30代以上の方は「入社したらまずは3年働きなさい」と身近な人から言われた人も少なくはないでしょう。多分「石の上にも3年」という諺にならった表現だと思うのです。しかし、転職が当たり前となりつつある近年、もはや3年も待たずに転職するのは珍しいことではありません。
それを一概に良いとか悪いとかを言いたいのではないのですが、転職サービス「doda」から興味深い調査結果が公表されました。
23年卒で入社した社会人のうち、入社直後の4月に「doda」へ登録した人は、調査を開始した2011年と比較して約30倍となり、これは過去最多の記録とのことです。
新卒1年目の4月というと、会社や業務内容について右も左も分からない段階です。「4月は新入社員研修がメインで、本格的な業務はまだ経験していない」という人が多いと思います。
また、近年は離職防止に向けた働き方改革が進み、労働環境も改善されつつあるなか、一体なぜ新社会人は転職サイトに登録するのか、大きな?が頭の中に浮かびます。
実際に若手社会人の声を拾ってみました。彼らの「働く価値観」が見えてきました。
「なぜ転職サイトに登録したのか」「転職に対してどのような考えを持っているのか」の問いに対しての回答です。
声1:自分の市場価値を確かめたい。さらに成長できる環境ではたらきたい。
新卒では、社会で通用するスキルを培いたいと思い、ベンチャー企業に入社。しかしいざ入社してみると、ベンチャー企業ということもあり、全員が目の前のことだけを見てがむしゃらに働いている状況でした。教育体制や評価体制も十分ではなく、きちんとした評価できる上司がいなければ、定量的な目標設定もなかったため、自分の成長に向けたPDCAサイクルを回そうにも『自分の能力は客観的にどうなのか』『今の自分に足りないものはあるのか、それは何か』『当初と比較してどれほど成長できたのか』などが全く分からない状況にありました。
そんななか、あるとき他社からスカウトを受けました。そのスカウトは結果的にお断りしたものの、これまでの自分の頑張りが評価されたようで嬉しかったことは今でも覚えています。スカウトを機に、『自分の市場価値を確かめたい』『もっと視野を広げて自分が成長できる環境を探したい』という気持ちが高まり、転職サイトに登録しました。
現職では先輩や同僚から学ぶ機会が多く、まだまだ自分の実力が足りないことを実感しています。しかしこれまでとは異なり、客観的に自分の立ち位置を把握することができ、さらに目指すべきゴールから逆算したフィードバックをもらうことで、課題や課題解決に向けたネクストアクションを把握できるようになったことで、成長へのPDCAサイクルを回せるようになりました。自分の能力を高めるために、転職は良い選択だったと感じています。
声2:家族と一緒に生活しながら、自分らしい「働く」を叶えたい
私は新卒で就職直後に結婚しました。しかし地方支店への配属となったため、もともと東京で働いていた妻とは離れ離れに。会社には内定の段階から事情を説明し、東京支店への配属をお願いしていました。その際には『福利厚生が整っているので安心して入社してほしい』という言葉もいただいたため、入社を決めたのですが…。
それでも、せっかく入社したのだから頑張ってみようと思い、仕事に励みました。仕事自体は非常に楽しく、やりがいを感じていたのですが、やはり頭の片隅にはいつも家族の姿がありました。
『家族と生活したい!』という想いは日に日に増していく一方でした。そして、私にとっての自分らしいはたらき方とは、“家族と一緒に生活をしながらはたらくこと”であると気が付いたのです。改めて自分らしい働き方ができる仕事を探そうと転職サイトに登録し、転職しました。
就職活動や入社間もない時期から転職を意識する、いわゆる“転職ネイティブ世代”は、上の世代とは「転職」に対する考え方がまるで異なるようです。
では、何が転職サイトへの登録を後押ししているのでしょうか。考えられる要因として、以下の3点が挙げられます。
- 転職がより身近に
- 社会全体の転職のイメージの変化
- 若い世代の「働く価値観」の変化
社会や価値観の変化を受け、転職ネイティブ世代は新卒入社を“ゴール”とは捉えなくなっています。「自分らしく」働きたいという気持ちを強く抱き、中長期的な視点で自らのキャリアを考えているのです。
そして自分らしく働くためには、成長できる環境でスキルを磨いて経験を積み重ねていくことが不可欠。そのため入社当初から、あらゆる可能性に挑戦することに対して意欲的です。
今すぐ転職するわけではなくとも、早い段階から情報収集をしたり、キャリアアドバイザーに相談しながら自らのキャリアを考えたりするために、転職サイトへの登録が加速しているといえるでしょう。
転職ネイティブ世代に限らず、「転職」に対するイメージはポジティブなものへと変化しています。「自分らしい働き方」の実現に向け、新社会人の転職サイトの登録は今後もますます増えていくことが予想されます。