志望動機の書き方|“伝わる理由”はこうつくる

自己理解&表現スキル編|第4回

志望動機に詰まってしまうあなたへ──“本音”を言葉に変える力

就職活動が本格化するなかで、エントリーシートや面接の準備を進める27年卒の皆さんから、よく耳にするのが「志望動機がうまく書けません」という声です。

特に、コロナ禍以降の制約された学生生活の中で、「この会社に行きたい」「この仕事がしたい」と思う気持ちはあっても、それをどう言語化したら良いのかわからない…そんなもどかしさを感じている方が多いのではないでしょうか。

SNSやナビサイトには“模範例”があふれていますが、表面的なテンプレでは、企業の心には届きません。

では、どうすれば「伝わる志望動機」を書けるのでしょうか?

この記事では、国家資格キャリアコンサルタントの立場から、「あなたらしい志望動機」を形にするための考え方とステップ、業界別の具体例までを丁寧にご紹介します。

志望動機とは、「Will(意志)」の表現である

まず大前提としてお伝えしたいのは、志望動機とは「あなたが社会にどんな形で貢献したいと思っているのか」というWill(意志)を言語化する行為です。

「安定しているから」「福利厚生が充実しているから」などの外側からの評価軸だけではなく、自分の内側にある“なぜこの仕事をしたいのか”という思いを大切にしましょう。

あなたの志望動機は、「あなたの価値観」「経験」「これからのキャリアビジョン」の交差点にあります。

【STEP1】自分の「Why?」を深掘りする

志望動機づくりの第一歩は、自分自身の想いを掘り下げること。

「人の役に立ちたい」「社会に貢献したい」といった言葉は多くの人が抱える価値観ですが、それを“自分ならではの動機”にするためには、背景を掘り下げることが不可欠です。

例えば以下のような問いに向き合ってみましょう。

• その思いの原点は、いつ・どんな経験でしたか?

• どんな出来事に感動したり、悔しさを感じたりしたか?

• 誰に、どんな風に影響を受けましたか?

“経験からの学び”があってこそ、志望動機は言葉としての厚みを持ちます。

【STEP2】企業との「接点」を見つける

自己理解を深めたあとは、「なぜその企業なのか?」を明確にしていきましょう。

企業のHP、採用ページ、ニュースリリース、IR情報、社員インタビューなどを通じて、次の点を調べてください。

• 企業のミッション・ビジョン

• 主力事業・強み・これからの方向性

• 社風・働く人の価値観

その中で、「自分の想いと重なる部分」「惹かれた点」をピックアップすることで、“この会社だからこそ”という動機が見えてきます。

【STEP3】ストーリーとして構成する

伝わる志望動機は、「自己理解」と「企業理解」がつながっていることが特徴です。

以下のような構成で組み立ててみましょう。

志望動機の構成フォーマット

1. 自分の経験や価値観に基づく「想い」

2. 業界・職種に興味をもった理由

3. 企業のどこに共感・魅力を感じたか

4. 入社後、実現したいことや展望

志望動機の具体例(5業種)

以下に、業界別の「志望動機」例文をご紹介します。

ご自身の志望業界に近いものを参考にしながら、自分の体験に置き換えて考えてみてください。

【例文①|医療系サービス企業】

私は大学時代に、難病を患う家族を支える中で「一人の医療従事者の言葉に救われた」経験がありました。このとき、医療は治療だけでなく、人の心にも働きかける仕事だと実感しました。

その経験から、人と医療をつなぐ架け橋のような存在になりたいと考え、貴社の「患者ファースト」を掲げる姿勢に深く共感しました。特に地域医療ネットワークの構築に力を入れている点は、自分の想いと強く重なるポイントです。

将来的には、患者と医療現場の両方の声を理解しながら、よりよい仕組みを提案・改善できる人材を目指したいと考えています。

【例文②|金融業界(銀行)】

私は大学時代、ゼミで地域経済の活性化に関する研究に取り組む中で、資金の流れが人や企業の可能性を支える原動力であることを学びました。地域の中小企業が新しいチャレンジをするたびに、金融機関が信頼をもって伴走している姿に惹かれ、「お金を通じて未来を支える仕事がしたい」と強く思うようになりました。

貴行が掲げる「地域共創」の理念と、実際に地元の企業や自治体と連携して新たなビジネスを生み出す姿勢に深く共感しています。私自身、地域に根差しながら、企業と社会の未来をつなぐ存在として成長していきたいと考えています。

【例文③|総合商社】

私は大学時代、留学や国際協力活動を通じて、世界の「つながり」のダイナミズムを体感しました。その中で、日本発の技術やサービスが、国を越えて価値を生み出していく姿に心を動かされ、「ビジネスで社会課題を解決する」という在り方に強く惹かれるようになりました。

貴社が携わる幅広い領域の中でも、再生可能エネルギーや食料分野における取り組みは、持続可能な未来に向けて、事業と社会貢献が融合していることに感銘を受けました。将来的には、新興国市場での事業開発やアライアンスを通じて、国や産業を超えた価値創造に貢献できる人材になりたいと考えています。

【例文④|メーカー(BtoB・製造業)】

私は、大学で材料工学を学ぶ中で、日常に溶け込む製品の裏側にある技術やものづくりの奥深さに魅了されました。特にインターンで拝見した現場では、社員の方々が製品ひとつひとつに誇りを持ち、品質と改善を追求する姿勢に感動しました。

貴社は長年にわたり、特定分野で世界トップレベルのシェアを誇る技術力をもちながらも、常に新たなチャレンジに取り組んでいる点に強く共感しています。私も貴社の一員として、製品を通じて“見えない価値”を届ける仕事に携わりたいと考えています。

【例文⑤|地方中堅企業(地場産業・IT系)】

私は、生まれ育った地域でアルバイトや地域イベントの運営に携わる中で、「地方で働くこと」への関心と誇りが芽生えました。一見すると東京一極集中の時代にあっても、地元でしかできない仕事や価値があることを実感しています。

貴社の「地域発のDX推進」という取り組みや、行政・観光・農業などとの連携によるソリューション開発に惹かれ、「この会社だからこそ地域の未来をつくる役割が果たせる」と感じました。**技術だけでなく、人との対話や現場理解を大切にする貴社の姿勢に共感し、自分自身も地域の“キーパーソン”として働くことを目指しています。

補足|これらの例文を活用するポイント

これらの例文は、あくまでも「構成・流れ・深さの参考」として活用してください。

そのまま真似をするのではなく、自分の体験・想い・表現でアレンジすることが重要です。

以下のポイントを意識すると、あなたらしい志望動機へと近づけることができます。

• 感情・経験・背景を入れることで、“あなたらしさ”が出る

• 企業の特徴と自分の想いを結びつける“接点”を明確にする

• 未来への展望やチャレンジしたい姿勢を含めて意欲を伝える

まとめ|志望動機は、あなたの“未来の地図”になる

志望動機を書くことは、単に選考を通過するための手段ではありません。

自分の価値観と向き合い、どんな働き方をしたいかを考えるキャリア形成の第一歩です。

うまく書こうとするよりも、“なぜその仕事をしたいと思ったのか”に向き合い続けること。

その積み重ねが、あなたらしい言葉を生み出し、企業にも伝わる力となります。

焦らず、丁寧に。あなたの想いを大切にして、一歩ずつ“自分の未来”に近づいていきましょう。

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