就活においても戦略を立てることが推奨されます。またさまざまな戦術がメディアでも紹介がされています。そのなかで一つ注目したことがありましたのでご紹介します。
ズバリ「自分のやりたいことのために会社/組織を利用する」旨の話です。なんだか自己中心的なエゴイストの響きにも感じるでしょうか。実はそうではないのです。
あるインターン学生のケースを紹介します。
この学生は、書籍編集の仕事に積極的で、さまざま書籍のライティングや進捗管理に関わっていました。その学生が「あなたのモチベーションはどこにあるか」と尋ねられたときに次のように答えたのでした。
“自分位も出したい本がある。そのためには、編集の仕事を手伝って、自分もスキルアップしなければならないし、うちの会社の編集部を盛り上げなきゃいけない。そして、自分の本を出すときには、会社のみんなにも手伝ってもらいたいから、みんなの仕事を手伝っています。”
つまり、自分のやりたいことを実現させるために、会社のことを盛り上げよう、という考えがあって、積極的に会社のために頑張ろう、という主体性が生まれているということです。その後、この学生は晴れて就活を成功させました。
人間の特性として、自分の欲望や願望をかなえるために生きる自己中心的な側面を誰もが持っていると思います。もちろん、利他の心が軸となった他者貢献的なものもたくさんありますが、それだって、「私の願い」であり「自分の欲望」の一種でもあるのです。
そこで皆さんに知ってほしいのは、願いや欲望には健全性が求められることです。そのベースに私利私欲の追求があるのか、他者への貢献や幸福があるのか、ということです。
ベースが後者であると、人は努力をします。上手くいかないこともあるでしょうが、そこで諦めることなく、創意工夫をして知恵を出します。人類の歴史をたどると、一つの知恵が文化にまで発展することさえ起きるのです。
自己中心的なエゴイストと会社のために何かしたいというモチベーションを高めることは、その欲求のベースによっては矛盾ではなくなるのです。
会社が良くなり発展することは、自分のやりたいことにつながり、目的に合致することを見出すことができれば、自分のためと会社のためは、イコールとなり主体的な意思決定で職務遂行ができるのです。そして、この感覚を持っている人は自分と会社の距離感が密接であるため「うちの会社」と捉え、それに沿った言動が見られます。
最近の新卒採用における面接では、こういった人間理解に基づく質問を訊ねて、学生の資質を把握しようとする傾向が多くみられるようになったと感じています。
「組織は社会の道具である」というドラッカー先生の教えがあります。この教えを真摯に受け止めると、自分の成長や幸福のために組織という道具をどう活用すればいいだろうか? こんな問いを持つことができます。
その問いを考え続け、行動するからこそ、なりたい自分に近づくことを実感できる職業人生活が創造できるのではないかと考えるのです。このようなことを踏まえると、自己分析はより深く自己理解をするために取り組むことが大事であることをわかっていただけると思います。