経験は、放っておくと消える

あの日のこと、思い出せますか

こんにちは、あなたらしく輝ける未来を共に創造して、キャリア形成や就活の支援をおこなっている【あおラボ】です。

今月は「外に出て、確かめる」をテーマに、現場に行くこと、人に会うこと、インターンを選ぶことを扱ってきた。

半歩でも動けた人は、いくつかの経験を手にしているはずだ。そして今週は、その経験をどう扱うかを考える。

先に、質問を1つ。3週間前に行った場所で、何を感じたか。具体的に思い出せるだろうか。もし曖昧なら、今日の話は、あなたのための話だ。

Chapter 1 なぜ、経験は消えるのか

行動したのに、あとで何も残っていない。これは、多くの学生に起きていることだ。しかも、本人はそれに気づいていない。この章では、なぜ経験が消えるのかを、4つの角度から確かめておこう。

1-1 1週間で、ほとんど忘れる

まず、事実から書く。人の記憶は、想像以上に早く薄れる。

学生に、2週間前の説明会について聞くことがある。「どんな話でしたか」と。すると、たいてい「えーと……いい会社そうでした」で止まる。その日は、たしかにいろいろ感じていたはずだ。社員の表情、話し方、質問したときの反応。それが、2週間でほとんど残っていない。これは、記憶力の問題ではない。人の脳は、使わない情報を落とすようにできている。だから、放っておけば消えるのは、当たり前のことなのだ。責める話ではなく、前提として受け入れるべきことである。

「忘れる自分」を責めないでほしい。責めるかわりに、忘れる前提で仕組みをつくればいい。それだけで結果は変わる。

1-2 「覚えている」は、あてにならない

やっかいなのは、本人が「覚えているつもり」でいることだ。ここに、いちばん大きな落とし穴がある。

その日の帰り道は、感じたことがはっきりしている。だから「これは忘れないだろう」と思う。ところが一週間後、思い出そうとすると、輪郭がぼやけている。しかも、思い出せないことに気づくのは、たいてい面接の直前だ。エントリーシートを書こうとして、手が止まる。そこで初めて、消えていたことを知る。この順番が、いちばん痛い。準備の時間が、もう残っていないからだ。覚えているという感覚は、その日限りのものだと考えたほうがいい。

「忘れないだろう」と思った日こそ、書いておいてほしい。その感覚は、翌週にはもう当てにならない。書いておけば、確認するだけで済む。

1-3 印象だけが残り、事実が抜ける

もう1つ、記憶の性質として知っておいてほしいことがある。残り方が、偏るのだ。

時間が経つと、「よかった」「合わなかった」という印象だけが残る。一方で、その印象のもとになった事実が抜け落ちる。誰が、どんな場面で、何を言ったのか。自分は何をして、どこでつまずいたのか。この具体が消えてしまう。すると、面接で話そうとしても、「雰囲気がよかったです」しか出てこない。8月の連載で、企業が見るのは過程だと書いた。過程を語るには、事実がいる。印象だけでは、材料にならないのだ。

印象ではなく、事実を残してほしい。誰が、何をして、どうだったか。この3点があれば十分だ。感想は、事実さえあればあとから足せる。逆の順番では、うまくいかない。

1-4 消えると、語れなくなる

ここまでの話は、最後にひとつの結果につながる。経験が消えると、語れなくなる。

行動したこと自体は、消えていない。インターンにも行った。社会人にも会った。でも、その中身を語れないと、経験していないのとほとんど同じ扱いになってしまう。これは、あまりに惜しい。動いた分だけ、材料は増えているはずなのだ。しかも、記録さえあれば、いつでも取り出せる。3週間前の自分が残した3行が、3か月後の自分を助ける。行動と記録は、2つでひと組だと考えてほしい。片方だけでは、力にならない。

行動したら、必ず記録まで含めて一セットにしてほしい。動くことと、残すことは、切り離せない。せっかく動いたのだから、必ず持ち帰ろう。3分の記録が、その日を守ってくれる。

Chapter 2 その日のうちに、3行を残す

では、どう残せばいいのか。ここで大事なのは、続けられる形にすることだ。この章では、実際にやってほしい方法を、具体的に四つに分けて紹介する。どれも、3分あればできる。

2-1 完璧な記録は、続かない

記録の話をすると、多くの学生が身構える。「ちゃんと書かないと」と思うからだ。でも、そこが最初のつまずきになる。

丁寧に書こうとすると、30分かかる。すると、疲れている日は書かなくなる。2日空くと、そのまま止まる。これは、意志の弱さではない。負荷が高すぎるだけだ。第1週で「ちゃんとしてからは永遠に来ない」と書いたが、記録でも同じことが起きる。だから、最初から負荷を下げておく。3行でいい。むしろ、3行以上は書かないと決めてしまってもいい。続くほうが、質より大事だからだ。

記録は、3行と決めてほしい。丁寧さより、続くことを優先しよう。まずは、1週間だけでいい。続いたら、そのまま延ばせばいいだけの話だ。止まったら、また始めればいい。

2-2 3行の型を、決めておく

3行と言われても、何を書けばいいか迷う。だから、型を決めておくといい。

おすすめは、この3つだ。1行目に「やったこと」。2行目に「気づいたこと」。3行目に「感じたこと」。たとえば、「工場見学に行った」「思っていたより静かで、機械より人の連携が多かった」「自分は、こういう静かな場のほうが集中できそうだと感じた」。これで十分である。型があると、迷う時間がなくなる。しかも、あとで見返したときに、比べやすい。同じ形で並んでいると、ちがいがはっきり見えてくるのだ。

この3行の型を、そのまま使ってほしい。やったこと、気づいたこと、感じたこと。この順番でいい。慣れてきたら、自分なりに変えてもかまわない。大事なのは、形を揃えておくことだ。

2-3 書く場所は、一か所に決める

意外と大事なのが、どこに書くかだ。ここが散らばると、あとで見返せなくなる。

スマホのメモアプリでいい。ノートでもいい。大事なのは、一か所に決めることだ。ある日はスマホ、別の日は紙、そのまた別の日はSNSの下書き。こうなると、3か月後に集められない。集められない記録は、ないのと同じである。私が勧めているのは、スマホのメモアプリに「就活メモ」という一枚をつくり、そこに上から足していく形だ。日付を頭につけておけば、それだけで並ぶ。検索もできる。

今日のうちに、書く場所を一か所決めてほしい。決めるだけなら、1分もかからない。散らばった記録は、あとで集められなくなる。集められない記録は、書いていないのと同じだ。今日のうちに、1枚つくっておこう。

2-4 当日中に、書ききる

最後は、タイミングの話だ。ここが、いちばん結果を分ける。

書くのは、その日のうちがいい。理由は単純で、翌日になると、細部が消えているからだ。当日なら、社員の表情や、自分が感じた迷いまで思い出せる。翌日だと、要約された印象しか残らない。だから、帰りの電車やバスのなかで書いてしまうのが、いちばん確実である。3行なら、2駅もあれば書ける。「家に帰ってから」は、たいてい実行されない。疲れているし、他の予定も入ってくる。移動中に片づけるのが、現実的な解だ。

帰り道のうちに、3行を書いてほしい。家に着く前に終われば、忘れることはない。座れなければ、立ったままでも打てる。翌日に回すと、細部はもう戻らない。3行なら、2分で終わる作業である。

Chapter 3 感情を、拾っておく

3行のうち、いちばん価値があるのが3行目だ。感じたこと、つまり感情である。ただし、ここを雑に扱う学生が多い。この章では、感情の拾い方を4つに分けて扱う。

3-1 「楽しかった」で止めない

感情を書くとき、多くの人が一語で終わらせる。「楽しかった」「疲れた」「よかった」。これでは、あとで使えない。

問題は、抽象度が高すぎることだ。「楽しかった」は、どの経験にも当てはまる。だから、並べても区別がつかない。もう一段だけ、具体にしてほしい。「グループで意見を出し合う時間が、いちばん楽しかった」。ここまで書けば、何に反応したのかが見える。8月の連載で「なぜを掘る」を扱ったが、その入口がここにある。一語で止めず、どの場面で、という情報を足すだけでいい。手間は、10秒ほどしか増えない。

感情には、必ず「どの場面で」を添えてほしい。これだけで、記録の価値が何倍にもなる。10秒の手間を、惜しまないでほしい。

3-2 違和感も、同じ価値がある

学生の記録を見ていると、良かったことばかり書いてある。でも、それでは半分しか残らない。

違和感や、もやもやも、同じくらい大事な情報だ。「説明はよかったけれど、社員同士の会話が少なくて気になった」。「作業は面白かったが、1日中座っているのがきつかった」。こうした引っかかりは、自分に合わないものを教えてくれる。しかも、合わないものがわかると、選択の精度が上がる。良いところ探しだけをしていると、どの企業も同じに見えてくる。ちがいを見分けるには、引っかかりのほうが役に立つのだ。

もやもやしたことも、正直に書いてほしい。それは、あなたの基準が働いた証拠だ。合わないものを知ることも、立派な収穫である。良いところだけ書くと、比べられなくなる。

3-3 なぜを、一度だけ掘る

感情を書いたら、もう一歩だけ進めてほしい。「なぜ、そう感じたのか」を、一度だけ考える。

一度でいい。何度も掘る必要はない。「グループで意見を出す時間が楽しかった。なぜなら、自分の考えが人の役に立った感じがしたから」。ここまで来ると、価値観の輪郭が見えてくる。人の役に立つ実感が、自分にとって大事らしい、ということだ。八月の連載で扱った「なぜを掘る」を、記録のなかでやっているだけである。深く考えこむ必要はない。思い浮かんだ答えを、そのまま書けばいい。

3行目のあとに、「なぜなら」を一つ足してほしい。1行増えるだけで、意味がまるで変わる。答えが出なければ、それも書いておけばいい。考えこまず、浮かんだままで十分だ。

3-4 感情は、価値観が反応した証拠

なぜ感情を大事にするのか。理由を、はっきり書いておきたい。

感情は、あなたの価値観が反応したしるしだからだ。何かに心が動いたということは、そこにあなたが大切にしているものがある。逆に、もやもやしたということは、大切にしているものが損なわれた感じがあったということだ。だから、感情の記録を集めていくと、自分の価値観が浮かび上がってくる。これは、机の前で考えても出てこない。実際に何かを経験して、心が動いた記録がいる。8月に書いたこの原則が、9月の行動とつながる場所が、ここになる。

感情の記録を、捨てないでほしい。それは、自分を知るための、いちばん確かな材料になる。何よりも、あなた自身の言葉で残っている。

Chapter 4 週に一度、まとめて見返す

3行を残すだけでは、まだ半分だ。残したものは、見返して初めて力になる。この章では、見返し方を4つに分けて扱う。週に30分あれば足りる。

4-1 書きっぱなしでは、つながらない

記録を続けている学生でも、見返していない人が多い。ここが、次の分かれ道になる。

1つひとつの記録は、点である。点のままでは、意味が見えにくい。ところが、5つ、10と並べて眺めると、線が見えてくる。「人と関わる場面で、いつも心が動いている」。「1人で作業する時間には、あまり反応していない」。こうした傾向は、1件だけでは絶対にわからない。まとめて見るからこそ、浮かび上がるのだ。しかも、傾向がわかると、次に何を確かめるべきかも見えてくる。記録は、貯めるだけでは働かない。

書いたものを、見返す時間まで確保してほしい。書く時間と、同じくらい大事な工程だ。点を線にするのは、この工程しかない。貯めるだけでは、力にならない。

4-2 30分の見返しで、線になる

見返しと言っても、大がかりなことはしなくていい。週に一度、30分で十分である。

やり方は簡単だ。その週に書いた3行を、上から順に読む。それだけでいい。読みながら、気になったところに印をつける。「これは前にも書いたな」と思ったら、そこが傾向である。日曜の夜でも、月曜の朝でもいい。時間を決めて、習慣にしてしまうのがいちばん続く。第1週で書いたとおり、完璧を目指すと止まる。30分と決めて、その時間だけやればいい。読むだけでも、記憶は確実に強くなる。

週に一度、30分だけ時間を取ってほしい。カレンダーに入れておくと、実行率が上がる。日曜の夜に固定するのが、いちばん無理がない。読み返すだけでも、記憶は確実に強くなる。

4-3 くり返し出てくる言葉に、印をつける

見返すときに、注目してほしいポイントがある。くり返し出てくる言葉だ。

「話す」「教える」「つくる」「整える」「まかされる」。こうした言葉が、何度も出てくることがある。これが、あなたの価値観に近いものだ。自分では気づいていないことが多い。だから、書いたものを見て初めてわかる。逆に、一度も出てこない言葉もある。それも情報だ。世間で大事とされていることでも、自分の記録に出てこないなら、少なくとも今の自分の関心ではない、ということになる。ここは、正直に受け止めていい。

同じ言葉が3回出てきたら、印をつけてほしい。そこに、あなたの軸が隠れている。自分では意外に思う言葉ほど、注目してほしい。他人の基準ではなく、自分の記録から出てきたものだ。

4-4 3か月後の自分に、渡すつもりで

最後に、記録を続ける動機の話をしておきたい。誰のために書くのか、という話だ。

答えは、三か月後の自分である。12月や1月になると、エントリーシートを書く時期が来る。面接も始まる。そのとき、今日の記録が効いてくる。「あのとき、こう感じた」がそのまま材料になるからだ。逆に、記録がないと、その時期にゼロから思い出す作業をすることになる。しかも、時間がないなかで。今の3分が、そのときの3時間を節約する。そう考えると、書く価値はかなり高い。未来の自分に、材料を送っておくつもりで書いてほしい。

今日から、3か月後の自分に渡すつもりで書いてほしい。その人は、必ず感謝するはずだ。しかも、送れるのは今の自分だけである。

今日のまとめ

経験は、放っておくと消える。2週間もすれば、感じたことの輪郭はぼやける。これは記憶力の問題ではなく、人の脳の性質だ。だから、忘れる前提で仕組みをつくればいい。

やっかいなのは、「覚えているつもり」でいることだ。しかも、消えていたと気づくのは、たいてい面接の直前になる。そのときには、もう準備の時間が残っていない。

残し方は、3行でいい。やったこと、気づいたこと、感じたこと。書く場所は一か所に決めて、その日の帰り道のうちに書ききる。3行なら、2駅で終わる。

いちばん価値があるのは、3行目の感情だ。「楽しかった」で止めず、どの場面で、を添える。違和感も同じ価値がある。そして、「なぜなら」を一つだけ足す。感情は、価値観が反応した証拠だからだ。

書いたら、週に一度、30分だけ見返す。くり返し出てくる言葉に印をつければ、そこに自分の軸が見えてくる。今日の3分が、3か月後の3時間を節約する。

明日は、この記録を「語れる形」に変える方法を扱う。事実に、意図と変化を足す。そこが、経験を材料に変える工程になる。一緒に見ていこう。

経験は、残した人にだけ積み上がっていくと、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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