ユング心理学について触れます。提唱者はカース・グスタフ・ユング(スイスの精神科医・心理学者)です。ユング博士の名前は知っているという方も多いかと思います。
ユング博士は、人の人生における40歳前後の時期を「人生の正午」と呼び、それ以前を「人生の前半」、それ以後を「人生の後半」と呼びました。そして、「人生前半の課題は我を確立することであり、人生後半の課題は自己実現(個性化)を進めていくことである」と残しています。
自己実現(個性化)とは、自分の中に潜在しているさまざまな力を統合して、真の自分らしさを体現していくこと言います。ひと言化すると「自分らしく生きる」ということです。
そして自己実現(個性化)をしていくには、まず自我の確立をすることが必要だと述べています。
その自我の確立って何かといいますと、人間の心には、「自分で意識・自覚できる部分」と「自分では意識・自覚できない部分」があり、前者と意識と呼び、後者を無意識と呼びます。それで、意識の中心に当たるものをユング心理学では「自我」と呼ぶのです。つまり、自我とは「私たちが生きていく上での意識の中心」のことを指すのです。
意識の中心って、少し分かり難いかもしれません。
自我とは「『自分が自分であることの確かな感覚』にもとづく自分」となります。まだ???でしょうか。別の言い方をすると、自我とは、私たちの意思や選択の主体とも言えます。つまり、私たちが意識の中で、「自分はこのようなことを望む」「自分はこのような人生を実現したい」「自分はこのような生き方(働き方)をしたい」と考える、その主体のことです。
そして、その主体をしっかりつくることが、自我の確立なのです。
???が続いていそうですね。
逆に自我が確立されていないことの方がイメージしやすいかもしれません。
自我が充分に確立されていない状態では、
- 他人の目を気にするあまり自由な選択ができなかったり
- 他人からの評価に振り回されたり
- 自分の選択に自信を持てなかったり
- 嫌なことに対して「イヤだ」と言えなかったり
- 気分が乗らない誘いに対して断れなかったり
- 自分の気持ちや欲求を大切にできなかったり
といったことが身に起きるのです。つまり、自分らしく生きることが難しくなるのです。と言っても、そもそも自分らしさ自体をよく分かっていないケースの方が多いと考えられています。
なんだか、ちょっとあなたにも心当たりがあるような話になってきたでしょうか。
自我の確立というのは、私たち人間の共通した課題です。残念な話なのですが、私たち日本人は自我の確立ができていない人が非常に多いと世界では観られ(言われ)ています。
これを読む学生の皆さんはまだ人生の前半ですから、社会に出てから取り組んでも遅くはないだろうと鷹揚になってしまうものですが、それがいけません。
事実として就活では、どの企業もあなたの自我の確立度を見立てて評価をしていきます。そして、学業成績や強み、スキル以上に重視される項目であることが殆どです。
前述した自我の確立されていない状態をひと言化すると「大人になっていない」とも言えます。もちろん、見た目は立派な成人男性であり女性でしょうが、その内側が幼稚で稚拙なのです。アニメのコナン君の真逆です。
採用する側の立場を考えてみると、そのような学生が就活でどんな成果を得るか、想像ができると思います。
自我が確立されてくると、「私は私でいいんだ」という感覚を持つことができます。自分の気持ちを大切にして生きることができるので、心に余裕が生まれます。すると、他者の気持ちを自然に大切にすることができるようになるのです。一方で自我の確立をしないまま、他人の気持ちばかりを大切にしようとして頑張ると、自分の欲求や感情を抑えて我慢することになります。それが続くこと抑圧された欲求や感情が蓄積して、ストレスが溜まってしまいます。加えて、だんだん感受性が鈍くなり、他人の気持ちに心から(自然に)共感することができなくなってしまうのです。ちょっと怖いですよね。
自我の確立は1日や2日でどうなるといったことではありません。意識してコツコツ取り組むことがセオリーです。それでもあなたが25年卒以降の学生であるならば、今からしっかり取り組むことで就活本番を迎えた頃までには、「学生にしてはしっかりしている」「まだ若いし経験も浅いが自分をちゃんと理解している」といった評価を得ることはできます。
これから就活を迎える25年・26年卒の皆さんは、自己分析と合わせて自我の確立も並行して取り組んでみてください。完璧を目指すのではなく、周りの学生より二歩三歩くらい進んでいる程度でも就活場面では結構なアドバンテージとなるでしょう。
12月から始まる「社会のトビラ塾」では、あなたが自我の確立に取り組むための課題を整理しその努力のやり方をマ番でいただくプログラムもございます。また、今後開催するラーニングカフェでも扱うテーマのひとつです。ご興味がある方は、トップページの『INFORMATIONお知らせ』をチェックください。