価値観・能力・職能、3つの円

自分という人間を、1枚の図にすると

こんにちは、あなたらしく輝ける未来を共に創造して、キャリア形成や就活の支援をおこなっている【あおラボ】です。

今週は、強みの正体を扱っている。月曜日に「できること」と「強み」のちがいを、昨日は「スキル」と「コンピテンシー」のちがいを書いた。

言葉が3つ出てきた。ここで一度、整理しておきたい。じつは、この3つはきれいな図になる。

今日紹介するのは、1枚の図だ。この図を頭に入れておくと、自己分析でどこを掘ればいいかが、はっきりする。そして、なぜ掘るのかもわかる。

Chapter 9 3つの円で、自分を捉える

人の性質は、3つの同心円で表すことができる。中心から外へ、順に重なっている。この考え方を知ると、これまでの話が1枚につながる。この章では、まずその図の出どころと、3つの円それぞれを順に見ていきたい。

9-1 就職に悩む娘に、父親が書いた本

この図を示したのは、刀の森岡毅氏である。マーケティングの分野で広く知られた方だ。

私は以前からこの方に注目していて、著書はほぼすべて読んできた。その中に、少し変わった成り立ちの本がある。『苦しかったときの話をしようか』という本だ。もともとは、就職活動で悩んでいた娘さんに向けて書かれたものだという。つまり、いま読んでいるあなたと同じ立場の人に向けて、父親が本気で考え抜いた内容が書かれている。企業のマーケティング戦略を、自分自身に向けて使う。そういう発想で組み立てられた本だ。

今日紹介する図は、この本にあるものだ。機会があれば、ぜひ手に取ってみてほしい。同じ悩みを持つ人に向けて書かれた本なので、読みやすいはずだ。

9-2 中心にあるのは、価値観

では、3つの円を見ていきたい。いちばん内側、つまり中心にあるのが価値観である。

価値観とは、何を大事だと感じるかということだ。人の役に立ちたい。正しくありたい。自由でいたい。新しいものをつくりたい。人それぞれちがう。ここは、自分でもなかなか言葉にできない部分になる。けれど、意思決定のときに必ず働いている。進路を決めるとき、アルバイトを選ぶとき、誰かの言動に強く反応したとき。そこには価値観が出ている。8月の連載で、感情は価値観が反応した証拠だと書いた。まさにこの部分にあたる。

強く反応した場面を思い出してほしい。そこに、あなたの中心が顔を出している。嬉しかった場面でも、納得できなかった場面でもいい。

9-3 その外側に、コンピテンシー

中心の価値観を囲むように、次の円がある。ここがコンピテンシー、つまり能力の層になる。

昨日書いたとおり、どんな状況でも一定以上の成果を出せる思考と行動のパターンのことだ。価値観が「何を大事にするか」なら、コンピテンシーは「どう動くか」になる。たとえば「人の役に立ちたい」という価値観を持つ人が、「相手の話を引き出して整理する」という動き方で、それを実現している。価値観が方向を決め、コンピテンシーがその方向へ進む手段になる。この2つはつながっている。だから、片方を掘ると、もう片方も見えてくることが多い。

自分の動き方が、何を実現していたかを考えてみてほしい。中心とつながっているはずだ。価値観が方向を決め、動き方がその手段になる。

9-4 いちばん外側が、スキル

最後に、いちばん外側の円がスキルになる。森岡氏は、これを職能と呼んでいる。

具体的な知識や技術のことだ。会計の知識、語学力、道具の操作。昨日扱ったとおり、学べば身につき、置かれた場所によって価値が変わる。外側にあるというのは、そういう意味だ。外側だから、外の環境の影響を受けやすい。技術が変われば古くなり、業界が変われば使わなくなる。だからといって不要なわけではない。外側の円がないと、実際の仕事はできない。ただ、それは着ている服のようなもので、着替えることができる。

いま持っている知識や技術が、外側の円だと考えてほしい。着替えられるものだ、と思えば気が楽になる。不要という意味ではない。服がなければ、外は歩けない。

Chapter 10 なぜ、真ん中に近いほど大事なのか

図がわかったところで、なぜこの形なのかを考えたい。内側と外側では、性質がはっきりちがう。この章では、その差を4つに分けて確かめていく。ここがわかると、掘るべき場所が決まる。

10-1 外側ほど、変わりやすい

3つの円には、はっきりした傾向がある。外に行くほど、変わりやすくなる。

スキルは、数年で価値が変わることがある。就職して配属が決まれば、必要な知識も変わる。転職すれば、まるごと入れ替わることもある。一方、コンピテンシーはそう簡単には変わらない。大学時代の動き方が、入社後もほとんど同じだという話を昨日書いた。そして中心の価値観は、さらに変わりにくい。もちろん経験によって深まることはあるが、根っこの部分は続いていく。この安定度の差が、円の並びを決めている。

長く使えるものを、先に掘ってほしい。変わりにくいものほど、土台になりやすい。外側から固めると、数年で組み直すことになる。急がば回れ、である。長く使えるものから、先に掘っていこう。

10-2 内側ほど、持ち運べる

もう1つの傾向が、持ち運べるかどうかだ。この観点でも、内側のほうが強い。

森岡氏は、スキルは転職すると使えなくなることもあるが、コンピテンシーは転職しても使える人としての真の強みだ、という趣旨のことを書いている。ここは、私も現場で何度も見てきた。業界を変えて転職した方が、それでも活躍する。理由を聞くと、たいてい動き方が同じなのだ。扱う商品も、関わる人も変わったのに、力を発揮している部分は変わっていない。持ち運べるものを持っている人は、どこへ行っても立て直せる。

持ち運べるかどうかを、基準にしてほしい。この1つの問いで、内側か外側かが判別できる。持ち運べる人は、どこへ行っても立て直せる。業界を変えても活躍する方を、何人も見てきた。

10-3 自己分析で明らかにするのは、2番目の円

では、3つのうちどこを掘ればいいのか。答えははっきりしている。2番目の円、コンピテンシーだ。

森岡氏も、この自己分析で明らかにするのはコンピテンシーの部分だと書いている。理由は、実用性にある。中心の価値観はとても大事だが、言葉にするのがむずかしく、企業に伝えるにも抽象的になりやすい。外側のスキルは伝えやすいが、他の学生と差がつかない。その中間にあるコンピテンシーは、自分らしさが出ていて、しかも経験を使って説明できる。つまり、ESでも面接でも使える形になっている。だから、ここを狙って掘る。

今月は、2番目の円を狙ってほしい。ここが、就活でいちばん使える層になる。自分らしさがあり、しかも経験で説明できるからだ。

10-4 価値観は、掘っているうちに見えてくる

「では、価値観は無視していいのですか」と聞かれそうなので、書いておきたい。そうではない。

価値観は、正面から掘るのがむずかしい。「あなたの価値観は」と聞かれて、すぐ答えられる人はほとんどいない。けれど、コンピテンシーを掘っていくと、自然と見えてくる。「人の話を引き出すのが得意だ」と気づいたあとで、「なぜそれをしてきたのか」と考える。すると「相手が本当に困っていることを知りたいからだ」という答えが出てくる。これが価値観だ。つまり、2番目の円を掘ることが、中心に近づく道にもなっている。

中心は、掘った先に現れるものだと考えてほしい。最初から探しにいかなくていい。2番目の円を掘る道が、そのまま中心に近づく道になっている。

Chapter 11 自分の3つの円を、描いてみる

図がわかったら、自分に当てはめてみたい。この章では、いま書きためている材料を、3つの円に振り分ける方法を紹介する。今日の10分は、この作業に使ってほしい。

11-1 いま書いている材料が、どの円のものか

ノートを開いて、これまでに書いた項目を見てほしい。1つずつ、どの円のものかを考えてみる。

「簿記の勉強をした」なら、外側のスキルだ。「後輩に教えるとき、まず相手がどこでつまずいているか聞いた」なら、2番目の円になる。「人ができるようになる瞬間が嬉しい」なら、中心に近い。こうして分けていくと、自分がどの層の材料を多く持っているかが見えてくる。ここで大事なのは、正解を出すことではない。迷ったら、両方に印をつけておいて構わない。分ける作業そのものが、理解を深めてくれる。正解を出すことが目的ではない。

書いた項目に、1・2・3の番号を振ってほしい。迷ったら、両方の番号を書いておけばいい。分ける作業そのものが、理解を深めてくれる。正解を出すことが目的ではない。

11-2 スキルばかりなら、1つ内側へ

分けてみて、外側の円ばかりになっていたら、掘り方を変える合図だ。昨日(skills-fade-competency-remains)も触れたところである。

やり方は単純で、そのスキルを身につけた過程を思い出す。「簿記の勉強をした」なら、どう勉強したのか。毎日決まった時間にやったのか、わからないところを人に聞いたのか、問題を解きながら覚えたのか。この部分が2番目の円になる。同じスキルでも、身につけ方は人によってまるでちがう。そこにあなたの型が出ている。スキルの項目を見たら、必ず「どうやって」を足してみてほしい。

外側の項目には、「どうやって」を書き足してほしい。それだけで、1つ内側に入れる。同じ資格でも、身につけ方は人によってまるでちがう。そこに、あなたの型が出ている。

11-3 「なぜ嬉しかったか」で、中心に近づく

逆に、中心に近づきたいときの方法もある。こちらは、感情を手がかりにする。

書いた経験の中で、嬉しかったもの、楽しかったもの、逆に悔しかったものに印をつける。そして「なぜ、そう感じたのか」を1度だけ考える。8月の連載で扱った「なぜを掘る」を、ここで使う。「文化祭で役割分担を決めて、みんなが動きやすくなったのが嬉しかった」。なぜ嬉しかったのか。「自分の段取りで、人が楽になったから」。ここまで来ると、中心が見えはじめる。1度でいい。何度も掘る必要はない。深く考えこまず、浮かんだ答えを書けばいい。

感情の動いた項目に、「なぜなら」を1つ足してほしい。中心は、その先にある。1度でいい。何度も掘る必要はない。深く考えこまず、浮かんだ答えを書けばいい。

11-4 完成させなくていい

最後に、大事なことをお伝えしておきたい。この図を、今日完成させようとしないでほしい。

3つの円は、一度描いて終わりではない。材料が増えるたびに、書き直すものだ。今週の時点では、円の形がぼんやりしていて当然である。むしろ、はっきり描けてしまうほうが危ない。材料が少ないまま決めつけている可能性があるからだ。先週書いたとおり、答えは月末でいい。今は、どの層の話をしているのかが意識できていれば十分である。

今日は、分けるところまででいい。完成は、10月の終わりに置いておこう。材料が増えるたびに、円は描き直すものだ。今の時点でぼんやりしているのは、むしろ自然なことである。はっきり描けるほうが、かえって危ない。

Chapter 12 今週の折り返しに

今日で今週の3日目になる。ここで一度、進み具合を確認しておきたい。この章では、集める作業の状況別に、次の一手をお伝えする。

12-1 ここまでで、12個は集まったか

月曜日に、1日4つを目安にと書いた。今日までで12個が目安になる。数えてみてほしい。

もし12個あるなら、順調だ。今週の残り2日で20個に届く。来週の作業には十分な量になる。もし10個前後でも、まったく問題はない。数は目安であって、ノルマではないからだ。大事なのは、毎日開いているかどうかである。1日に1つでも書けていれば、習慣としては成立している。むしろ、まとめて20個書いて3日休むより、毎日1つのほうが強い。考え続ける時間が生まれるからだ。

数より、毎日開いているかを確かめてほしい。開いていれば、それで合格だ。まとめて書いて数日休むより、毎日1つのほうが強い。考え続ける時間が生まれるからだ。数は目安であって、ノルマではない。

12-2 数が出ない人へ

「書こうとしても出てこない」という人もいると思う。これは、よくあることだ。対処法がある。

出てこないのは、記憶力の問題ではない。思い出す手がかりが足りないだけだ。だから手がかりを増やす。時期で区切ってみてほしい。大学1年の前期、1年の後期、2年の前期。こう区切ると、そのときのアルバイトや授業が浮かんでくる。あるいは、場所で区切ってもいい。教室、バイト先、部室、自宅。写真を見返すのも有効だ。スマホのアルバムを1年分さかのぼるだけで、忘れていた場面が出てくる。

手がかりを変えてみてほしい。時期、場所、写真。どれか1つで、必ず動き出す。出てこないのは、記憶力のせいではない。思い出す手がかりが足りないだけである。

12-3 出すぎて整理できない人へ

逆に、書き始めたら止まらなくなった人もいるかもしれない。これも心配はいらない。

多いのは良いことだ。ただ、このままだと来週の作業が重くなる。今のうちに、1つだけやっておきたい。書いたものの中で、特に印象に残っているものに星印をつけておく。理由はなくていい。「なんとなくこれが自分らしい」で構わない。その直感は、意外と当たっている。来週、束ねる作業をするときに、星印から始めれば効率よく進められる。全部を同じ重さで扱うと、時間がいくらあっても足りない。理由は、なくてかまわない。

印象に残るものに、星印をつけておいてほしい。直感は、あとで役に立つ。全部を同じ重さで扱うと、時間がいくらあっても足りない。理由は、なくてかまわない。

12-4 明日は、なぜ強みからしか生まれないのか

最後に、明日の予告をしておきたい。今週の中心になる話だ。

「キャリアの成功は、自分の強みからしか生まれない」。私は学生にも職業人にも、この言葉をよく伝えている。ずいぶん断定的に聞こえるかもしれない。明日は、なぜそう言い切れるのかを書いていく。弱みを直す努力がなぜ報われにくいのか。強みに集中するとなぜ早く伸びるのか。そして、それが就職先を選ぶうえでどういう意味を持つのか。今週のいちばん大事な回になる。

今日の10分を、3つの円に使ってほしい。分けておくと、明日の話が立体的に入ってくる。今週でいちばん大事な回になる予定だ。材料を手元に置いて、読んでもらえるとうれしい。なぜ強みからしか生まれないのか、正面から書いていく。

今日のまとめ

人の性質は、3つの同心円で捉えることができる。中心に価値観、その外側にコンピテンシー、いちばん外側にスキル。刀の森岡毅氏が『苦しかったときの話をしようか』で示した考え方だ。

外に行くほど変わりやすく、内に行くほど持ち運べる。スキルは数年で価値が変わることがあるが、コンピテンシーは環境が変わってもついてくる。

自己分析で明らかにするのは、2番目の円だ。中心の価値観は言葉にしにくく、外側のスキルは他の学生と差がつかない。その中間にあるコンピテンシーだけが、自分らしくて、しかも経験で説明できる。

とはいえ、価値観を無視するわけではない。2番目の円を掘っていくと、中心は自然と見えてくる。「なぜそれをしてきたのか」を考えたとき、顔を出してくる。

今日の作業は、書いた材料に1・2・3の番号を振ることだ。外側ばかりなら「どうやって」を足す。中心に近づきたいなら「なぜなら」を足す。図は完成させなくていい。

明日は、今週のいちばん大事な回になる。キャリアの成功は、なぜ自分の強みからしか生まれないのか。一緒に見ていこう。

自分という人間は、身につけたものではなく、内側にあるもので決まっていくと、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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