採用充足率、採用格差の芽になるか

多くの企業が25年卒に対しての採用活動が既に終盤になっていますが、採用充足率をみると、予定数の半数以上採用が確定している割合は40.0%(6月時点調査)と前年比で0.5ptの微増となっていました。

採用充足率(採用予定数に対して現在採用が確定している割合)

  • 8割以上 19.5%(前年19.0%)
  • 5~7割  20.5%(前年20.5%)
  • 1~4割  27.9%(前年28.9%)
  • 0割    32.0%(前年31.5%)

8割以上が24年卒の19.0%から0.5pt増している一方で、0割も0.5pt増となっていて、採用充足率が高い企業と低い企業の差が若干ですが広がっていることが伺えます。この差が今後どうなるのかは見守っていきたいところです。おそらく現時点での差の根っこにあるものは、初任給ではないかと思われます。

初任給の引き上げについて調査した結果をみると、学部卒の総合職採用について、直近で初任給の引き上げを行った企業は84.4%と前年の70.0%から14.4pt増加でした。上場企業・非上場企業ともに8割を超える企業が初任給を増額していることがわかります。

初任給を引き上げたか(学卒・総合職)

  • 24年卒 引き上げ70.0% : 引き上げていない30.0%
  • 25年卒 引き上げた84.4% : 引き上げていない15.6%
  • 上場企業  引き上げた84.4% : 引き上げていない12.3%
  • 非上場企業 引き上げた84.1% : 引き上げていない15.9%

引き上げ額について、前年は「5000円~1万円未満」36.0%が最多でしたが今年は「1万~2万円未満」35.9%が最多となっていて、上げ幅も前年より拡大しています。特に上場企業では「1万~2万円未満」の割合が前年の約2倍となっていました。

人手不足が大きな課題となっている採用市場では新卒者採用ニーズが年々加熱するなか、母数となる学生の人数にはもちろん限りがありますので、売り手である学生有利な状況が近年続いています。企業としては、一人でも多くの優秀な学生に入社して欲しいわけですから、初任給の引き上げは、自社が第一志望群入りをするための策としも必要な要件となっているのでしょう。学生目線で志望企業選定を考えると、同等レベルの企業で甲乙つけがたいときに給料の差でジャッジすることに至るのは珍しいことではありません。もちろんお金が働く目的ではないとしても、現代社会で社会人となる学生が給料を選定基準に含まないことはゼロに等しいと思うのです。

昨年から続く物価高や円安の行方不透明がこの先も続く気配を多くの国民が感じている我が国の経済市場を鑑みると、26年卒に対する採用活動が本格化する前に、もう一段初任給の引き上げがあるのではないかと思います。

26年卒の皆さんにいま一度お伝えしたいことは、就職先を意思決定基準は多様性が現れるものです。給与や休みなど待遇面は大切な項目ではありますが、あなたが「働く目的」を何度も推考を繰り返しながら、自分が納得できる形に言語化することを夏休みの課題として取り組んでみることをお勧めします。すると、社会人になって仕事で少し凹んだことがあっても「自分はこのためにやっているんだ」という職業人として今風にいうと個人のパーパスを持っておくことがいいでしょう。もちろん学生時に言語化したものは、いずれ近いうちにアップデートが必要になります。それでいいのです。大切なことは、主体性を持って意思決定する元を固めることです。自分で決めたと認識できているからこそ、多少困難が起きてもやり続けることができるのです。つまり責任を果たすに至るのです。

26年卒のみなさんには、給料の額がプライオリティーベストワンにならないように準備を進めていただきたく思います。繰り返しますが、お金をどうこう言うつもりはございません。それよりもあなたが働く目的を明確にして、それを軸として持つことをお勧めしたいのです。

たとえば、小さなお子さんから「どうしてその仕事をしているの?」と訊かれたとき、その子にでもわかるように自分が働く目的を伝えることができるようにしておくことです。

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