確かめる進め方を覚えた」なら、その人の変化が見える。伝わるのは、後者のほうである。

成果が小さくても、気にしないでほしい。変化が語れれば、それで十分に成立する。数字がないことを、引け目に思わなくていい。

7-3 自分の変化と、まわりの変化

変化には、2種類ある。ここを分けて考えると、書きやすくなる。

1つは、自分のなかの変化だ。考え方、見方、できるようになったこと。「人前で話すのが苦手だったが、準備の仕方を変えたら怖くなくなった」。もう1つは、まわりに起きた変化である。「手順書を残したことで、新しく入った人が質問せずに動けるようになった」。どちらでもいい。両方あれば、なおいい。自分の変化は内面が見えるし、まわりの変化は影響力が見える。8月の連載で扱った目標設定の四つの視点も、この「自分」と「自分以外」の区分けと同じ考え方だ。

自分の変化と、まわりの変化。両方あるか、確かめてみてほしい。どちらか一つでも、十分に成立する。無理に両方そろえる必要はない。

7-4 小さな変化で、十分である

最後に、変化の大きさについて書いておきたい。ここで欲張ると、書けなくなる。

「性格が変わりました」「人生観が変わりました」。こういう大きな話は、必要ない。むしろ、大きすぎると嘘っぽく聞こえてしまう。「以前は、わからないことを自分で抱えこんでいたが、早めに聞くようになった」。この程度で、十分に伝わる。しかも、具体的なぶん、信じてもらいやすい。3日間のインターンで、人生が変わるわけがない。でも、見方が1つ変わることは、確実にある。その一つを、そのまま書けばいい。

変化は、小さいほうが信じてもらえる。等身大のまま書いてほしい。盛った話は、質問されるとすぐ崩れる。具体的なぶん、小さい話のほうが強い。見方が一つ変われば、それで十分だ。

Chapter 8 3つを、1つの形にする

事実、意図、変化。この3つがそろった。あとは、並べるだけだ。この章では、実際の組み立て方を四つに分けて扱う。今日のうちに、1つ書いてみてほしい。

8-1 事実・意図・変化の順で並べる

型は、単純である。意図、事実、変化。この順に並べるだけだ。

まず「なぜやったか」。次に「何をしたか」。最後に「何が変わったか」。この順にすると、聞いている側が理解しやすい。理由を先に聞いているので、行動の意味がわかるからだ。逆に、事実から入ると、相手は「それで?」と思いながら聞くことになる。順番を変えるだけで、伝わり方がここまで変わる。しかも、この型は面接でもエントリーシートでも、そのまま使える。覚えておくと、あらゆる場面で役に立つ。

この3つの順番を、覚えてしまってほしい。意図、事実、変化。これだけでいい。面接でも書類でも、そのまま使える型だ。一度覚えれば、ずっと使える。迷ったら、この順に戻ればいい。

8-2 実際に、書いてみる

型を知っただけでは、身につかない。一度、書いてみるのがいちばん早い。

例を挙げる。「人と関わる仕事が自分に合うかを確かめたくて(意図)、社員と話せる時間が多い3日間のインターンに参加した(事実)。参加前は人と関わる仕事がいいと漠然と思っていたが、話す仕事と聞いて整理する仕事があると気づき、自分は後者に向いていそうだと感じた(変化)」。この形である。特別なことは、何も書いていない。ただ、3つの要素がそろっているだけだ。それでも、読んだ人には、あなたの考え方が伝わる。

今日のうちに、1つ書いてみてほしい。読むだけでは、身につかない。まずは1つ、手を動かしてみよう。10分もあれば、1つ書ける。まずは、いちばん新しい経験からでいい。

8-3 長さは、200字を目安に

書く長さについても、目安を出しておく。まずは、200字くらいがいい。

短すぎると、中身が入らない。長すぎると、要点がぼやける。200字なら、意図、事実、変化の3つがちょうど収まる。面接で話すと、1分弱だ。相手が聞きやすい長さでもある。慣れてきたら、場面に応じて伸ばしたり縮めたりすればいい。最初から完璧な長さを狙う必要はない。書いてみて、長ければ削る。短ければ足す。この調整を数回やれば、感覚はつかめてくる。

8-4 書けないときは、記録に戻る

最後に、書けないときの対処を書いておく。手が止まるのは、たいてい材料が足りないときだ。

意図が思い出せない。変化が見当たらない。そういうときは、無理にひねり出さなくていい。昨日書いた3行の記録に戻ってほしい。そこに、当時の感じたことが残っている。「あのとき、こう感じた」を読むと、意図も変化も見えてくることが多い。記録がない経験については、書けなくても仕方がない。だからこそ、これからの経験は、必ず記録を残しておく。書く力の問題ではなく、材料の問題であることが、ほとんどである。

手が止まったら、記録に戻ってほしい。材料さえあれば、書けるようになる。無理にひねり出す必要はない。だからこそ、これからの経験は記録しておこう。

今日のまとめ

「〇〇をしました」で止まると、経験は伝わらない。事実は、出来事の外側しか示さないからだ。しかも、本人はきちんと話したつもりでいるので、伝わっていないことに気づかない。

相手が知りたいのは、出来事ではなくあなたのことだ。だから、すごい経験を探す必要はない。差がつくのは、経験の種類ではなく語り方のほうである。

事実に足すものは、2つ。1つ目は意図、つまり「なぜやったか」だ。「なんとなく」でも、一度掘れば理由は出てくる。人に頼まれたことでも、取り組み方に自分の選択が残っている。

2つ目は変化、つまり「前と後で何が変わったか」。成果である必要はなく、気づきでもいい。自分の変化と、まわりの変化。どちらでもよく、小さいほうがむしろ信じてもらえる。

並べる順は、意図、事実、変化。長さは200字が目安になる。そして、手が止まったら、記録に戻る。書く力ではなく、材料の問題であることがほとんどだ。

明日は今月ためてきたものを、実際に使える形に整えていく。9月全体の振り返りも、あわせて行う予定だ。一緒に見ていこう。

経験は、語れる形にしたときに、初めて自分のものになると、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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