インターンシップ・就活で学生にとっての最初の関門はES(エントリーシート)の作成だと思います。そこで求められることは企業によって違うので、複数の企業に応募をする際は、時間も相応に必要となります。今回はES作成の留意事項をお伝えします。
ズバリ、ESに書かれている質問をしっかり読むことです。
コミュニケーション全般がそうなのですが、相手を理解すること。志望する企業から内定を獲得するためには、あなた自身が伝わらなければいけないのです。
相手の気持ち、考えていることを汲み取った上で、相手が聞きたいことを的確に、あなたがいいたいことをわかりやすく書く(伝える)ことが大切です。感覚ではなく論理的に言語化して書く(伝える)ことがポイントです。
質問を読むことは当たり前と考える学生が多いのですが、実はしっかり読んでいないと思われるESが少なくないように感じています。それは、ESや面接対策で学生の回答を見聞きしていると、質問には意図や目的があることを理解していないように思われる回答少なくないのです。つまり、訊かれていることを正しく理解していないのです。
例えば「あなたが大学時代に挑戦したことを述べてください」という質問があったとします。あなたがどんな挑戦をしたのかを知りたいからこの質問をしているのに、挑戦したことについてその回答が全く書かれていないのです。他にも、「主体性を発揮したこと」を訊いているのに、どこに主体性があるのかわからない文章や、「入社後どういう仕事をしたいですか」と訊いているのに、「私は○○面でこの仕事に向いています」と回答していた事例もあります。
就活の一つひとつの場面は、あなたの人生やキャリアになにかしらの影響を与えるものです。ですから、ES作成の際は、質問をしっかり読んで、そこで何を訊かれているかを把握することが大切であることを理解しておくことです。
企業がESの提出を求めることにも意図と目的があることも知っておきましょう。そうすることであなたらしい対応が可能となるものです。
応募者にESを求める理由は、ある程度書類で絞り込みをしたいと考えていることです。特に大企業では数万の応募が集まりますので、全員と面接をすることは現実的に難しいことがあります。そこで、ESで訊きたいこと、つまり知りたい情報を集めているのです。この情報のポイントは業界・企業によって違いがありますが、一般的にはあなたがどういう人物か、どんな考えを持っているのかという内面を知りたいという目的があります。学生時代に何に力を入れたのか、どんな経験をしてきたのか、を訊くのもそのためです。そして、あなたが会社に合う人物かどうか、社風や組織文化に適応できるかどうか、を知りたいという目的もあります。
人間の価値観や考え方は、その人の言動すべてに表れるものです。ESのレイアウトや一つひとつの文字はもちろん、語彙の使い方や表現の仕方などで、書き手の人柄やちゃんと物事を考えている人かなどがわかるものです。
実際の書き方については、主張 →理由 → 具体例(エビデンス)という型があります。
まず、「私はこうしました」「こう思います」という主張があります。それに対して、「なぜその行動を取ったのか」という理由を示した次に「どんなことをしたのか」など具体例を挙げて文章をまとめるのです。
極端にいうと、ESは「私はこういう人間です」と伝えるセルフマーケティングです。つまり、あなたはこういう人なのね、それでそういう行動を取ったのだね、と企業側に納得や理解をしてもらうことが大事なのです。なので、自分の主張を格だけではなく、そのように考えた理由や裏づけとなるエピソード(事実)が必要なのです。それは、この3つが揃って読み手に納得・理解が得られるからです。
例えば「大学時代に主体的に物事を取り組んだ事例を述べなさい」の問いの回答としては、
- 私は大学時代所属していたディベートのゼミで、自ら立候補して「副ゼミ長」を務めました。【主張】
- 副ゼミ長は面倒な仕事だと思われて誰も立候補しませんでしたが、私はゼミの運営に貢献したいと考え、手を挙げました。【理由】
- 主な仕事は、ゼミ長と一緒に毎回の議論のテーマを決めたり、チーム分けを考えたりすることです。私は議論が活発になるように、メンバーの関心がある分野やディベートの力量を考えながら、テーマとチームを決めました。【自分がやったことの具体例】
- その結果、一人ひとりの発言が増えるようになり、以前よりも議論が盛り上がるようになりました。教授からも「いつもゼミのために頑張ってくれてありがとう」と感謝の言葉をかけていただきました。「副ゼミ長」の仕事を通して、自分から主体的に行動する姿勢が身に付きました。【得られた結果の具体例】
初めに副ゼミ長に立候補した、という主張(言いたいこと)を伝え、それから理由と具体例の2つで掘り下げた文脈です。ビジネスの世界では、すべてではありませんが、結論ファーストと覚えておくといいでしょう。まずは訊かれた質問に対する答え(主張)を述べます。そこから理由や具体例(エビデンス)を説明するといいでしょう。
もうひとつES作成で留意したいことに、全体のバランスがあります。
このバランスとは文章量のことではなく、質問に対する回答の内容のことです。ESは言えることや言いたいことを書き上げればいいものではありません。あなたが作成したESを読んだ人があなたをどんな人物としてイメージできるか、ということが重要なのです。
例えば、
- 個人プレーのエピソードとチームプレーのエピソードのバランス
- 行動したことと考えたことのバランス
- 成功体験だけではなく、失敗体験(と、それを乗り越えた経験)も書かれているか
などES全体のバランスに留意が必要なのです。
前述したように企業側は、あなたがどういう人物か、どんな考えを持っているのかという内面を知りたいという目的があります。そして、あなたが会社に合う人物かどうか、社風や組織文化に適応できるかどうか、を確認したいのですから、あなたのESを読んだ人が抱く人物像が評価につながることをしっかり認識して作成に取り組むことが大切です。
あなたの「学生時代に最も力を入れたこと」が個プレーの内容だったとしたら、他の質問では、ゼミやサークルでのチームプレーにフォーカスした内容を書くようにすることです。
最後にES作成においては、どれだけ真摯に心をこめて書き上げたのか試されている、と心得ておくと自然とあなたらしいESが書きあがると思います。