「問いかける」を練習する——メンバーが動く5つの問い

指示で動かすより、問いかけで動いてもらう。

こんにちは、あなたとあなたの組織の未来を共に創造し、組織の活性化を支援している【あおラボ】です。

「言ったことはやる。でも、言わないとやらない」。メンバーについて、こう感じたことはないだろうか。

少し立ち止まって考えてみてほしい。リーダーが毎回指示を出してくれる職場では、指示を待つことが、メンバーにとっていちばん安全なやり方になる。指示どおりにやれば、間違えずにすむ。自分で考えなくてもいい。人は、そういう環境に合わせて動き方を身につけていく。メンバーに主体性がないのではない。主体性を出さなくてもすむ環境が、できあがっているのかもしれない。

前回(10月19日)は、チームの空気を変える7つの声かけ習慣をお届けした。今日はその1つ目、「どうしたらいいと思う?」をさらに深めて、メンバーが自分で考えて動き始める「問いかけ」の練習方法をお届けする。問いかけは技術である。練習すれば、必ず使えるようになる。

Chapter 25 なぜ「問いかけ」がメンバーを変えるのか

問いかけが持つ力を理解してから練習に入ると、使い方の精度が上がる。問いかけは、ただ質問をすることではない。使い方を間違えると、かえってメンバーを萎縮させてしまうこともある。この章では、5つの問いに入る前に、問いかけの本質を4つの面から確かめておきたい。

問われると、人は考え始める

「この問題、どうしたらいいと思う?」と聞かれると、人は自然と考え始める。問いを受けると、答えを探さずにはいられないからだ。

指示は「やること」を与える。問いは「考えること」を促す。この違いが、メンバーの動き方に大きく影響する。言われたとおりにやった仕事と、自分で考えてやった仕事とでは、終わった後の手応えも、責任の感じ方もまったく違う。自分で考えて決めたことは、うまくいかなかったときにも、自分で立て直そうとする。問いかけは、メンバーに「自分でやった」という感覚を渡すための、いちばん身近な方法なのだ。

今日、メンバーに何かを頼むとき、指示の形ではなく問いの形で伝えてみてほしい。「これをやって」を、「これ、どう進めるのがいいと思う?」に置き換えるだけでいい。

答えを持っていても、あえて聞く

問いかけを難しくしているのは、「答えがわかっているのに、なぜ聞くのか」という感覚である。

リーダーには経験と知識がある。多くの場合、すでに正解が見えている。だから、聞くより教えるほうが早いと感じる。けれど、それでも聞くことに意味がある。メンバーが自分の言葉で答えにたどり着く経験が、考える力を育てるからだ。教えれば、今日の問題は早く片づく。けれど、明日も同じように教えることになる。聞けば、今日は少し時間がかかる。けれど、明日にはメンバーが自分で考えて動けるようになっているかもしれない。

答えがわかっている場面ほど、あえて一度聞いてほしい。メンバーの答えが自分と違っていても、まずは最後まで聞いてほしい。違いの中に、新しい見方が隠れていることもある。

「詰問」と「問いかけ」は、まったく違う

「なぜできなかったの?」「なんでそんなことをしたの?」。これらは、問いの形をした詰問である。

答えを引き出すためではなく、責任を問うために使われる問いは、メンバーを萎縮させる。問いかけとは、相手の考えを引き出し、一緒に答えを見つけようとする問いのことだ。言葉の形が似ていても、問いの背後にある姿勢は、驚くほど正確に相手に伝わる。「あなたの考えを聞きたい」という姿勢で問いかけると、メンバーは安心して話せる。「なぜ」という言葉を使うときは特に、声の調子と表情に気をつけてほしい。姿勢が先で、言葉は後なのだ。

「なぜ」と聞きたくなったら、「どうして、そうしようと思ったの?」と言い換えてみてほしい。言い換えるだけで、責める響きがやわらぐ。

問いかけには、安心して答えられる「場」が要る

問いかけが力を発揮するには、安心して答えられる場が必要である。

「間違えたら怒られる」「変なことを言ったら笑われる」。そんな空気の中では、どれだけ上手に問いかけても、答えは返ってこない。この連載で取り組んできた、5Sやあいさつ、声かけの積み重ねは、まさにこの「安心して答えられる場」をつくるためのものだった。その土台の上で、問いかけははじめて機能する。問いかけだけを変えても、なかなか変わらないのはそのためだ。環境と問いかけを、セットで整えていく必要がある。

問いかけても答えが返ってこないなら、問いのせいにせず、場の空気を振り返ってほしい。10月5日のチェックポイントを、もう一度見直してみるのもいい。見直すと、場の課題が見えてくる。

Chapter 26 今日から使える5つの問い(前半)

ここから、具体的な問いを5つお伝えする。この章では、そのうち前半の4つを紹介する。「次の1on1で使う」「来週のミーティングで使う」と、使う場面を思い浮かべながら読んでほしい。気に入った問いは、手帳の見えるところに書き写しておくといい。

問い① 「どうしたいと思っている?」

1つ目は、相談を持ってきたメンバーに使う問いである。

「どうすればいいですか?」と相談されたとき、すぐに答えを返す代わりに、「あなたは、どうしたいと思っている?」と聞いてほしい。この問いは、メンバーに「自分の意見を持っていい」という許しを渡す。最初は「わかりません」と返ってくるかもしれない。それでも、「少し考えて、また聞かせてほしい」と返してほしい。すぐに答えが出なくてもかまわない。考える時間を渡すこと自体に、意味があるからだ。くり返すうちに、メンバーは相談に来る前に、自分の考えを用意してくるようになる。

次に相談を受けたら、この問いから始めてほしい。答えを伝えるのは、メンバーの考えを聞いた後でいい。考えを聞けたら、まずそのことに礼を伝えてほしい。

【H3】問い②「今、いちばん気になっていることは何?」

2つ目は、1on1や面談の最初に使う問いである。

「仕事は順調?」という問いは、「はい」で終わりやすい。聞かれた側も、何を話せばいいのか迷ってしまうからだ。「今、いちばん気になっていることは何?」と聞くと、もう少し深いところにある話が出てきやすくなる。「実は、こういうことが気になっていて」。そんな言葉が出てきたら、その1on1は意味のある時間になる。この問いは、リーダーの「あなたの話を聞きたい」という気持ちを伝える問いでもある。定期的に使い続けると、メンバーは本音を話していいと感じるようになる。

次の1on1は、この問いから始めてほしい。出てきた話題には、「もう少し聞かせて」と一歩だけ踏み込んでほしい。解決を急がず、聞くことに徹してほしい。

問い③ 「これがうまくいったら、何が変わると思う?」

3つ目は、目標や課題に向き合っているメンバーに使う問いである。任せる場面でも役に立つ。

この問いは、メンバーに、その仕事の意味を自分の言葉で語る機会を渡す。「お客様の手間が減ります」「チームの残業が減ります」。答えはさまざまだろう。どんな答えでも否定せず、「それは大事なことだね」と受け止めてほしい。仕事の意味を自分の言葉で語った経験は、やる気の土台になる。誰かに言われた意味ではなく、自分で見つけた意味は、困難な場面でも揺らぎにくいからだ。10月5日のチェックポイント⑦「仕事の意味の共有」を育てる問いでもある。

新しい仕事を任せるとき、この問いを一緒に添えてほしい。答えを聞いたら、その言葉をメンバーに返して確かめてほしい。

問い④ 「何のためらいもなかったら、どうしたい?」

4つ目は、遠慮や制約をいったん外したときの、メンバーの考えを引き出す問いである。

予算がない。時間がない。上の許可が下りない。こうした現実の壁があると、メンバーの本当の考えは表に出てこない。「もし、何のためらいもなかったら、どうしたい?」と聞くと、メンバーの本来の考えや願いが出てきやすくなる。出てきた答えを、「それは現実的ではない」と切り捨てないでほしい。まず「そうか、それがやりたいんだね」と受け止める。そこから、「では、今の条件の中でできることは何だろう」という対話が始まる。大きな願いを聞いた後のほうが、現実的な一歩も見つけやすくなるのだ。

行き詰まっているメンバーがいたら、この問いを使ってほしい。出てきた願いは、否定せずに書き留めておいてほしい。

Chapter 27 5つ目の問いと、問いかけを続けるコツ

5つ目の問いに加えて、問いかけを習慣として根づかせるためのコツをお伝えする。問いかけは、問いの言葉そのものより、問いの後にどう振る舞うかで効き目が変わる。沈黙の待ち方、答えの受け取り方、練習の仕方。この章で、あわせて確かめておきたい。

問い⑤ 「一緒に振り返ってみよう。何が良かったと思う?」

5つ目は、仕事が一区切りついたときに使う問いである。うまくいったときにも、うまくいかなかったときにも使える。

「何が良かったと思う?」と聞くと、メンバーは自分が何を学んだかを整理し始める。うまくいかなかった仕事でも、良かった点は必ずある。そこから話を始めると、振り返りが責める場ではなく、学ぶ場になる。リーダーが失敗を指摘するより、メンバー自身が気づいたことのほうが、ずっと深く残るのだ。「では、次にもっと良くするには?」と続ければ、次の行動も自分で決められるようになる。この問いをくり返すことで、メンバーは次に何をすべきかを自分で考えるようになっていく。

仕事が一区切りついたら、10分だけ振り返りの時間を取ってほしい。最初の問いは、必ず「何が良かったと思う?」にしてほしい。

問いかけた後の「沈黙」を恐れない

問いかけると、すぐには答えが返ってこないことがある。そのとき、多くのリーダーは沈黙に耐えられず、自分で答えを言ってしまう。

けれど、その沈黙こそが、メンバーが考えている時間である。10秒、20秒。リーダーにとっては、とても長く感じられるだろう。それでも、待ってほしい。沈黙の後に出てくる言葉は、メンバーが本当に考えた言葉だ。リーダーが沈黙を埋めてしまうと、メンバーは「待っていれば答えが出てくる」と学んでしまう。「急がなくていいよ。考えてみて」と一言添えて、待つことを練習してほしい。

次に問いかけたときは、心の中でゆっくり10数えてほしい。それでも答えが出なければ、「また後で聞かせて」と時間を渡してほしい。後で必ず聞きに行くことも忘れないでほしい。

問いかけた後は「受け取る」ことが仕事

問いかけた後のリーダーの仕事は、答えを評価することではない。答えを受け取ることである。

メンバーが答えたとき、すぐに「でも」と返していないだろうか。まず、「なるほど、そう考えているんだね」と受け取ってほしい。受け取ってもらえた経験が、次の発言を生む。反対に、「どうせ否定される」という経験が積み重なると、問いかけても答えは返ってこなくなる。問いかけと受け取りは、いつもセットなのだ。受け取った後で、自分の考えを伝えるのはかまわない。順番を守ることが大切である。受け取ってから伝えれば、同じ意見でも届き方が変わる。

今週は、メンバーの答えに対して、最初の一言を必ず「なるほど」にしてほしい。「でも」と言いたくなったら、一呼吸おいてほしい。

週に1度の「問いかけの練習日」を決める

問いかけを習慣にするには、意識して練習する機会を決めておくことが近道である。

毎週水曜日の1on1では、必ず問いを1つ使う。毎週月曜日の朝礼は、問いかけから始める。このように、曜日と場面を決めておくと、練習が習慣になっていく。場面が決まっていないと、忙しさの中で問いかけることを忘れてしまう。練習日を決めるのは、忘れないための仕組みなのだ。最初は、使う問いを1つに絞ってかまわない。慣れてきたら、今日の5つの問いを順番に試していけばいい。

今日、練習日の曜日と場面を決めて、カレンダーに入れてほしい。その日に使う問いも、あわせて書いておいてほしい。練習日の後には、使った問いとメンバーの反応を1行だけ記録してほしい。その記録が、次の練習の材料になる。

Chapter 28 問いかけが根づいた職場の姿

問いかけが自然に使えるようになったとき、チームにはどんな変化が起きているのか。そして、リーダー自身には何が起きているのか。最後の章では、問いかけの先にある職場の姿を4つの面からお伝えし、今週使う問いを決めて締めくくりたい。

「考えることが当たり前」になる

リーダーが問いかけを続けていると、やがてメンバー同士でも問いかけ合うようになる。

「あなたはどう思う?」「どうしたらうまくいくと思う?」。そんな言葉が、メンバーの間でも交わされ始める。こうなると、チーム全体が「考えることが当たり前」という空気に変わっていく。これは、大きな変化である。問いかけの文化は、リーダーから始まり、やがてチーム全体に広がっていくのだ。考えることが当たり前になったチームでは、問題が起きたときにも、誰かの指示を待たずに動き出せる。

メンバー同士が問いかけ合っている場面を見つけたら、「今の問いかけ、良かったね」と伝えてほしい。認められた行動は、チームに広がっていく。小さな場面ほど、見逃さずに伝えてほしい。

失敗の扱い方が変わる

問いかけが根づいたチームでは、失敗の扱い方も変わってくる。

「なぜ失敗したの?」ではなく、「そこから何がわかった?」という問いが、自然に使われるようになる。失敗を責める場から、失敗から学ぶ場へ。この変化が、メンバーの挑戦する気持ちを支える。「失敗しても、次につながる話し合いができる」という安心感があると、人は新しいことに手を伸ばせるようになる。10月5日のチェックポイント⑥で見た「失敗の扱われ方」は、問いかけによって変えていくことができるのだ。

次に失敗が起きたときは、最初の問いを「そこから何がわかった?」にしてほしい。責める前に、学びを一緒に探してほしい。見つかった学びは、チーム全体で共有してほしい。同じ失敗を防ぐ力になる。

リーダー自身が楽になる

問いかけが習慣になると、リーダー自身にも変化が起きる。すべての答えを自分が持っていなければならない、という重さから解放されるのだ。

メンバーが自分で考えて動くようになると、リーダーがひとりで抱える判断が減っていく。「あなたはどう思う?」と聞けば、リーダーがすべての答えを用意しておく必要はない。メンバーの答えの中に、リーダーが思いつかなかった良い案が見つかることもある。問いかけは、メンバーのためであると同時に、リーダー自身の働き方を変える道具でもあるのだ。浮いた時間は、チームの先を考えることに使える。

「全部自分で答えなければ」と感じたときこそ、問いかけを思い出してほしい。答えを1人で抱え込まなくていい。問いかければ、チームが一緒に考えてくれる。

今週使う問いを、1つだけ決める

この記事を読み終えたら、今週使う問いを1つだけ決めてほしい。

「今、いちばん気になっていることは何?」を、次の1on1で使う。「どうしたいと思っている?」を、次に相談が来たときに使う。どちらでもかまわない。大切なのは、1つに絞って、確実に使うことだ。5つ全部を一度に使おうとすると、どれも中途半端になってしまう。問いかけは練習である。1回使うごとに、少しずつ上手くなっていく。使った後に、メンバーの反応を一言だけ書き留めておくと、次の問いかけがさらに良くなる。

選んだ問いを、手帳に書いてほしい。使った日には、丸をつけていってほしい。1週間で丸が1つでもつけば、それは確かな前進である。丸がつかなかった週は、問いを使う場面を決め直してほしい。

今日のまとめ

メンバーが指示を待つのは、主体性がないからではなく、指示を待つほうが安全な環境になっているからかもしれない。問いかけは、その環境を変える技術である。

問いかけは、詰問とはまったく違う。「あなたの考えを聞きたい」という姿勢があって、はじめて問いかけになる。そして、安心して答えられる場があってこそ、問いかけは力を発揮する。

今日お伝えした問いは5つある。「どうしたいと思っている?」「今、いちばん気になっていることは何?」「これがうまくいったら、何が変わると思う?」「何のためらいもなかったら、どうしたい?」「何が良かったと思う?」だ。

問いかけた後は、沈黙を恐れずに待ち、答えをまず受け取ってほしい。そして、週に1度の練習日を決めてほしい。

次回(10月26日)は、チームのメンバーと一緒に「合言葉」をつくるワークをお届けする。問いかけを使って、チームの言葉を一緒に生み出していく回だ。一緒に見ていきたい。

問いかけが自然に交わされるとき、チームは考えることが当たり前の場所に変わると、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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