会社研究を進めるセオリーとして、その企業が掲げる経営理念をチェックすることは多くの学生も行っていることではないでしょうか。でも、そこに落とし穴があったりするものです。
文章を読み、その解説等を読み、自分の軸との適合度を考えてみる。あるいは、理念と別途調べた企業文化や社風との整合性をてらしあわせてみる。といったあたりで終わってしまうケースが散見されますがあなたはいかがでしょうか。
上述したような流れでは、その企業の経営理念の文言をなぞっただけと変わりなく、就活という土俵では、タイパもコスパも非常に残念な結果になってしまいます。
経営理念について学び始めた頃、二宮尊徳が残した「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」を教えていただいたことがありました。
仕事、商い、事業、ビジネスと、表現はさまざまですが、いつの時代であっても、その道において、「すべきこと」と「してはならないこと」というのがあります。
経営理念は、きれいな文章にまとまっていて、美しく額装されて社長室やオフィスに飾られていたとしても、それだけでは本質的に意味がなく、その企業で真に役にたっているものなっているかどうかを知ることはできないのです。
経営理念は、その企業の全社員(パートさんやアルバイトさんも含めた)が毎日の業務遂行の中で行われる意思決定の基準となって、始めてその存在価値が発揮されるものだと思うのです。だからこそ、第一志望群となる企業研究で経営理念に触れる際は、出来る限り現場に馳せ参じ「自分で確認する」ことをお勧めします。特に志望度が高い2~3社については必須だと捉えていただいた方がいいでしょう。
留意すべきポイントは「言っていることとやっていることがしっくりしているかどうか」です。事前にその企業の理念に触れておくことは当然として、現場に立つことで、ザックリとでも理念が絵に描いた餅になっているか、その企業の人達の基準になっているのかは、皮膚呼吸のレベルでわかるものです。
もうひとつは、その企業で「経営理念磨きをしっかり実施しているか」をチェックすることです。古いものがダメという話ではありませんが、創業時に掲げたものをそのまま継承しているだけの企業もあります。そのこと時代にいいも悪いもないのですが、大切なことは、現時点で掲げている経営理念が現在および未来の自社に合っている(馴染んでいる)ものになっているかどうかということです。
言葉を換えると、経営理念のアップデートが行われているか、環境変化などを捉えてバージョンアップを積んでいるかを調べてみるのです。
「不易流行(ふえきりゅうこう)」という言葉があります。もともとはお茶の世界の言葉のようです。意味としては、いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくことです。
経営理念に限らず、一人ひとりが日々を生きるなかで不易流行を大切にしたいものだと思います。日常生活でも真剣勝負のビジネスでも、伝統的な本質を踏まえつつ、新しいものを取り入れることを積んでいくことで、個人の人間力や組織の文化が発展するのではないかと思います。
事実、世間で言われている素晴らしい企業のほとんどは、善き経営理念があり、活性化した組織文化が醸成されるものです。さらにそういった環境がある程度整っている企業では、共通言語や共通認識、共通の世界観が流れていた非常に心地の良さがこれまた皮膚呼吸レベルで体験することができるものです。
就活は、その活動の質と量が大切です。その活動を下支えしてくれるものというと、自己分析と企業研究となります。活動前の準備として自己分析や企業研究を就活と仕切り分けをしてとらえている学生がおられますが、就活の本稼働を支えるこの2点があまりにも浅い人がおられます。自己分析も企業分析も質量を一定レベルまではしっかり取り組んでいないと、いくら本活動を頑張っても欲しい成果を得ることは難しいのは世の常だということに気づくことが大事だと思います。