就活でも蛙化現象

若者の間で今年一気に流行した言葉の1つに、「蛙化現象」があります。本来はレ内において使われる言葉ですが、就活においても頻繁に見聞きしました。先日発表された「24年新卒採用大学生就職活動調査」(リクルートマネジメントソリューションズ)に就活生の「蛙化現象」について触れた内容があり、一部をご紹介します。

24年卒の就活生は、大学生活すべてをコロナ禍で過ごしてきた世代です。従来の就活生と比較して、思考や価値観はどのように変化していたのでしょうか。

「応募のきっかけ、最終的な決め手としては、24年卒では勤務地が1位になるなど、勤務地の重視度が高くなっている」のがその傾向だったようです。調査結果でも、半数以上が「志望度が下がる」と回答している項目に、「入社前に勤務地がわからない」「転勤がある」「入社前に配属される事業部門を選べない」「配属職種を選べない」が並んでいます。

24年卒は、既存の就活生と比べて「安定に対する志向が強い」「仕事内容が具体的にイメージできること」「不確実性の高い選択を避けて、納得感を持って選択をすること」を重視している傾向が伺えました。

恋愛において用いられる「蛙化現象」が就職活動にも起きているということがよく見聞きされるようになってきた。

就職活動での「蛙化現象」は、内定や入社をきっかけに学生のモチベーションが下がるように見える現象として使われていたようです。

入社を決めて、良かったのか悪かったのかは、実際に働いてみないと分からないところがあります。ゆえに1社に決めるときには、利得よりも損失を重く捉えてしまう損失回避志向があるのが、最近の就活生の特徴のひとつと捉えています。こうした最終的な決定を行う難しさが前提としてあるため、就活生の内定後の不安として、次のような4つのパターンが考えられるそうです。

不確定要素や条件への不安

「配属が分からない」「福利厚生は他社の方が良さそう」といった不安が考えられる。不確実性の高い選択を回避しようとする志向や、多様な選択肢への意識の高まりから、こうした不安が生じやすくなっている可能性がある。

就活軸が不明確なことによる不安

「なんとなくいいと思っていたけど……」とか「もっと条件のいい会社があるのでは……」といった不安が生じる。

就活の早期化によって、方向性が定まる前に活動をスタートしてしまったり、スピーディな選考により、自己理解が深まる前に内定が出たりといったことが影響していると考えられる。

内定後による情報への不安

「他の内定者と雰囲気が合わなそう……」や「○○事業部への配属はきついって本当かな……」といった不安がある。選考過程のオンライン化により、社風や社員の人柄、他の応募者の雰囲気などを把握しづらくなっていることが影響している。

企業からの評価に対する不安

「どこが評価されたのかわからない」「本当にやっていけるだろうか」といった不安がある。 選考が早く進むことで、「学生は自分が十分に理解されている」「必要とされている」という感覚を持ちにくくなっている可能性がある。

もう1つの就職活動での「蛙化現象」としては、入社をきっかけにモチベーションが下がり、入社直後から転職を考えているようなケースがあります。この背景には、「できるだけ自分に合う条件の会社を選びたい」という志向から生まれる不満や不安があると考えられます。

「入社してみないと分からないことや、入社前の想定とのギャップは少なからず存在するものであり、新入社員はそれらに直面することになります。キャリア界ではリアリティショックと言われるものです。内定後の不安をそのままにして、納得できないまま入社してしまうと、こうした「入社後のなんとなくもっと」という不満や不安につながっていくのでしょう。

蛙化現象の背景にある不満を解消するためには、就活生はどのような対策をとっていくべきだろか。先に紹介した4つの不安に対する対策を紹介すると、次のようなことが考えられるそうです。

不確定要素や条件への不安

やりたいこと、ありたい姿を基に、なぜその条件を重視するのかを整理し、表面的な条件だけでなく、具体的な情報からそこで働く自分をイメージすることが重要になる。

就活軸が不明確なことによる不安

やりたいこと、ありたい姿を再確認し、働く上で大切にしたいことを明確にすること。それらに照らして、どこに不安を感じているかを明らかにすること。

内定後による情報への不安

断片的な情報で判断していないかを振り返り、不安に感じている点に対して追加で情報収集することが重要。その際、不確かな情報に惑わされないように適切な情報源から収集することが大切になる。

企業からの評価に対する不安

自分の持ち味ややりたいこと、ありたい姿を整理した上で企業と話してみること。社員に求められることや企業のビジョンを書き出し、自分の持ち味や思考との合致点を確認することが重要になる。

なお、これら不安が生じる要因は、「自己理解」「相互理解」「仕事理解」「企業理解」の4つの不足から生まれている傾向にあります。このうち「自己理解』は、その他の理解や自分と合うかどうかといった判断の基礎となるので、内定後〜入社後を含めて継続的に自己理解を深めていくことが大切です。その際、体験を通じて深めるという視点を持つことがポイントです。体験によって得たものや、体験の中で感じたことを言語化することが自己理解につながってくるものです。

24年卒の就活生は「自己理解ができている」と言い難い状況で、それは調査データの結果からも読み取れると、本調査ではまとめていました。

別の専門家の調査によると、「あなたは自己理解ができていますか」と聞くと、90~95%の人は「できている」と答えたそうです。その後「できている」と回答した人を専門家が調査したところ「自己理解」ができているとにんていできるのは、10~15%程の人しかいなかったということです。

私たちは自分のことは自分が一番知っていると考える傾向がある強いようですが、その考えの多くが思い込みのようです。

自己理解、自己認知を高めるトレーニングは、多くの学生が就活を始める3年では遅い、というのが私の見解です。大学低学年から、就活とキャリア形成を視野に入れて取り組むことをお勧めしています。あおもりHRラボでは「社会のトビラ塾」として、自己理解を徹底して深く考察する3カ月間の講座を提供しています。次回は年明けにご案内いたします。ご検討くだされば幸いです。

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