就活のゴール

高度成長期の日本では合言葉のように「いい大学を出て、いい会社に入る」と多くの人が口々にしていました。昭和時代の話なのですが、令和5年となった今日でも、それが人生を幸せに生きる唯一解、と思い込んでいる方が少なくないように思うのです。

一口に「いい会社」と言っても、本来なら時代背景や社会の状況、環境などによって変わっていくものです。ざっくり過ぎる表現だと思いませんか? さらにお伝えしたいのは、誰にとっての「いい会社」なのか、ということです。親が子に話す場面を考えてみると、「我が子の将来の幸せを思って」と純粋なる親の愛がフォーカスされるのですが、なかには裏面に存在する大人の事情が渦巻いていることだってあるのです。それが事件の真相であった悲劇が過去にはあり、報道を見聞きして人格や人間力の大切さを深く考えたものでした。

就職活動のゴールは「いい会社」に入ることでは決してないと思うのです(あくまでも個人の見解です)。それよりも就活生にとって大切なことは、就活生本人が「心から納得して就活を終える」ことではないかと考えています。就活は一定の時期時間ですが、本当に大切なことは入社後です。

仕事を通して、成長・活躍・遣り甲斐・充実や満足などを得ることができるか、良好な人間関係を築けるか、豊かな気持ちで生活ができるか、といったことが働く者として大切なことなのです。

人生100年時代を迎え、私たちは今以上に長く職業人として働くことと向き合う時代になりました。新卒採用された会社に定年まで勤めることが当たり前でも普通でもない時代となったのです。

22歳で入社して65歳まで働くと43年間となります。これから本格的に就活を行う24年卒の皆さんは、おそらく70歳から元気であれば80歳近くまで何らかの形で働くことを続けられるのではないかと、いまの社会では考えられています。

一方で、企業の寿命で考えると、1983年に日経ビジネスが発表した「会社の寿命は30年説」が有名ですが、東京商工リサーチでは2021年に倒産した企業の平均寿命は23.8年と発表しています。コロナ禍で経済全体が大きく影響を受けたこともあり、3年ぶりに前年を上回ったという報道を覚えている方もおられるかもしれません。因みに、老舗(業歴30年以上)企業の倒産構成比が33.8%で2年連続上昇していて、過去15年で最高だったようです。

職業人として働く43年前後を一つの会社で勤め上げることは決して悪いことではありません。逆に今後は稀なケースとなるのではないかと思います。

そういった考えがベースにあり、就活でスポットライトを当てるべきは、企業(組織)より仕事(職能)だと就活生や大学生にお伝えしているのです。文字通り「就職」であり「就社」ではないのです。

採用市場の現状は、大卒学生の民間企業への就職希望者は、45万人前後でコロナ禍前から大きな変化はありません。一方で、企業の求人数はコロナ禍で21年卒が減ったものの、22年卒、23年卒は回復傾向でした。求人総数が前年比3万人増加、求人倍率も前年比0.08pt上がっています。企業の採用意欲が高く、就活生にとって「売り手市場」となっています。

コロナ禍以降、働き方だけではなく、採用(就活)の仕方も変わりました。会社説明・面接はオンラインが主流になり、学生の情報収集もネットが主体となりました。OBOG訪問や実際に働く社員の姿を見て社風文化を知る機会が少なくなりました。そこで懸念されるのが、学生にも企業にも残念な結果に終わるミスマッチが起因する早期の退職です。この課題解決だけが背景にあるわけではないのですが、いま企業で注目されているのが「ジョブ型」採用です。すでに23年卒、24年卒では転換を図った企業も増えています。

ジョブ型採用では、学生が自分の志向や適性を十分に理解していることが重要になります。なぜその職種を希望するのか、適性はあっているのか、入社後はどのようにキャリアを進んでいきたいのか、といったことがある程度明確になっていることが求められるのではないかと推察されます。つまり、ビジネス界では職業人のプロ化が加速する報告に風が吹いているように思うのです。ここで言うプロ職業人増は、個人として有能で優秀であること以上に、チームで勝つことを得意とし、チームで素晴らしい顧客体験を創造できる人材です。あなたが、そんな職業人に成長されることを心から願っております。

24年卒の皆さん、あなたにとっての就活のゴールは何か? 本格的な活動が始まる前に今一度、この問いのご自身の回答をチェックしてみてください。

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