23年卒学生と、新卒採用を行っている企業の採用担当者を対象に、コロナ禍での就職活動/採用活動における「ガクチカ」について行われた実態調査から、コロナ禍がガクチカ(学生時代に力を入れたこと)づくりに悪影響44.6%、選考を有利に進めるために4人に1人が事実と異なる記載する「盛りガクチカ」を作成などの実態が見えてきました。今回の調査結果から、学生と企業のガクチカに対する重要度や考え方などの情報から今後の就職活動や採用活動のヒントが掴めそうです。
コロナ禍の影響で、23年卒業予定の大学生は2年生から、24年卒業予定の学生は入学時からオンラインを中心とした学生生活を強いられ、コロナ前までの対面を基本とした授業やサークル活動、アルバイトなどが充分にできず、思い描いていたキャンパスライフとは異なる生活を送ることになった学生です。
そんな背景を持つ彼らの就職活動において、ガクチカに悩む学生が少なくありません。一方で企業の新卒採用は、ガクチカだけではなくいその他の条件や基準を整えて採用活動を進めています。
認知度
ガクチカという言葉の意味を知っていますか?
認知度については学生が96.7%、企業が61.5%で、35.2ptの差が出ていた。企業では人事など採用に携わっている者以外の社員の認知度が低いのではないかと思われます。

学生のガクチカ実態
自信を持って企業にアピールできるガクチカはありますか?
約8割(76.0%)の学生が「自信を持って企業にアピールできるガクチカを持っている」と回答しました。また、選考を有利にするために、4人に1人(25.6%)の学生が「自身のガクチカに事実と異なる内容を盛り込んだことがある」と回答しました。就職活動が就社活動になっている実態が伺えます。


コロナ禍はガクチカに悪影響を及ぼしましたか?
約4割(44.6%)の学生が「悪影響を及ぼした」と回答した。行動規制など個人レベルでは対処が難しい要因があることは否定できませんが、現実を重くネガティブに捉え過ぎることの問題も考えてみて欲しいと思います。同じ状況下でも逆の回答をした学生が約半数いる事実を見ていただきたいものです。

ガクチカとして話した内容はなんですか?
ガクチカとして話した内容については、1位:アルバイト(61.2%)、2位:ゼミや研究などの学業(39.7%)、3位:サークス・部活(39.3%)となっていました。
コロナ禍で思い描いた学生生活とは違った日常があったことは間違いのない事実です。そして、それは就活を頑張っている23年卒・24年卒の学生には全く非がないものです。ですが、コロナ禍を言い訳にするだけではいけないのです。

昔の話ですが、バブル崩壊やリーマンショック後は、就職氷河期でした。当時の就活生も同じように「景気が悪いので就活がうまく進まない」と愚痴る学生が多く、マスコミも就職氷河期を大きく取り上げていました。そんな状況を言い訳にせず、懸命に就活を進めて第一志望の企業から内定を勝ち取った学生がいたことも事実なのです。
学生の皆さんが進むビジネス社会は、楽しいことよりも厳しいことの方が多いものです。そんな社会に踏み出す前から、状況や環境を理由にして、自らを甘やかしたり、自己防衛でこもったりするのは少し残念に思います。何も無謀なことを望む話ではありませんが、学生である今でしかできない自分らしいチャレンジと自身の将来への可能性を信じて、今できる一生懸命をやり切ってみることこそ、あなただけのガクチカになるのではないでしょうか。
企業のガクチカ実態
企業の採用担当者の約7割(65.2%)が「選考時にガクチカを聞いている」と回答しています。コロナ禍によるガクチカに悩む学生が多い中で、「ガクチカを代替する質問は設けていない」企業の実態が見えてきました。ただし、人材を重要な経営資源と捉えている企業とそうでない企業との格差があることも理解しておく必要があります。前者の企業ではガクチカを訪ねているその意図と目的をしっかり企業研究することを強くお勧めします。学生の皆さん、ガクチカを尋ねる本質の理解を深めることも大切な事前準備となります。

代替質問を設けていると回答した企業では、以下のようなコロナ禍ならではの質問や、環境に左右されずに人となりを把握できる本質的な質問を設けていることが明らかになりました。
- コロナ禍に新たに取り組んだことはありますか
- コロナ禍がなければ、どのようなことをしたかったですか
- 休日はどのように過ごしていますか
- 学習時のスケジュールの組み立て方、また工夫した点は何ですか
ES・選考におけるガクチカの立ち位置
ESにおいて、企業が最も重視する項目は、1位:志望動機(34.8%)、2位:自己PR(28.0%)、3位:文章力(10.6%)であるのに対して、学生の1位:志望動機(43.4%)、2位:自己PR(23.1%)、3位:ガクチカ(20.7%)の順で重視していることが明らかになりました。


企業と学生の3位の違いは、学生側の業界研究や企業研究のソースが少し古いものを活用しているのではないかとも思われますので、見直しが必要になる可能性があります。
選考において、企業が最も重視する内容は、1位:面接での受け答え(52.2%)、2位:相性(14.3%)、3位:入社意欲(9.3%)でした。一方で学生では、1位:面接での受け答え(40.5%)、2位:入社意欲(25.2%)、3位:相性(18.2%)の順に重視されていると考えていることがわかりました。


今回の結果から、学生は企業側よりもガクチカを強く意識している一方で、本質的に求められているものはガクチガではないことも理解していることが伺えます。ではなぜ、そんなにガクチカにこだわるのか?少し不思議です。