坂村真民先生の詩に「二度とない人生だから」というのがあります。森信三師は「人生二度なし」という著作を残されています。お二人とも「人生は一度だけ」であることを教示くださっています。
「人生は一度だけ/1回だけ」、この言葉をこれまでに何度聞いてきたでしょうか。おそらく両手の指と両足の指では数えきれないほどではないかと思います。20数年生きてきたなかで一度も聞いたことがない、という人はおそらく読者の中にはおられないでしょう。
そこで、質問があります。
あなたは「人生一度だけ/1回だけ」という言葉の意味を、どこまで理解しているでしょうか?
18歳、19歳、20歳、21歳、22歳・・・何歳であってもその一年は、いや今日一日は一度限りなのです。リハーサルになければ、どれだけ頑張っても過ぎた時間を戻してやり直しができません。
大学生にもなれば、誰だって頭の中ではわかっている、と瞬時に思ってしまいます。おそらくこれまでには「わかっているよ」って、身近な人に口答え的に言ったこともあるのではないでしょうか。
もう一度、問います。少し考えて、できれば言語化してみてください。
あなたは「人生一度だけ/1回だけ」という言葉の意味を、どこまで理解しているでしょうか?
10代・20代の若い頃は、頭の中ではわかっている(つもり)でも、多くの人にとっては、人生はずっと先まであるものと捉えていることがほとんどではないでしょうか。それに終わりがあることも知識としては知っていても、リアリティーは極端に薄いのが一般的でしょう。
二度とない人生を生きている自覚を深めるには、その終わりである日を迎え自分が「死ぬ」ことについて、深考したことがあるかどうかでないかと思うます。その解は人によってさまざまなものです。最終的には自分で善し、と思えることを言語化できていれば、大切な人やお世話になった人へ、きちんと自分の思いを伝え残すことができるのではないかと思っています。
学生生活を送っているあなたが「人生一度だけ/1回だけ」を深考する際に、最もわかりやすいとお伝えしているのは、Appleの創業者の一人であるスティーブ・ジョブズ氏が2005年スタンフォード大学卒業生に向けおこなったスピーチです。動画を探すと日本語字幕がついたものを見つけることができますので、一度ご覧になるっておくことを強くお勧めします。
以下に一部引用します。
自分は間もなく死ぬという認識が、重大な決断を下すときに一番役立つのです。なでなら、永遠の希望やプライド、失敗する不安・・・これらはほとんどすべて、死の前にはなんのいみもなさなくなるからです。
本当に大切なことしか残らない。自分は死ぬのだと思い出すことが、敗北する不安にとらわれない最良の方法です。我々場みんな最初から裸です。自分の心に従わない理由はないのです。
(中略)
あなた方の時間は限られています。だから、本意でない人生を生きて時間を無駄にしないでください。ドグマにとらわれてはいけない。それは他人の考えに従って生きることと同じです。
他人の考えに溺れるあまり、あなた方の内なる声がかき消されないように。そして何より大事なのは、自分の心と直感に従う勇気を持つことです。あなた方の心や直感は、自分が本当は何をしたいのかもう知っているはず。ほかのことは二の次で構わないのです。
日本経済新聞
ガンの宣告を受けた当事者だから語ることができた言葉の数々です。自身の人生の最後の日と直面した人だけが話せる本質をこれから社会に飛び立とうとしているあなたと同世代の若者へ語っています。
私が社会人となった頃、すでに経営者として名を上げていた彼は、私の小さなヒーローでした。その後、人材教育・組織開発のフィールドで働く頃には、尊敬すべき経営者の一人として、いくつかのケースも学ぶようになりました。
若い頃は永遠のようにたっぷりあると考えがちな人生ですが、81歳の誕生日まで生きてもその日数は29,585日(人によって若干違います)です。そこから30,000日目を迎えるには82歳の誕生日からさらに1.5ヶ月後となります。つまり、日本の平均寿命まで元気に生きたとしても、約3万回+α程度しか朝を迎えることも夕日を眺めることもできないのです。人生の時間を日数で捉えてみるとおよそ3万日が今の日本の目安と言ってもいいでしょう。
そうです、思ったより少ない数なのです。
このように捉えると、人生は時間という量で考えるだけではなく、体験という質で考えてみることの大切さが理解いただけると思うのですが、いかがでしょう。
学生までの体験はその多くが待もまれたものでしたが、社会に出ると、一つひとつの体験に責任が生まれ、それを果たすことを求められるのです。
働くことが人生の一部か人生とイコールなのかは各人の価値観に委ねますが、同じ働くなら、そこで過ごした時間が充実したものしたいのは誰も異論はないかと思います。
そのためにも、二度とない人生であなたはどんな仕事を実際に行って、社会や他人に役立ちたいのか、ということを深考し言語化することが、職業人として大事なコトではないと考えるのです。
ぜひ、そんな視点からもあなた自身が働くということについて考察してみることをお勧めします。
今回引用したのは、日本経済新聞ウェブサイトに掲載されている「ハングリーであれ。愚か者であれ」ジョブズ氏スピーチ全訳はコチラからご確認いただけます。