「なんでも相談して」を本物に——手を止めて聞く3つの行動

「なんでも相談して」と言っているのに、相談が来ない理由

こんにちは、あなたと、あなたの組織が、もっと元気になるお手伝いをしている【あおラボ】です。

「困ったことがあったら、いつでも相談して」。チームのメンバーに、そう伝えている人は多いと思う。言葉に偽りはなく、本心から言っているはずだ。

それなのに、相談がなかなか来ない。来たとしても、問題がかなり大きくなってからだった。そんな経験はないだろうか。

原因は、言葉が足りないことではないかもしれない。メンバーは、あなたの言葉を聞いたあとで、実際に相談したときの、あなたの反応を見ている。この記事では、言葉と行動を揃えるいちばん身近な場面として、相談されたときの行動を取り上げ、明日から使える3つの行動を整理していく。

Chapter 5 言葉と行動のずれは、「相談された瞬間」に起きる

「いつでも相談して」という言葉は、リーダーの善意から生まれる。その善意が、メンバーに届くかどうかは、相談された瞬間の行動で決まる。まず、ずれがどこで起き、どんな影響を生むのかを見ていこう。

5-1 「いつでも相談して」は、善意から生まれる言葉である

メンバーに「いつでも相談して」と伝えるリーダーの多くは、本当にそう思っている。自分が若いころ、相談できる上司がいなくて困った経験から、せめて自分は聞く側でありたいと考えている人もいる。

その気持ちは、とても大切だと思う。相談を受ける姿勢は、リーダーにとって、欠かせない土台である。

ただ、リーダーの日常は、忙しい。会議、報告書、取引先からの連絡、トラブル対応と、手を動かす時間は、いくらあっても足りない。そんなときに「ちょっといいですか」と声をかけられると、頭の中では「聞きたい」と思いながら、体は画面に向かったままになってしまう。

悪気はない。善意の言葉と、忙しさの中での行動が、少しずつずれていく。それが、多くの職場で起きている実態ではないかと思う。大切なのは、このずれを責めることではなく、ずれが起きる場所を知ることである。

5-2 メンバーは、言葉より「相談したときの反応」を見ている

メンバーは、リーダーの言葉を聞いたあとで、あることを確かめている。実際に相談してみたら、どんな反応が返ってくるのか、という点だ。

ジェームズ・デタート氏とイーサン・バリス氏は、2007年に『Academy of Management Journal』誌で発表した研究で、リーダーの行動と、部下が意見や提案を口にする「発言」の関係を調べた。結果として、リーダーが「話しやすい」と感じられる行動を取っているかどうかが、部下の発言と、より強く結びついていた。バリス氏自身も、「私のドアはいつも開いている」と言うだけでは足りないと語っている。

つまり、「いつでも相談して」と言うことと、相談しやすい職場であることは、別なのだ。

メンバーは、一度勇気を出して相談したときの反応で、次も相談するかどうかを決める。最初の一回の受け止め方が、そのあとの相談の数を左右する。だからこそ、行動を整えることに価値がある。

5-3 手を止めない小さな反応が、「相談しにくさ」をつくる

相談したときに、リーダーの視線がパソコンの画面から離れない。キーボードを打つ手が止まらない。「うん、聞いてるよ」と言うが、目は画面を追っている。

こうした反応は、リーダー自身には、悪気のない「ながら聞き」である。けれど、相談するメンバーにとっては、「いま話すのは迷惑なのだ」という強いサインになる。

2014年に『Environment and Behavior』誌に発表された、シェリー・ミスラ氏らの研究がある。喫茶店で2人ずつ会話をしてもらい、机の上に携帯電話があるかどうかで、会話の質を比べた。携帯電話が目に入る状況では、会話の質や、相手とのつながりの感じ方が、わずかに低かった。特に、近い関係の2人で、その傾向が強かった。

画面や電話が目に入るだけでも、相手は「聞いてもらえている」という感覚を、少し失う。仕事の場面であれば、なおさらである。

相談しにくさは、大きな出来事からではなく、こうした小さな反応の積み重ねから、生まれている。

5-4 相談が来ないのは、「問題がない」ということではない

相談が来ないと、「うちのチームは順調なのだ」と考えたくなる。けれど、相談が来ないことと、問題がないことは、別である。

エイミー・エドモンドソン氏は、1999年に『Administrative Science Quarterly』誌で発表した研究で、チームの中に「ここでは、間違いや疑問を口にしても大丈夫だ」という共通の感覚があるかどうかを、「心理的安全性」として整理した。この感覚が強いチームほど、メンバーが質問や失敗の報告をして、チームとして学んでいく行動が多かった。

反対に、心理的安全性が低いチームでは、メンバーは、問題に気づいていても、口にしない。口にするより、黙っているほうが安全だと判断するからだ。

相談が来ないのは、メンバーに相談することがないのではなく、相談しにくいのかもしれない。この可能性に目を向けることが、言葉と行動を揃える、最初の一歩になる。

Chapter 6 行動① 手を止める

3つの行動の1つ目は、手を止めることである。難しいことは何もない。ただ、いま動いている手と目を、相談してきた人に向ける。それだけで、「あなたの話を聞く」という意思が、相手に伝わる。具体的なやり方を見ていこう。

6-1 画面から目を離し、体を相手に向ける

相談されたら、まず、パソコンの画面から目を離す。キーボードから手を離し、椅子ごと、相手のほうに体を向ける。

言葉をかける前の、この動作が、いちばん大切である。「聞くよ」と口で言う前に、体が先に「聞く」姿勢を見せる。メンバーは、その動作を見て、安心して話し始められる。

スマートフォンを持っているときは、画面を伏せて置く。目に入らない場所に置けるなら、さらによい。5-3で見たように、電話が目に入るだけでも、会話の質は少し下がるからだ。

必要なのは、長い時間ではない。最初の数秒で、手と目と体を、相手に向ける。それだけで、相談する側の緊張は、ずいぶん和らぐ。

まずは、今週、相談されたとき、最初の動作だけを意識してみよう。画面から目を離す。手を止める。体を向ける。この3つを、毎回の約束にするのだ。

6-2 手が離せないときは、「いつ聞くか」を伝える

とはいえ、どうしても手が離せないときはある。締め切りの直前や、電話対応の最中は、すぐには聞けない。

そのときに、いちばんよくない対応は、手を止めずに「あとでね」と言うことだ。「あとで」がいつなのかわからないと、メンバーは、相談すること自体をあきらめてしまう。

おすすめは、「いつ聞くか」を、具体的に伝えることだ。「いまは手が離せない。15時に、ゆっくり聞かせてほしい」。たったこれだけで、メンバーは、断られたとは感じない。むしろ、大切に扱われたと受け取る。

そして、伝えた時間は、必ず守る。15時と言ったのなら、15時に、仕事を中断して聞く。ここで約束を守ることが、「いつでも相談して」という言葉を、本物にする。

手が離せないときの対応こそ、言葉と行動が揃っているかどうかが、いちばん試される場面なのである。

6-3 手を止める時間は、思うよりずっと短くていい

「手を止めると、仕事が止まってしまう」。そう心配するリーダーは多い。確かに、作業の途中で中断されると、元の集中状態に戻るまでには時間がかかる。

グロリア・マーク氏らが2008年にコンピュータ学会の会議(CHI)で発表した研究では、作業を中断された人は、作業を早く終わらせようとするものの、そのぶんストレスや焦りが大きくなっていた。中断には、目に見えない負担があるのだ。

だからこそ、手を止めるときは、きちんと止めたほうがよい。中途半端に作業をしながら聞くと、聞く側にも、話す側にも、負担が残る。

そして、すべての相談が、長い時間を必要とするわけではない。多くの相談は、5分で足りる。短い相談を、きちんと手を止めて聞く。それだけで、相手の相談のしやすさは、大きく変わる。

長い時間を確保しなくていい。短くても、全部の注意を向ける時間を、毎回つくる。それが、現実的で、続けやすい方法である。

6-4 チャットやオンラインの相談でも、同じ考え方で

最近は、対面ではなく、チャットや通話ツールでの相談も増えている。相談の形が変わっても、考え方は同じである。

チャットで「少しご相談したいことがあります」と届いたら、メッセージを後回しにしない。すぐに全部は聞けなくても、「ありがとう。今日の16時でどうだろう」と、短くても早く返す。返信の早さは、「あなたの相談を大切にしている」という、はっきりしたサインになる。

通話で相談を受けるときは、画面共有や他の作業を止め、相手の顔と声に集中する。耳だけで聞きながら、手元で別の作業をしていると、声の調子や間の取り方に、意外なほど出てしまうものだ。

また、対面でもオンラインでも、相談のしやすい時間帯を、あらかじめ決めておく方法もある。「毎週水曜の15時は、相談の時間」と決めておけば、メンバーは声をかけやすい。形は変わっても、「あなたの話を聞く時間を、私は確保している」と、行動で示すことが大切である。

Chapter 7 行動② 最後まで聞く

2つ目の行動は、最後まで聞くことである。手を止めても、話の途中で口を挟んでしまうと、相談した側は「聞いてもらえなかった」と感じる。リーダーにとって、実は、いちばん難しい行動かもしれない。なぜ難しく、どうすればよいのかを見ていこう。

7-1 途中で結論を出したくなるのは、リーダーの優しさの裏返しである

相談を聞いていると、話の途中で、答えが見えてしまうことがある。経験を積んだリーダーであるほど、そうなりやすい。

「それは、こうすればいいんじゃないか」。親切心から、つい口を挟んでしまう。時間を節約したい気持ちもある。メンバーを困った状態から早く救いたいという、優しさでもある。

けれど、話の途中で結論を出されると、相談した側には、「最後まで聞いてもらえなかった」という気持ちが残る。本当に伝えたかったことが、まだ話せていないからだ。

また、相談の本当の中身は、話の最後にあることが多い。最初に出てくる言葉は、きっかけにすぎない場合がある。「実は……」と、そこで初めて、核心が語られる。

途中で答えを出したくなったら、それは、自分が優しいリーダーだという証拠でもある。その優しさを、あと少しだけ、待つことに使ってみよう。

7-2 相づちと、確認の一言で、「聞いている」を伝える

最後まで聞くといっても、黙ってうなずいているだけでは、聞いてもらえているのかが、伝わりにくい。大切なのは、聞いていることが、相手にわかるようにすることだ。

使いやすいのは、2つの道具である。1つ目は、相づち。「うん」「なるほど」「そうだったのか」と、短い言葉を、話の区切りに挟む。

2つ目は、確認の一言である。話がひと区切りついたとき、「つまり、〇〇ということで困っているんだね」と、聞いた内容を、自分の言葉で返してみる。

この確認が、とても効果的である。相手は、「ちゃんと伝わった」と安心できる。もし違っていれば、「いえ、実は……」と、そこで修正してくれる。その結果、相談の本当の内容に、早くたどり着ける。

答えを出す前に、まず確認する。それだけで、相談の質が、見違えるほど変わる。

7-3 話が止まっても、少しだけ待つ

相談をしている人が、言葉に詰まって、黙ってしまうことがある。この沈黙は、リーダーにとって、居心地が悪い。つい、助け舟を出したくなる。

けれど、この沈黙は、多くの場合、考えている時間である。何を、どう言えばよいかを、頭の中で整理している。そこへ、リーダーが言葉を重ねると、せっかく整理しかけた考えが、途切れてしまう。

沈黙が来たら、まず、数を数えるつもりで、少し待ってみよう。3秒から5秒でいい。意外と、相手は、その間に自分から話し始める。

そして、話し始めた言葉は、多くの場合、それまでの言葉より、本質に近い。相談する人が、自分で考えて出した言葉だからだ。

待つことは、何もしないことではない。相手の考える力を信じて、時間を渡すという、積極的な行動である。待った分だけ、相手の話は、深くなる。

7-4 答えや助言は、聞き終えてから出す

最後まで聞いて、確認もした。その次に、ようやく、リーダーの出番が来る。

答えや助言は、ここで初めて出す。順番を守ることで、助言の受け止められ方が、変わるからだ。聞き終えてから出した助言は、「自分の話を聞いたうえでの助言」として、受け取ってもらえる。

また、聞き終えたあとは、すぐに答えを出さなくても、よい。「話してくれて、ありがとう。少し考えて、明日までに返事をするよ」。これも、立派な対応である。その場で答えを出せない相談もある。

大切なのは、答えを出すことより、相談者が「話してよかった」と感じられることだ。その感覚が残れば、次の相談につながる。

もう一つ、おすすめしたいのは、「どうしたいと思っている?」と、相手に訊くことだ。リーダーが答えを出す前に、本人の考えを聞いてみる。意外と、本人の中に、すでに答えがあることも多い。

Chapter 8 行動③ 意見の前に「ありがとう」を言う

3つ目の行動は、意見を言う前に、「ありがとう」と伝えることである。相談してくれたことへの感謝を、最初に置く。この小さな一言が、次の相談へのいちばん大きな後押しになる。なぜ効果があるのか、どう使うのかを見ていこう。

8-1 相談することは、思っているより勇気がいる

リーダーにとって、相談を受けることは、日常の一部である。けれど、相談する側にとっては、そうではない。

「こんなことを訊いたら、評価が下がるかもしれない」「忙しそうなのに、迷惑ではないか」「自分の力不足だと思われないか」。相談の一言を口にするまでに、メンバーの頭の中では、こうした不安が回っている。

それでも相談しに来てくれたのは、リーダーを信頼しているからであり、チームをよくしたいと考えているからだ。

その勇気に対して、最初に返す言葉は、評価でも助言でもなく、感謝であるべきだと思う。「話してくれて、ありがとう」。この一言で、相談者は、「相談してよかった」と感じられる。

相談は、リーダーに差し出された、信頼のしるしである。まず、その信頼を、きちんと受け取ろう。

8-2 「ありがとう」を先に、意見はそのあとに

順番は、とても大切である。意見や助言を先に言い、最後に「ありがとう」を添える人がいる。けれど、それでは、感謝が、おまけのように聞こえてしまう。

「ありがとう」を、先に言う。相談の内容を聞き終えたら、すぐに意見を述べるのではなく、まず、「話してくれて、ありがとう」と伝える。そのあとで、意見や助言を伝える。

この順番にするだけで、同じ助言でも、受け止められ方が変わる。感謝を先に受け取ったメンバーは、気持ちに余裕ができ、そのあとの助言を、素直に聞ける。

言い方は、短くてよい。「ありがとう」「教えてくれて助かった」「早めに言ってくれて、よかった」。自分の言葉で言える、一番自然な言い方を選ぼう。

大げさにする必要はない。毎回、同じ短い一言を、くり返す。その積み重ねが、リーダーとメンバーの間の、信頼を育てていく。

8-3 言いにくい報告や、反対意見のときほど、先に感謝を

「ありがとう」を言うのが難しいのは、いい話ではないときである。ミスの報告、納期の遅れ、リーダーの方針への反対意見。こうした相談は、聞いた瞬間に、ネガティブな感情が湧いてしまう。

けれど、こういうときほど、「ありがとう」を先に言う価値は、大きい。

悪い報告をしてくれたメンバーは、言いにくいことを、勇気を出して伝えてくれた。もし、そこで叱責や不機嫌な反応が返ってきたら、次からは、悪い報告を隠すようになる。問題が小さいうちに知る機会を、リーダー自身が失うことになる。

「早く教えてくれて、ありがとう。いま、何ができるか、一緒に考えよう」。この一言は、問題に向き合うチームの姿勢を示す。

感謝は、ミスを許すことではない。問題を共有してくれた行動に対する、ありがとうである。内容への判断は、そのあとにすればよい。

8-4 今週、手帳に書いて、やってみる

ここまで、手を止める、最後まで聞く、意見の前に「ありがとう」を言う、という3つの行動を見てきた。今週は、この3つを、実際にやってみよう。

最初の一歩は、「いつ、どこで」を決めることだ。ペーター・ゴルヴィッツァー氏が1999年に『American Psychologist』誌で整理した「実行意図」の研究では、「いつ、どこで、何をする」を事前に決めておくと、行動に移せる可能性が高まることが示されている。

たとえば、「今週、メンバーから声をかけられたら、画面から目を離す」。これを手帳に1行書く。それだけで、準備は整う。

そして、金曜日に、5分だけ振り返る。相談されたのは何回あったか。手を止められたのは、何回か。最後まで聞けたか。「ありがとう」を言えたか。

うまくできなかった日があっても、問題ない。できなかった場面は、次に手を入れる場所を教えてくれる。大切なのは、完璧にやることではなく、続けて確かめることである。今週は、3つのうち、1つだけでも、始めてみよう。

今日のまとめ

「なんでも相談して」という言葉を本物にするのは、相談されたときの行動である。手を止める。最後まで聞く。意見の前に「ありがとう」を言う。この3つが揃ったとき、あなたの言葉は、メンバーにとって、信じられる言葉になる。

メンバーは、言葉よりも、相談したときの反応を見ている。画面から目を離す、時間を約束して守る、話を遮らずに待つ、そして感謝を先に伝える。どれも、特別な技術ではなく、今日から始められる小さな行動だ。

今週は、3つの中から1つを選び、手帳に書いて、やってみよう。小さな行動の積み重ねが、言葉と行動の距離を、少しずつ縮めていくのである。

あなたの一歩は、あなた自身のためだけでなく、メンバーのため、そして職場全体のためになると、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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