26年卒予定の大学生、大学院生(文系615人、理系489人、その他5人、計1,109人)を対象に実施されている就職希望先調査の7月末時点での中間結果が発表されました。
26年卒の特徴ともいえる結果が中間結果にも表れているように思えました。文系では志望業界に分散傾向が見られ、業界志向ではなく個別企業志向の傾向が伺えました。
続いて、理系では職種に合わせて多様なインターンシップを開催した企業に注目が集まっている傾向が見られました。
文系総合では、昨年同様商社が上位に入り、安定した人気ぶりがわかります。1位の「伊藤忠商事」では、顧客目線で商品・サービスの提供を行う「マーケットイン」の視点で社会に向き合う姿が、勝者の中でも独自の魅力として学生から支持されているようです。女性活躍支援策やキャリア制度など、成長を実感できる基盤を整え、年々アップデートしていることも特徴となっているようです。
2位の「三菱商事」は、段階的な学びを通じ「三菱商事のビジネスについて体感」しながら「キャリアビジョンを研ぎ澄ます」ことをコンセプトとした、最長2ヶ月のワークショップを実施。また、23年から移動せずに多部署業務を経験できる「社内副業制度」を導入。部署を越えた研鑽を通じて、知識や経験を培い、自律的なキャリア形成を促すなどの変化を続けている姿の印象づけに一定の成果が現れたのではないでしょうか。
食品メーカーでは、「サントリーホールディングス」が3位に、「味の素」が7位と、いずれも大きくランクアップしていました。スキルが身につく多様な職種があり、ワークラフバランスを推進する様々な制度も充実しているなど、不確実な時代だからこそ、仕事のやりがい+安定性や働きやすさを重視する学生から支持を集めているようです。
昨年は、トップ10社中7社が勝者・金融業界だったのに対して、今回の結果では、勝者、メーカー、金融、コンサル、航空、マスコミ、不動産と他業界に分布していることがわかります。やりたい仕事ができるか、成長できる環境か、自分らしい働き方ができるか、といった学生が入社志望先を決める基準が多様化している背景もあり、業界志向よりも、個別企業志向が高まっていることが伺えました。
この傾向もあってか、就活生の企業研究が深化していますので、企業としては、自社の特徴や独自の取り組みなどの情報発信には鮮度や解像度をより高めることが求められると思います。
理系総合1位も昨年から変わらず、「ソニーグループ」でした。エンターテイメント、テクノロジー&サービスと幅広い事業展開が、職場密着型インターンシッププログラムに反映され、仕事・キャリア軸で企業を選ぶ学生の傾向とマッチした結果につながったと思われます。他にも、社員との対話や現場訪問を通じて企業を詳しく知ることのできる1dayイベント・新規事業特化型の少人数制インターンシップ、Sensing Solution ハッカソン2024など多様なメニューが用意されていることへの評価もプラスになったようです。
2位の「野村総合研究所」は昨年からランクアップ。インターンシップでは、実践型プログラムのほか、あらゆる業界でニーズの高まっているDX人材の確保に向けて、AI・DXのエンジニアリングの最前線が学べるプログラムも開設しています。インターンシップ選考で不合格となった学生に対してもフィードバックを行い、就職活動を通じて自社と接点を持ってくれた学生と真摯に向き合う姿勢が2位まで評価を上げたと思われます。
6位の「トヨタ自動車」では、学生が主体的にキャリアを選べるように、エントリー時点からコースを確約するジョブ型採用を行なっています。インターンシップからジョブ型を取り入れているのが、9位の「日立製作所」キャリアのイメージと、業務のマッチングを重視したパーソナライズ採用の推進を目的に、インターンシップで業務への理解を深めた学生からのエントリー増加を見据えた施策であることが伺えます。
近年、あらゆる業界でDX推進が求められ、人材の争奪戦となっている理系の新卒採用です。ランキング上位常連の総合商社や大手金融機も年々理系、とりわけIT系人材の採用数を増やしています。
自分の専攻分野や専門性を活かせるか、入社初期の配属や勤務地の確約を重視する学生が多いため、企業としては早期から仕事や職種について理解を深められるプログラムやイベントを打ち出すことが人材獲得の鍵となっていることも事実で、このような背景が早期化にはあることの認知が広がることで、早期化イコール悪のような声が少なくなることを企業人として望みます。