学生が就活に当事者意識が高めると同時に気づくことに「自分は何がやりたいのか?」「自分のやりたい仕事の見つけ方」が分からないことのようです。ひょっとしたらあなたも心当たりがあるのかも知れません。
「就活時期が近づく頃に自分の進むべき道は自然に分かるようになると思っていたのに、そうはならなかった!」と就活初動期に焦りや不安を持つ学生が少なくないように思います。少し考えてみたらわかるような話ですが、本音トークで尋ねてみとこのような経験をしている学生は少なくありません。
どうしてやりたいことが分からないのだと思いますか? 「社会にどのような職業があるのか、選択肢としてどんな職業があるのかが知らないから」、といった旨の言葉が多く返ってきます。
確かにどんな選択肢があるのか、ある程度は知っていないと決めることはできません。一方で、仮に世にある職業をすべて理解するために特別にレクチャーを受けたとして、本当にやりたいことは見つかるものだろうか、と思うのです。
私ならむしろ迷ってしまい悩みが深くなるのですが、あなたはどうでしょうか?
就活に限らず、高価な買い物などでも言えることですが、選択肢が多すぎることは人間にとってストレスにつながることが分かっています。これは脳の構造からして、判断に相乗的に負荷が増すために悩みによるストレスが強くなるのだそうです。つまり、選択肢となる一つひとつを知らないことが就活生の悩みの本質ではないのだと考えています。
何がやりたいのか分からない本質は、社会にある職業をよく知らないことではなく、本人が自分自身のことをよく知らないことで、そのことに気づくことが重要だと考えています。つまり、就活生の悩みの本質は外ではなく、学生の内側にあるのです。就活の事前準備として、自己分析が重要とされているのもここにつながるのだと思います。
やりたいことが分からないのは、自分の中に人生観や職業観といった軸を見つけていないからではないかと考えています。ですが、そのこと自体が悪ことではありません。なぜなら、自分自身を知る(セルフ・アウェアネス)努力をしっかり取り組んでいないことが起因しているのですが、就活の当事者意識を自覚するまで、その機会がなかったのです。
まとめると、自分の中に軸がなければ、やりたいことなど知りようもないし、選べるはずもないという話です。
私たちは、基準がなければ判断はできないのです。たとえば、機内食でビーフ、チキン、フィッシュなら、その時の気分で決めることも可能ですが、自分の人生に少なからず影響を与えるファーストキャリアとなる職業選択はそうはいかないのが普通でしょう。
人生のなかで幾度か重要な選択をする場面に遭遇します。そのとき自分に明確な軸がないことで、苦しい思いをされる人がいるのです。TA心理学では「人生脚本」というものが、私たちの意思決定にどのような影響を与えるかを学び、自身の脚本を必要に応じて書き換えるという成長課題に取り組みます。
前述した軸を見つけることは、単に就活のためではなく、自分らしく豊かに生きる(自己実現)ために必要な努力とも言えることなのです。
実社会で活躍している賢い職業人ほどセルフ・アウェアネスの重要性に気づかれていて、常に自己への気づきを得る努力をされています。セルフ・アウェアネスは一度やって終わりというものではなく、継続的にやるかやらないかが大切なポイントなのです。
軸のイメージをもう少しつかめるようにお伝えすると、ある人にとっての就活の軸は「地元で安定した生活ができること」かもしれないし、別の人にとっては「欲しいスキルが習得しやすいこと」かもしれません。または、とにかく「生涯年収ができるだけ高くなること」を追求する人もいれば、「車が好きだからどうしての自動車業界に入りたい」というように具体的な商材や業界への強い思い入れを軸にする人もおられるでしょう。他にも「女性として勤めやすい企業をみつけたい」とか「将来の大企業(急成長企業)に入る」とか、「自分を一番高く評価してくれた企業に入りたい」など、就活の軸は十人十色です。
あなたの軸は何でしょうか?
あなたの軸を考え見つけて形成するために必要なことを簡単に紹介します。
最初に理解しておくべきことは、自分の軸を決めるのはあなたしかいない、ということです。そう聞くと、気持ちが少し後退りしそうになる学生もおられますが大丈夫です。
気負うことなく、真摯に自分と向き合うことさえできれば、ちゃんと軸を見つけることはできます。さらに軸探しで大切なことは、今のあなたの精一杯の価値観で自分の軸を決めるしかない、ということです。
ただし、あなたの価値観も軸も、これからさまざまな経験を積んだ近い将来、きっと変化するでしょう。それでいいのです。あなたの価値観が変化したら、その時点でのあなたのベストな軸に合わせてキャリアをアップデートさせていくのです。つまり、最初から最後まで、たったひとつの価値観や軸のレールの上でキャリア(JOB+LIFE)を生きる人は殆どいないと考えておくといいでしょう。
実際には○○一筋ウン十年といったキャリの方もおられますが、そういう方のほうが、【私の履歴書】などを参照されるとよくわかるのですが、一筋のキャリアのプロセスでは価値観や軸を変化成長されていることに気づけるものです。
あなたのやりたいことは、あなたの強みの中にあると考えています。それはあなたがこれまで生きてきた中で、他者よりも少しだけ優れている力です。その力を存分に発揮できる職業を見つけることが秘訣だと考えています。その強みを自己認識することにフォーカスしたワークショップを今年は9月に開催を予定しております。
以前もお伝えしましたが、せっかく入社した会社を短期間で退職されてしまう若手社員の本音の退職理由は、「人間関係」と「仕事が自分に合わない」です。そして後者の方が語った後日談として、就活中の企業選択時に軸がなかったことに気づかれたことを話されています。
これから就活に入る25年卒の皆さんは、ファーストキャリアでつまずく原因は、職務で失敗をすることではなく、職業選択時の自分の内にあることをぜひ理解して自己分析、企業研究に取り組んでほしいと思います。