キャリアにつて少し学ぶと必ず触れることになるJ・D・クランボルツが提唱した「計画的偶発性理論(プランドハプンスタンス理論)」という理論があります。一言でいうと、キャリアプランだけが大事ではないことが示されています。
どういうことかというと、今の仕事を続けていて、自分は幸せになれるか…と思い悩む人がいます。一方で、転職に就いて生き生きと働いている人もいます。実は、前者の人は少なくないようです。さらに後者の人が偶然にその仕事と出会っていたことを知る人も少ないといわれています。クランボルツは、その偶然を起こすためにできることがあると述べているのです
スタンフォード大学の教育学・心理学教授であるクランボルツは、キャリアカウンセリングの先駆者のひとりです。カウンセリングを通して、満足いく仕事に出会った人が、実は予想外の出来事などによって転職に出会ったという幸運をつかんでいたことを知りました。どうして邂逅(かいこう)に出会うことができたのかを著書【その幸運は偶然ではないんです!夢の仕事を掴む心の練習問題】で紐解いています。45人の実例と、章ごとに自分を振り返る「練習問題」がありますので、これから就活の事前準備に取り組まれる26年卒以降の皆さんで、職業選択がいまひとつピンとしない方にお勧めの書籍です。
ある学生が大学で情熱を注ぐ対象はコレだ、と考える対象に出会い、関係するすべての科目でAを取り、志望する仕事に就いたのです。しかし、実際に仕事に就いてから、その仕事の実情を目の当たりにした彼女は夢の仕事を辞めました。その後いろいろな仕事にチャレンジしたのですが、どれも自分に合っていない思いが募り、途方に暮れたとのことです。そこでキャリアカウンセラーに話をしたところ、「間違っていいのです、そうしないと人は学べない」というアドバイスを受けるのです。
また違えたらどうしよう、という不安から解放された彼女は、カウンセリング心理学を学び、生活保護を受けている母子家庭の母親たちの就職支援をし、充実した日々を過ごしているという事例が紹介されています。
実は彼女、上記のカウンセリングを受けたあとに、自分は人と話し、情熱について語ることに楽しみを見出していることに気づき、心理学を学んだのでした。
彼女は自分にとって完璧な夢の仕事というものが存在していて、それを見つけさえすればよいという考え方から就活をスタートしていました。酷な話ですが、この社会には完璧な仕事など存在しないのです。ですから事例にった彼女のような考え方で仕事選びを行うことは危険が伴うことを理解しておくことが大切です。また、どんな仕事にせよ、ポジティブに楽しく取り組めるだけではなく、退屈な時間や辛く感じるときがあるものが仕事であることも理解しておきたいものです。
クランボルツは、キャリアに確実性を求めたい気持ちはよくわかる、といっています。しかし、そうやって苦心する時間を過ごすことで、自分を不幸にしてしまう人が少なくないのです。
偶然の出来事から幸せをつかむためには、ちょっとした勇気が必要だと、本著では語られています。どんな場面におけるどのような勇気なのか、ご興味があれば一読ください。