同じ質問をされるたび、答えが少しずつ変わってしまう君へ
こんにちは、あなたらしいキャリアの一歩を、いっしょに考える【あおラボ】です。
ESに書いたことを、面接でも訊かれた。1次面接で答えた内容を、2次面接でも、別の面接官から訊かれた。そんな経験は、これから君にも訪れると思う。
そのとき、多くの学生が不安になる。「前に話したことと、違うことを言ってしまったらどうしよう」「同じ話をくり返して、飽きられないだろうか」と。
同じ質問がくり返されるのには、きちんとした理由がある。そして、答えがぶれないためには、暗記ではなく、「軸」を持つことが大切になる。この記事では、その理由と、軸の持ち方を、一つずつ整理していく。
Chapter 13 同じ質問は、なぜ、くり返されるのか
ESでも、1次面接でも、2次面接でも、似た質問が続く。学生からすると、「もう答えたのに」と感じる場面だ。けれど、くり返しには、企業側の事情と工夫がある。まず、その背景を知っておこう。
13-1 面接官は、ESを「全部は」覚えていない
面接官は、一日に何人もの学生に会う。ESも、何十通、何百通と読む。ある学生のESの内容を、一字一句まで覚えて面接に臨むのは、現実には難しい。
もちろん、事前にESに目を通してから面接室に入る面接官は多い。それでも、頭に残るのは、「サークルの代表をした学生」くらいの輪郭であることが多いと思う。細かい経緯や、君が何を考えて動いたのかまでは、あらためて訊かないとわからない。
だから、ESに書いてあることを、もう一度訊かれるのは、君のESを軽く扱っているからではない。書いてあることを入口にして、君の言葉で、もう一度聞かせてほしいという自然な流れなのだ。
「それはESに書きました」と思わなくていい。ESは、会話の入口にすぎない。面接は、その続きを、君自身の声で語る機会である。
13-2 選考の段階ごとに、面接官が違う
1次面接、2次面接、最終面接と、選考が進むにつれて、面接官は変わっていく。人事の担当者、現場の社員、役員と、立場が違えば、君に対して知りたいことも変わる。
同じ「自己PRをお願いします」という質問でも、人事の担当者は「どんな人柄なのか」を知りたい。現場の社員は「一緒に働いたとき、どう動く人なのか」を知りたい。役員は「この会社で、長く力を発揮してくれる人なのか」を知りたい。
面接官が変われば、ESの読み方も、質問の意図も変わる。そして、面接官どうしの引き継ぎは、君が思うほど細かくないことが多い。
つまり、同じ質問がくり返されるのは、それぞれの面接官が、それぞれの立場から、君を確かめようとしているからだ。同じ質問は、同じ答えを求めているのではなく、同じ君を、別の角度から確認する機会なのである。
13-3 くり返しは、答えが「一貫しているか」を確かめる場でもある
もう一つ、大事な理由がある。同じ質問を、時間を置いて、複数の場面で訊くことで、答えの一貫性を確かめられるからだ。
採用の研究では、面接のやり方が、入社後の仕事の成果をどれだけ予測できるかが調べられてきた。その代表的な研究が、フランク・シュミット氏とジョン・ハンター氏が1998年に発表した論文である(Psychological Bulletin, 124巻2号)。85年にわたる研究をまとめたこの論文では、質問や評価のしかたをあらかじめ決めておく「構造化面接」のほうが、その場の流れで進める面接より、入社後の成果を予測しやすいことが示された。
その後、2022年にポール・サケット氏らが計算のしかたを見直し、数値は下がったものの、構造化面接のほうが予測しやすいという向きは変わらなかったと報告されている。
こうした知見もあって、企業は、同じ質問を、同じ形で、複数の学生に訊く面接を採り入れている。同じ質問は、学生を同じ物差しで観るための、よく錬られた工夫なのだ。
だから、同じ質問が出たときは、「また訊かれた」ではなく、「物差しに乗せてもらえた」と受け取っていい。
13-4 くり返しは、君にとっても、話を磨く機会になる
同じ質問を何度も訊かれることは、企業にとっての確認であると同時に、君にとっては、答えを磨く機会でもある。
1次面接で、うまく話せなかった部分がある。それを、2次面接で、言い直せる。何が伝わらなかったのかを、自分なりに考察して、次の機会に活かせる。選考が進むほど、答えは、確実に磨かれていくものだ。
あおラボが学生と接していても、面接を重ねるたびに、話し方が落ち着いていく人は多い。話す内容が変わったのではない。何を中心に話すかが、はっきりしていったのだ。
同じ質問は、君が成長するための、もう一度のチャンスである。そう捉えると、くり返しへの不安は、少しだけ軽くなる。

Chapter 14 答えが「ぶれる」とは、どういうことか
「ぶれないように」と言われても、何がぶれることなのか、わかりにくい。ぶれるとは、同じ話を、毎回、一字一句同じに話せないことではない。何をぶれと呼び、何を呼ばないのか。ここを整理しておこう。
14-1 言い回しが変わることは、ぶれではない
まず、はっきりさせておきたい。言葉づかいや、話す順番が、毎回少しずつ違うことは、ぶれではない。
人は、同じ経験を話すときでも、聞き手や場の雰囲気によって、自然に言い方を変える。それは、むしろ、相手に合わせて話している証拠である。台本を暗記して、毎回同じ文をそらんじるほうが、かえって不自然に聞こえてしまう。
面接官が見ているのは、言い回しの一致ではない。君が何を大切にして、どう動く人なのか。その中身が、場面が変わっても、同じかどうかである。
だから、「前と同じ言葉で話さなければ」と、緊張しなくていい。言葉は変わっていい。変わってはいけないのは、言葉の奥にある、中身のほうだ。
14-2 ぶれとは、「強みの中身」や「事実」が変わること
では、何がぶれなのか。大きく分けて、2つある。
1つめは、強みの中身が変わること。ESでは「相手の困りごとに気づいて動ける」と書いたのに、面接では「リーダーシップがある」と話す。聞き手は、「結局、この人は、どういう人なのだろう」と戸惑ってしまう。
2つめは、事実が変わること。サークルの人数、役割、期間などが、話すたびに違う。悪気がなくても、記憶があいまいだと起こりやすい。事実が変わると、話全体の信頼が揺らいでしまう。
この2つは、どちらも、「何を話すか」の中身の問題である。逆にいえば、中身さえそろっていれば、言い回しや順番が変わっても、ぶれにはならない。
ぶれを防ぐとは、言葉をそろえることではなく、中身をそろえることなのだ。
14-3 ぶれる原因は、「相手に合わせすぎる」ことにある
答えがぶれる人には、共通する原因がある。それは、相手に合わせようとしすぎることだ。
「この面接官は、リーダーシップを重視しそうだ」「この会社は、協調性を大事にしているらしい」と考えて、その場その場で、アピールする強みを変えてしまう。気持ちはよくわかる。評価されたいという思いからくる、誠実な努力でもある。
ただ、その結果として、ESと面接、1次と2次で、語る強みが変わってしまう。聞き手には、「この人の、本当の姿が見えない」という印象が残ってしまうのだ。
相手のことを考えるのは、大切だ。ただ、相手に合わせるのは、「伝え方」までにしたい。「何を伝えるか」、つまり、君の強みの中身は、相手によって変えない。この線引きが、ぶれを防ぐ、いちばん大きなポイントになる。
14-4 ぶれる原因は、「自分でも、よくわかっていない」ことにもある
もう一つの原因は、君自身が、自分の強みや経験を、まだ十分に整理できていないことだ。
整理できていないと、質問を受けるたびに、「何を話そう」と、その場で考え始めることになる。その結果、思いついた経験や、思いついた言葉を、その場の勢いで話してしまう。回によって、話す中身が変わるのは、当然の成り行きだ。
これは、君の力不足ではない。自己分析は、まだ途中なのだ。10月に見つけた一行と、前回までに整えた「結論・根拠・場面」の型は、このぶれを防ぐための材料になる。
整理できていれば、質問が変わっても、くり返されても、話の「戻る場所」がある。その戻る場所を、軸と呼ぶ。次の章では、軸の持ち方を見ていく。
Chapter 15 答えがぶれない、軸の持ち方
軸と聞くと、立派な信念のようなものを想像して、身構えてしまう人もいる。けれど、ここで言う軸は、もっと素朴なものだ。自分の話が、迷ったときに戻れる場所。それを、一つ決めておくだけでいい。
15-1 軸は、「強みの一行」と「大切にしていること」の組み合わせ
就活でいう軸は、2つの部品でできている。
1つめは、10月に作った、強みの一行。「私は、〇〇することができる」という、君が何をする人なのかを示す一文だ。
2つめは、大切にしていること。なぜ、君はそうするのか。どんな思いや価値観が、その動きを支えているのか。「人が困っているのを見過ごせない」「納得するまで考え抜きたい」といった、君の動機の部分である。
強みの一行が「何をするか」を示し、大切にしていることが「なぜするか」を示す。この2つがそろうと、君の話に、一本の筋が通る。
軸は、新しく作り出すものではない。これまでの自己分析の中に、すでにある。それを、言葉にして、手に取れる形にする作業である。
15-2 軸は、「三つ以上の場面」で、確かめる
軸が、本当に君のものかどうかは、一つの場面だけでは確かめにくい。たまたま、その場面でだけ出た動きかもしれないからだ。
そこで、同じ軸が、別の場面にも通じるかを、確かめてみる。たとえば、サークルでの場面、アルバイトでの場面、ゼミや授業での場面。三つほど並べて、どの場面でも、同じ思いで、同じ動き方をしていないかを見る。
三つの場面で共通するものが見つかれば、それは、君の中に、深く根づいたものである。そして、どの質問をされても、そのうちのどれかの場面を使いながら、同じ軸を語れるようになる。
場面は違っても、軸は同じ。これが、「ぶれない」の正体だ。ESでは場面A、面接では場面Bを話しても、軸が同じなら、聞き手には、一貫した人物として映る。
15-3 軸は、一枚の「メモ」にして持っておく
軸は、頭の中にあるだけでは、いざというときに取り出せない。緊張する面接の場では、なおさらだ。一枚のメモにして、手元に置いておくことを勧めたい。
メモに書くのは、多くなくていい。強みの一行。大切にしていること。それを支える場面を、三つ。事実としての数字や期間、役割。これだけだ。
たとえば、事実の欄に、「サークルの人数は何人」「担当した期間は何か月」「役割は何だったか」を書いておく。事実が書いてあれば、話すたびに数字や役割が変わる、という心配がなくなる。
ESを書くたび、面接を終えるたびに、このメモを見返して、更新していく。メモが、君の話の「正本」になる。迷ったときは、メモに戻る。この習慣が、答えを安定させるのだ。
15-4 軸は、面接を重ねて、育っていく
最後に、お伝えしたいことがある。軸は、一度決めたら、永久に変えてはいけないものではない。面接を重ね、人と話す中で、少しずつ育っていくものである。
面接官の質問に答えるうちに、「自分は、こんなことを大切にしていたのか」と気づく。友人に話して、「その話のとき、いちばん生き生きしているね」と言われる。そうした気づきが、軸の言葉を、より君らしい形に磨いていく。
変えていい。ただし、変えるときは、「なぜ変えたのか」を、自分で説明できるようにしておきたい。経験や気づきが加わって、より正確な言葉になったのなら、それは、ぶれではなく、成長だ。
就職活動は、自分の軸を言葉にしていく、人生丸ごとのキャリア形成の一部でもある。その言葉は、入社後も、君の判断を支えてくれる。

Chapter 16 今日から、できること
軸の考え方がわかったところで、今日から動けることを整理する。3年生と2年生では、いま置かれている状況が違う。それぞれの動き方と、今日の作業を示す。
16-1 3年生は、ESと面接の答えを、並べて見る
大学3年生の君は、秋冬のインターンの応募や、(早期)本選考の準備の中で、ESを書いたり、面接に臨んだりする機会が増えていると思う。
勧めたいのは、これまでに書いたESや、面接で話した内容を、一つの紙に並べて見ることだ。同じ質問に対する答えを、横に並べる。強みの中身は、そろっているか。事実の数字や役割は、一致しているか。
そろっていない部分が見つかったら、それが、いま直すべき箇所だ。ここで見つけられたのは、むしろ幸運である。本番で気づくより、ずっと余裕を持って直せるからだ。
面接が終わったあとは、その日のうちに、訊かれた質問と、自分の答えを、メモに残しておこう。「何を話して、どう伝わったか」の記録は、次の面接の、いちばん信頼できる材料になる。
16-2 2年生は、軸の材料を、少しずつ集めておく
大学2年生の君は、ESや面接は、まだ少し先かもしれない。それでも、軸の材料を集めることは、いまからできる。
たとえば、日々の出来事の中で、「なぜ、自分はそう動いたのか」を、ときどき考えてみる。授業、アルバイト、サークル、友人との関わり。何気ない場面にこそ、君の大切にしていることが、顔を出す。
3年生の夏に、インターンシップへの参加を考えている2年生は多いと思う。インターンにも選考がある企業があり、そこではESや面接を経験することになる。だから、材料集めを、いま始めておくのは、決して早すぎない。
材料は、ノートの片隅に、一行ずつ書いておくだけでいい。集まった一行が、三年生になったとき、軸を言葉にする助けになる。
16-3 今日の作業 軸のメモを、一枚作る
今日の作業を、一つだけ提案したい。紙かノートを一枚用意して、次の4つを書き出す。
1つめ。10月に作った、強みの一行。2つめ。その強みを支える、大切にしていること。「なぜ、そう動くのか」を、一文で。3つめ。その強みが発揮された場面を、三つ。サークル、アルバイト、授業など、分野が違うと、なおよい。4つめ。それぞれの場面の事実。いつ、どこで、何人で、どんな役割だったか。
所要時間は、20分ほどだ。三つの場面がすぐに見つからなくても、二つで構わない。空欄は、日をまたいで、思い出したときに足していけばいい。
いつ書くのかを先に決めておくと、動き出しやすい。「今夜、風呂のあと、机に座ったら」のように、場面と行動を結んでおこう。
16-4 友人や家族に、同じ質問を、二度してもらう
書き終えたら、もう一つだけ、試してほしいことがある。友人や家族に、同じ質問を、日を置いて二度してもらうことだ。たとえば、「あなたの強みは何ですか」を、今日と、数日後に。
二度目の答えを、一度目と比べてみる。言い回しは変わっていていい。強みの中身と、事実が、同じかどうかを確認する。違っていたら、メモに戻って、どちらが本当に君の言いたいことなのかを選び直す。
声に出して答えると、書いたものだけを見ていたときには気づかなかった、ずれが見つかる。ずれは、直すための手がかりだ。
聞いてくれる人が、「今日は前より、わかりやすかった」と言ってくれたなら、それは軸が育っている証拠だ。同じ質問を訊かれる場面を、練習の機会に変えていこう。
今日のまとめ
同じ質問がくり返されるのは、君を軽く扱っているからではない。面接官や選考の段階が変わるたびに、同じ君を、別の角度から確かめているのだ。
ぶれとは、言い回しが変わることではない。強みの中身や、事実が変わることを指す。それを防ぐのが、軸である。強みの一行と、大切にしていることを組み合わせ、三つの場面で確かめ、一枚のメモにして持つ。
3年生はESと面接の答えを並べて見直し、2年生は軸の材料を少しずつ集めておこう。今日は、軸のメモを一枚、作ってみてほしい。同じ質問を恐れなくなったとき、君の話は、一本の筋の通ったものになっているのだ。
自己分析も、伝える練習も、使いながら深まっていくものだと、あおラボは信じている。君の挑戦を、いつも全力で応援している。