お辞儀

第一印象のポイントで、あと一つお伝えしたいことは「お辞儀」についてです。昨日の姿勢のはなしとも被る点があるのですが、面接後のリフレクションを伺うなかでお辞儀についての疑問が頻繁にでてくることに気づきます。

ビジネスマナー講座などで学ぶと、お辞儀には3パターンがあると学びます。「挨拶(15度)」「敬礼(30度)」「最敬礼(45度)」です。それ自体は多くの学生も知識として理解しているのです。ですが、実際の面接でのさまざまなシーンでどのお辞儀をすることが正しいのか、がわからないと話す学生が意外にも多いのです。あなたは、いかがでしょうか?

実は、このような問いに唯一解はないのです。正直に申し上げると時と場と相手によって微妙に変わるものなのです。ただし、学生の就活における採用面接の場と限定すると、各場面でのお辞儀の適当と思われるものは以下の通りです。

  • 会場のドアを開けながら、締めながらの挨拶や椅子を勧められた時・・・「会釈(15度)」
  • 名乗りし挨拶(○○大学の□□と申します。よろしくお願いいたします)をする場面・・・「敬礼(30度)」
  • 挨拶(失礼いたします/よろしくお願いいたします)を伝える場面・・・「敬礼(30度)」
  • 感謝(ありがとうございました)を伝える場面・・・「敬礼(30度)」
  • 深いお詫び(申し訳ございませんでした)を伝える場面・・・「最敬礼(45度)」
  • 深い感謝(誠にありがとうございました)を伝える場面・・・「最敬礼(45度)」

お辞儀と合わせて実践すべきことが「語先後礼」です。字のごとく、「よろしくお願いいたします」と言葉を先に伝え終えた後にお辞儀をすることです。世界から礼儀正しいと評価される日本人ですが、意外に多くの方が「語と礼が同時」であることに気づかれるでしょう。きっと理由があるのだと思いますが、就活を機に「語先後礼」を自分に躾てみてください。きっと一生の財産になります。

お辞儀の所作で注意が必要な点として、お辞儀が猫背だと姿勢が悪く見えるし、仕事がデキる人に映らないものです。つまり、カッコ悪いイメージが強く面接官の心象に残るということです。背筋がしっかりとした美しいお辞儀は意識だけでは到底できるものではありません。トレーニングを積んで体で覚えなければできない所作のひとつと言えます。

所作全般に言えることですが、セルフチェックには限界があります。できればきちんとトレーニングを受けることが一番なのですが、自分の面接練習(デモ)を動画撮影して研究されることはお勧めします。

お辞儀の所作では、動作と時間にも質問も多いものです。つまり、上体を下げる、上げる動作の時間のことです。これも唯一解はないのですが、上体を下げるときと上げるときのスピードを変えると、相手の方へ丁寧さや敬意を表すことができ、メリハリもつくようになります。具体的には、上体をサッと素早く下げて、戻すときはゆっくりと上体を上げることになります。この場面で気をつけたいことは、上体をサッと下げたまではいいものの、パッと上体を起こしてしまうことです。これでは相手に粗雑で稚拙な印象を与えてしまいますので要注意です。

ここまでは現代のビジネスマナーを基本としてお伝えしました。折角ですので日本の伝統的なお辞儀についても少し理解を深めてみましょう。

日本のお辞儀には、座った姿勢で行う「座礼(ざれい)」と、立ったまま行う「立礼(りゅうれい)」の二通りがあります。また、武家のお辞儀(武家礼法)と茶道のお辞儀が文化として今でも残っています。

「座礼」は九品礼と言って、目礼、首礼、指建礼、爪甲礼、折手礼、拓手礼、双手礼、合手礼、合掌礼の9タイプがあります。

「立礼」は、足を平行にして立ち、手先をまっすぐ伸ばしてそろえ、自然に手が定まる位置を出発点として、静かに腿の上を膝がしらに向けて滑らせます。

首だけを丸め込まず、首と背中がまっすぐなまま尻を後ろに突き出す要領で上体を前に倒すと美しいフォームになります。この伝統的な「立礼」は和服でも洋服でも何ら問題なく行えるお辞儀です。大事な点は、立ち止まってからお辞儀をすることと、深いお辞儀をする場合は、荷物はかたわらに置くか、そばの人に預けて、両手を空にして行うことです。

ずいぶん昔の話となりますが、小笠原流の武家礼法を学ぶ機会がありました。武家礼法の座礼に触れたことがきっかけとなり茶道の座礼にも興味を持ち、茶道の先生にご教授を得たこともございます。個人的には「礼」の日本文化は本当に素晴らしいと考えております。ご興味がございましたら、就活終了後に武家礼法や茶道のお辞儀について学ばれてみてください。

近年個人的に残念に思うことのひとつに、日本人なのに自国の歴史や文化に疎い人が少なくないと揶揄されることです。社会人となる前に何か学んでおきたいと考える機会がございましたら、是非自国の歴史や文化に関わる教養を持たれることをお勧めします。

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