希望職種が明確で、その理由はエビデンスもあり筋が通っている内容であっても、必ず思いが叶うとは限らないのが、企業に入り組織のひとりとして働くことかもしれません。近年は、内定時に配属先を明らかにする企業も現れていますが、まだ少数です。また近年は、「配属ガチャ」という言葉を頻繁に聞くようになりました。
自分の強みから希望職種を探し出し、前向きに活動を積み就職先を決めたのに、希望の部署に配属されなかったことで退職する新卒新入社員がおられます。
正直に言いますと、退職された新人の気持ちはよく理解できるのですが、企業にとっても大きな痛みを負う結末には残念でたまりません。
一方で、希望通りの配属先ではなかったけれど「この部署でよかった」「ここの職場の仲間と働くことができてよかった」とポジティブな体験をされている新人も少なくないのです。
現在就活中の学生は「就活ガチャ」になることは避けたい!そんな思いで活動を続けておられるのかも知れません。
ここで事実としてちゃんと理解しておきたいことは、配属に関しては「絶対」はないことです。ですから、前述したように自己分析を通して自分の強みを活かせる希望職種まで明確にすることと並行して、必ず取り組んでおくべきことは、あなたが働くことで成し遂げたいことは何かを明確にしておくことです。
会社としては、組織全体の状況を把握した上で、新卒社員の適性をある程度は踏まえた配属を行っているのが一般的です。だからこそ、希望と異なる配属を受けたときに、「運が悪かった」とネガティブに捉え、被害者意識を持ったまま退職などの結論に至ることのないあなたであって欲しいと心から願うのです。
実はこれがあるかどうかで、「配属ガチャ」に直面したときに大きな差分が現れるのです。退職を決意する人も現れます。一方で半年、1年と業務経験を積むなかで、「ここでよかった」と実感する人も現れるのです。
両者の違いは「仕事観」にあると考えています。仕事観とは、あなたが働くことの意味や目的を言語化したものです。つまりあなたが働くことを通してどんなことを成し遂げたいかということです。
自己分析の中でこの仕事観をしっかり言語化しておくことは、ESや面接で役に立つだけでなく、実際に職業人となったときに大きなインパクトを自分自身に与えてくれることになります。
仮に「配属ガチャ」に遭遇したときには、自分の強みを再確認して、改めて磨き上げるプロセスを検討する機会だと捉えることをお勧めします。なぜかと言うと、向かうゴールは仕事観にあるのですから、強みの活かし方を少し変える必要があるからです。そのように対応ができると退職という両者にとって不幸な結末を迎えることを回避できると思います。
もちろんこう言ったことを自分ひとりで取り組むことは大変ですから、あなたの知覚に優秀な上司や先輩の存在があることも大切です。優れたビジネスパーソンは、部下後輩と一緒に「新しいシナリオ」を作り、あなたに対して陰日向なく素晴らしいコーチ役を務めてくれるものです。しかし、配属直後に感情のままネガティブな結論を出してしまうと、そういうコーチに出会うことも叶わないでしょう。先人の教えに「短気は損気」とありますが、まさにそのことだと思います。
就活時に職種に拘りをもつこと自体は悪いことではありません。ですが、もっと重要なことはあなたの仕事観があなたの言葉で言語化できているかということなのです。
入社後は新入社員であっても、あなたが所属する組織の目的や在成果を理解する能力を求められるのが極一般的なのです。ですから、あなた自身の仕事観が明確になっていることが大切なのです。近年ではこれを個人のパーパス(purpose)と呼ぶこともあり、学生の皆さんにも聞き覚えのある単語かも知れません。
25年卒のみなさんは、ぜひこの点を総点検してください。26年以降卒業予定のみなさんは、自己分析を通り一遍で済ましてはいけないことを理解いただけると嬉しいです。
人は与えられた環境・条件のなかで、ガムシャラ(一所懸命)に努力する経験から忍耐力を養うものだと思います。この忍耐を身につけることなく、転職や転籍をしても「何か違う」「合わない」と努力しない言い訳が上手くなるだけで、成長は望めないのです。
目の前にある仕事に全力を尽くして取り組まずして、頑張ることや努力することの価値を不定できるはずがないのが大人の社会の常識であることもこの機会に理解しておくといいでしょう。