仕事に対して「成長機会を求める若者が多い」というデータが、さまざまな調査で挙がっています。
あるデータでは「就職先を検討するための決め手になった項目」で、ここ数年、「自らの成長が期待できる」という項目が最も選択率が高い項目となっています。2023年卒では47.7%の学生が選択していました。
別の調査では、20代正社員について「自律的なキャリア形成に対する意識が高まっている」とする結果が報告されています。また、仕事選びの重視点として20代前半正社員は「いろいろな知識やスキルが得られること」、「入社後の研修や教育が充実していること」を選択する傾向が高まっていることも指摘されています。
「成長できる環境」を、仕事を選ぶ決め手としている傾向が高いようです。ここが重要なポイントです。こう言うと「最近は成長を求める若者が増えているんだなぁ」と捉えられる方もおられるでしょうが、そうだとも言い切れないのです。
選択の回数が増える職業生活の変化を前提に話すと、どんな大企業であっても自分の職業人生を終わりまで保証してはくれないのです。自分のキャリアを安定させようと思ったら、自分で経験や知識、人的ネットワークを積むしかないのです。
皆がみんな「成長したい」とギラギラしているわけではありませんが、そういった機会を求めざるをえません。これを「横並びの成長欲求」と言うことができます。環境に背中を押される語りで成長を求めているのです。
日本的経営・日本型雇用が崩れたことが共通の理解となり、人生の安全や安定を会社が保証してくれなくなったと感じていることに起因した変化が起きていると考えています。キャリア自律が叫ばれるなかで、じぶんで自分の職業人生の安定を考えなくてはならない。そういったことを働く若手は認識しているのではないかと思うのです。
実際、大企業に就職した新卒1年目から3年目の働く若者にアンケートを取ると「定年・引退までその会社で働き続けたい」という回答をしたのは、僅か20.8%でした。実に8割の働く若手がどこかのタイミングでその会社を辞めると考えていていたのです。さらに言うと、全体の半数弱は2~3年程度しかその会社との関係性が続かないとも考えていたのです。
この観点から分析すると、職場に対するキャリア不安が短期的な離職意向につながっていることが見えてきます。職場のことを「ゆるいと感じる」か「ゆるいと感じない」かで、離職意向(すぐにでも退職+2〜3年で)を確認したところ、U字カーブ状の構造になっていました。
高かったのは「ゆるいと感じない」という“きつい職場”にいる人と、その反対の状況にある、「ゆるいと感じる」という“ゆるい職場”にいる人でした。ここにも一種の二極化があるように感じました。
このように考えると、成長機会がない職場には、安定がないと感じるようになる若者が現れてくるのです。多くの人は「自分がこの会社を辞めたときに、活躍できる場があるのだろうか」と考えるものです。だからこそ、成長したいとなるのではないでしょうか。これは教条的な意味での「成長しないといけない」ではなく、生存欲求や幸福追求の意味での「できれば成長したい」なのかもしれません。
仮にその会社を辞めるときは、他の会社で活躍できる状況でありたいと考えるのは極普通のことです。こうして考えてみると、「成長を求める若者が増えた」と一概には言い切れないことがお分かりいただけると思います。若者の8割が離職ありきで今の仕事をしている現代において、「成長」の意味合いも随分変わっていることを感じ取っていただけると幸いです。