長所と強みは似て非なるもの

面接対策として、実際の面接を想定した実践練習に取り組む学生は少なくありません。そこでよく聞く話に、「どうして同じような質問が何度も繰り返されるのか?」という疑問の声です。

  • 自己PRをお願いします
  • 自己紹介を3分間でしてください
  • あなたの強みを教えてください
  • あなたの長所は何ですか
  • あなたが自慢できるセールスポイントを2分間でプレゼンしてください

などの自分をアピールする関連した質問項目です。

就活生としてしっかり押さえておきたいことは、「長所」と「強み」は別物として理解し、事前準備を行うことです。長所と強みは、どっちもあなたをアピールする内容であることは同質の問いですが、本質は似て非なるものなのです。かんたんに説明すると、長所はあなたがもともと持っている優れた資質や人柄、性格を示すものです。一方で強みは、あなたが企業にどんなメリットを与えることができるかのエビデンスとなるスキルやあなたのいいところのことです。

具体的な長所の例としては、

  • コツコツ努力できる
  • コミュニケーション能力が高い
  • 好奇心が旺盛
  • 前向き・ポジティブ
  • 計画性がある

といった表現になります。一方、強みの例としては、

  • 分析力
  • 論理的思考力
  • 問題解決力
  • 交渉力
  • 実行力

など、〇〇力という表現が一般的に多くなます。

ここまでを整理できたら次のポイントです。

長所も強みも、自分をアピールする点では同質ではあるのですが、志望する企業や業界によって、長所が強みに、強みが長所になることがあることを理解しておくことも大切です。つまり、企業によって長所になるのか、強みになるのかが変わるということです。

学生の皆さんは、自己分析を通して自分の長所はコレ(A)で、強みはコレ(B)といったように整理する傾向が多いのですが、この整理がそもそもの混乱を招く原因ではないかと思うのです。

つまり、長所や強みというのは、相手があってはじめて、Aが長所になったり、強みになったりするものなのです。ここであなたの企業研究の質や聴く力が試されるのです。

例えば、小学生の頃から読書が好きで、読書を通して歴史に興味を持ったとします。そこで一層読書量を増やすために速読を学び、速読スキルには自信があるとしましょう。

そこで、速読をアピールポイントだと考えても、それはあなたの主観であり、相手である面接官が、読書はスピードよりも、内容を把握する正確さやそこから何を学び取るか、といったことに重点を持っている人だとしたら、速読自体は、アピールとして効果を果たさないこともあり得るということです。

他にも1次面接、2次面接、最終面接と面接官が異なるのが一般的です。面接官によって腑に落ちたり、共感してくれる話は変わってくる、ことも理解しておくことがいいと思います。

例えば、1次面接では現場で実際に職務遂行をしているリーダー的な方や現場を仕切る課長職が面接官を務めるケースがあります。そういう場面では、将来の大きな夢を語ってもあまり良い印象にはならないことがあるようです。日々の業務遂行の意義やそこにどんな遣り甲斐を見出せるか、など地に足の着いた話をした方が、賢い実務家として好印象を持ってもらえるのではないかと思うのです。「現場が会社と顧客の信頼を築き繋いでいる」的な思考をしっかり持った人材として評価を得ることが大事だと思うのです。

では、長所や強みをどのように整理し、準備すると良いのか考えると、次のようになります。

志望する企業の仕事において、直接的に活かすことが具体的に説明できるアピールポイントが強みであると考えます。そして、直接的に活かす機会は少ないかもしれませんが、組織の一員として働くなかでアピールできるあなたの人柄などが長所として考えるとズレを防ぐことができるでしょう。つまり、学生時代までは「誰とでも仲良くなれた」ことは事実であっても強みとしては効果が期待薄となるので、長所として扱う方がベターだということです。

エントリーシート、面接、いずれも考えれば考えるほど難しいものと思えてきますが、採用する企業側の立場も同様で、自社の将来にとっての素晴らしい人財を確保するために必死に担当者が、あなたが書いた文章や話した言葉、態度、振る舞いを基に選考しているのです。

就活は真剣勝負そのものと言えます。ただ、今は売り手優先という学生にとっては有利な風が吹いているのも事実です。気負わずに真摯に前に進んでいく姿勢が大切です。

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