早期離職の理由

「新卒社員の3割が3年以内に離職する」ことが広く知られるようになりましたが、厚生労働省から発表された「学歴別就職後3年以内離職率の推移」を見ると、大卒の若手社員の早期離職はバブル崩壊以後、リーマンショックの次年度(2009年)を除くと、30%超で推移していることがわかります。バブル崩壊は1991年と言われていいますので、この課題は32年も続いている状況であることがわかります。

近年では働き方改革の他、従業員のエンゲージメント向上に力を入れる企業が増加していて、新卒社員の受け入れについても給与の見直しなど、手厚い体制を整えている傾向にあります。また、若手社員もキャリアリテラシーが向上していて、早期離職のデメリットをよく理解しているようです。なのに、なぜ早期離職が続くのか? この問題に、東京大学でキャリア設計の授業「キャリア・マーケットデザイン」のコースディレクターを務めるなど、キャリア教育活動にも尽力している渡辺秀和氏は「採用企業や若手社員に問題があるのではなく、就職活動のプロセスに大きな問題がある」と指摘されています。

渡辺氏によると、早期視力を決断する2つのケースが多く見られるとのことです。

一つは、「自分の意志と合わない仕事についてしまった」というケースで、もう一つは、「上司やクライアントとの関係が辛くなった」というケースとのことです。

今回は、これから就活を進める25年卒にぜひ知っておいて欲しい内容として、「自分の意志と合わない仕事についてしまった」ケースについてフォーカスします。

1つ目のケースは、何も就活をいい加減にしたということではありません。近年の就活は、インターネットの普及が背景となり多くの情報を得ることができます。さらに熱心に取り組んでいる学生が大半で、2年生から面接対策や筆記試験の準備をする学生も少なくないようです。

本来の就活は、①自分がやりたいことを明確にする、②それを実現できそうな企業群を見つける、③準備をしてから選考に望む、という手順になるのですが、実態はそうなっていないのです。

就活が近づいてくると大学の先輩や周囲の人、あるいはネット情報などから「この辺りの企業を受けるとよい」といったアドバイスを受けるようになります。そのアドバイスの多くは、年収が高い、ブランドがあるといった観点が中心のようです。

日本の教育環境において、キャリアデザインについて学ぶことが乏しい学生は、アドバイスを素直に受け止めそれを主活の軸にしてしまう傾向にあるとの指摘です。

そうして行われる就活では、自分がやりたいことを明確にするという、大切なステップが抜けてしまっているようです。そして、人気企業へ入社はできたけれど、自分が望んでいた仕事とは異なっていたという事態が必然的に起きてしまうのです。

内閣府が発表「就労等に関する若者の意識」調査でも、初職の離職理由は「仕事が自分に合わなかったため」43.3%が最も高い回答となっていました。

日本企業でもジョブ型採用を取り入れた企業もわずかながら増えていますが、新卒採用では総合職として採用するケースが多い日本では、必ずしも希望の仕事につくことができないということがあり得ます。ですので、自分がやりたいことを明確にしたら、どの業界に入るかという視点だけではなく、どのような職種で、どういったキャリアとなるのかをよく理解して就職先を選択することが重要なのです。

自分の志向と見合う仕事を見つけるためには、とにかく自己理解を深めることです。自分がどのようなことを好きなのかを知り、自分の嫌いなことを知ることです。そして、自分の特性(コンピテンシー)、職能(スキル)につながる強みを把握し、それを磨くことを学生時代にしっかり行っておくことが大事です。

その次は、自分の強みを発揮できる仕事を探してみることです。業界ではなく、まず職種を検討してみることをお勧めします。つまり、強みを活かして、その道のプロと呼ばれるくらいの職業人を目指すことです。勿論、途中でキャリアチェンジがあってもOKです。ただ経験が浅い20代前半の学生の最初の職業選びで土台とすべきは、年収やブランドではなく、自分の強みを軸にするほうが適していると考えています。そうすることで、「仕事が自分に合わなかった」といった離職を避けることができると思います。

これまでにも就活を機にSelf-awarenessにトコトン取り組まれることを推奨してまいりましたが、その必要性のひとつは、今回のテーマである早期離職を避けることにあります。

本人が意図したキャリアプランであれば別として、不本意な早期退職が多いことは、企業にも、個人にも残念なことです。企業は、採用や育成にかけた多大なコストを回収できないうえに、社内の雰囲気にも悪影響がでてしまいます。

個人にとっても、新卒の特権を失うデメリットの影響は少なくありません。新卒の就職活動は、最も幅広い選択肢を持つ貴重な機会です。また短期間での離職は、「我慢強くないのではないか」と転職活動時にネガティブに評価されることがつきものとなります。

あおラボでは、講座やセミナーなどで自己分析に関わる学習をご紹介しておりますので、ぜひご参加されてみてください。また、企業が実施するインターンシップやオープンカンパニーも仕事やそこで働く人の理解を深める絶好の機会です。機会に恵まれるのなら1・2年生次から進んで参加されることをお勧めします。

最近特に思うことは、自分のキャリアデザインをじっくり考察する時間を持つことができるのは学生だからこそ出来得る特権のひとつではないかと思うのです。

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