就活準備を進める学生のなかには、ES作成は難なく進められるが、面接練習では思っていた以上に話すことができない、と課題に直面する学生が少なくないように思います。
対策としては、話すことや伝えることをテーマにした書籍がたくさんありますので、良書を1~2冊深読することを勧めています。まずは基本のキを抑えることが大切です。
その上で、少しテクニカルな知識も取り入れて、日常のコミュニケーションの中で使ってみた上で、あなたらしく表現できるようにこなすことができるようにすることです。
つまり、話すや伝えることを上達するためには一定の時間が必要になるのです。こういうことを踏まえると、就活事前準備は大学2年生後期辺りから構造的に取り組んでおくことがベストだと考えています。
話しが上手な人にはいくつかの共通点があります。その点を意識するだけでも話し方を向上させることができます。今回は「対応力」と「内容力」にフォーカスしてお伝えします。面接対策にお役に立てれば幸いです。
最初に留意しておきたいことは、対応力、内容力とどちらにも「力(チカラ)」がついています。力=能力と考えてしまう方が多いのですが、その能力は持って生まれたものではありません。少なくともここで使っている力は後天的な能力です。学習と訓練を積んで身につけるスキルです。
ですから、「うまく話せない」というのはうまく話せるように努力を積んでいないことでもあるのです。そこに気づくことが大事だと思います。
一つ目の対応力は、その場の状況に合わせて対応できる力のことです。面接では、さまざまな状況に対応できる力があるかどうか、を評価項目にしている企業があります。
話しが上手な人は、相手の話をきちんと聴いて、それにしっかり的確な応答をしています。全てではありませんが、あえて抽象的な質問をして、あなたからどんな回答がくるかをみていることもあります。
ここで気をつけたいことは、質問に対してはすぐに回答しなければいけない、などと考えずに、質問が分かりづらいときには、質問を咀嚼して確認してみることです。
その際に大切なことは、「質問の意味や意図がよく分かりません」などと伝えると、「失礼な学生だな」と面接官に思われ心象を落としかねませんので、要注意です。このような場面では、「今のご質問、〇〇〇と理解したのですが間違っていないでしょうか」と、柔らかくお伺いを立てるのでベストです。
このような場面をあなたからつくり出すことで、質問の意図を理解しないまま返答するような曖昧なことをしない、分からないことはきちんと確認ができる人というあなたの人柄を示す好機にすることができるのです。つまり、対応力有の評価につなげることができるのです。
また、少し考えをまとめたい、整理したいときも、焦って話し始めずに「少しお時間をいただいてもよろしいですか」とお断りを申し出ることも対応力につながるコミュニケーションスキルとなります。
二つ目の内容力とは、話の内容は、ちょっとした工夫をするだけで相手が聴きたいと思うように昇華できます。この工夫を指します。話に興味を持ったり、聴き手の心を引き込むことに使われるのが「つかみ」です。
たとえば自己紹介をする場面で、「私の強みは、大谷翔平選手のように大きな目標を達成するために常に新しいことに挑戦することです」のような、自分を端的に表現できるようなキーワードを始めに出すことも効果的な伝え方です。続いて、キーワードを補う体験談が続く流れの話は惹きつけられるものです。
ただし、端的に表現できるキーワード選びは、慎重かつ真摯なものであることが重要です。芸人が使うつかみとは、目的が異なることを忘れてはいけません。
自分を端的に表現できるようなキーワードを探せない人は、話をストーリー仕立てにする方法があります。話を物語化するテクニカルもさまざまなものが紹介されていますので、自分に合うものを見つけてみるといいでしょう。
私が研修などで頻繁に紹介しているものに「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」という、ジョゼフキャンベル(米国神話学者)が提唱したものです。ご存知の方もおられるかも知れませんが、映画スター・ウォーズは、ヒーローズ・ジャーニーの流れを取り組んで制作されたといわれています。
たとえば自己紹介にストーリー仕立てを取り入れると、強みだけではなく、弱みも効果的に表現することができます。面接では自分の良い面を強調し伝えてしまう傾向がけっこうあるのですが、自分の弱さもしっかり認知していることを正しく伝え、それをどのように克服してきたかをアピールすることも大切なことです。
ストーリーといっても、ドラマや映画になるような内容のものではありません。日常の小さな経験であっても、あなたにとってターニングポイントや大切な出来事であれば、ストーリー仕立てにして伝えてみると相手の心に響く内容と話が昇華するものです。
面接はあなたの能力やスキルを見る以上に、あなた自身の人間性、人間力を確認する場です。前述したような「うまく話せない」などといった思い込みで残念な結果を招くことがないように、今から面接で話ことを再構築して参りましょう。
最後に少し厳しい情報もご紹介します。
面接官は大人です。そして採用のプロが揃っています。なので、自分のところまで降りてきてもらうコミュニケーションは、面接ではほとんどないと考えておくことです。つまり、大人社会のコミュニケーションを理解しておくことが大切です。
こんな話があります。
- 分かりにくれれば、「よく分からない」ということで却下。
- 「ちょっと自分に都合よく考え過ぎだ」と思えば、「甘えが強い」「自己中心的だ」で却下。
- 的外れなことを言えば、「人の話を理解できない。気持ちを汲めない」ということで却下。
- 大人とのコミュニケーションや面接そのものに慣れてなくて、頭の中が真っ白になってしまえば、「メンタリティが弱い」ということで却下。
厳しいな、と思いましたか。特に大手企業になる程、人の出入りには超がつくくらい慎重になります。この先ますます人材不足が進む時代ですから、どの企業も将来性を見いだせる学生を独りでも多く採用すべく、プロが全力で採用活動を行っています。
人材不足だから、誰でもいいので来てください!なんて企業はビジネス社会ではまずないですし、仮に存在していたとしてあなたはその会社に入社したいでしょうか。
大人社会は厳しいものです。だけど厳しいばかりではありません。夢も希望も優しさも友情も愛も一杯あります。社会に出るのを楽しみにしてください。