知力と体力

働くことに関してはさまざまな研究が行われていて、多くの科学的な検証があります。今回は人間の習性に関する基本的な法則に関する話です。

その法則とは、「人は知恵を求められなければ、体力を100%発揮することが心理的にできない」です。

これをたとえると、知力と体力がチームを組んで働くと決意していているようなもので、どちらかを単独で働かせることは非常に難しいとのことです。これは工場労働者に関する記録で証明され、今では疑問の余地がない周知された話です。

つまり、事業運営に対する発言権が与えられず、提案すら許されていない労働者は、提案を奨励されている労働者ほど熱心に働かない、ということです。

この知見はマネジメントやリーダーシップに関わる人だけが知っておけばいいとは考えていません。たとえば、A社B社C社から最終的な選択を行う場面では、恐らくいずれの会社も甲乙つけがたいことが殆どでしょう。そんなとき各社は社員(人材)を本質的には、どのように捉えているかを確認してみるのです。

たとえば、

  • 人材を資源と捉えているか、それとも資本と捉えているか
  • ブロック塀のブロックのように統一規格に一様であることを求めるのか、石垣の石のように多様であることを求めるのか
  • 体力的な働きばかり求めるのか、知力と体力を合わせた働きを求めるのか

といった会社案内などの資料には決して現れないが内部の人間であればよくわかっている組織文化をチェックすることを推奨しています。

近年、ビジネス界で注視されている「心理的安全性」と「人的資本経営」はいずれも人にフォーカスした組織の在り方をテーマにしたものです。どれだけAIなどの技術が進展しても、働き方はより良く変化するでしょうが、ビジネスから人が離れることはないでしょう。なので、2つのテーマは今後も研究が進むと思います。

関心があれば沢山の書籍が出ていますので読みやすいものから触手を伸ばしてみるといいかと思います。

私の専門であるリーダーシップでお伝えすると、従来の組織行動論におけるリーダーシップは、上司が複数の部下に同じような接し方をするのが前提でした。一方、実際の現場では上司は一人ひとりの部下に対して異なる接し方をしていて、上司と部下の関係性はそれぞれのペアによって当然ながら異なるものでした。

近年、ダイバーシティ(多様性)が広く認知されてからは、上司と部下一人ひとりとの関係の質ことが重要でありことが認知されるようになっています。つまり個々の部下は、上司との関係の質が高いと、パフォーマンスが向上し、仕事の満足度の向上につながることが明らかになりました。

上司との関係の質が高いことはチームにとって重要な資源になっているのです。

昨日、企業の採用強化策として最も多いのが人材教育の充実とお伝えしましたが、上述したように上司と部下の関係の質が重要であることを認識した企業とそうでない企業が行う新入社員研修一つを考えても、中身が異なることは容易に想像できるのではないでしょうか。

最終的に企業を選択する際に迷わないためにも事前に取り組む業界・企業研究を丁寧におこなうことが大切ですが、それができるのも物理的に時間が豊富にある3年前期までが一つの目安でしょう。

就活を卒業後の進路先を決めることと考えるともっと楽になるのかも知れませんが、2度とない自分の人生、自分らしく生きるためにもファーストキャリアで躓くことは避けたいと考えるのであれば、就活を本格稼働する前に、人生観やキャリアを考えるためにしっかり自分と向き合うことが重要なのです。

25年卒の皆さんがこれから取り組まれると思われる、企業研究や企業選択における大切なポイントとしても活かしていただければ幸いです。

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