私は、その人の「特徴」と表現しているのですが、人事業界でよく使われる概念に「コンピテンシー」という言葉があります。元々は、学歴や資格、スキル、知識レベルなどが同等の外交官に、業績の差がなぜ出るのかをハーバード大学心理学科のマクレランド教授が研究したことがきっかけとして生まれたものとのことです。
コンピテンシーには「能力」という意味もありますが、人事業界では高い業績を修めている従業員に共通して見られる「行動特性」を指す表現として使われています。
コンピテンシーとは、その人がどんな場面で、どういう行動を取りがちか、という固有の行動パターンだと理解するといいでしょう。
人が持つスキル・特性は下図のような捉え方をします。
- テクニカルスキル:業界・職種の専門能力やスキル
- ポータブルスキル:どの仕事でも共通して発揮されるスキル
- 対人力 人に対しるコミュニケーション能力
- 対自分力 行動や考え方のセルフコントロール能力
- 対課題力 課題や仕事への処理対応能力
- スタンス:物事に対する姿勢や志向
- ポテンシャル:そもそも持っている知識基礎能力や性格・個性
図の下段にあるものが上段にあるスキル・能力を支えるイメージです。コンピテンシーは図のポテンシャルとスタンスの領域にあると考えられます。
人事業界で活用されている理由としては、相手のコンピテンシーを理解することで、その人の「将来の行動を予想」することができると考えられていることにあります。これは、人は似たような場面(状況・環境)で同じ行動を繰り返しがちであるという研究結果がそのベースとなっています。
ビジネスの現場で人を見極める際には、5~7個のコンピテンシーを扱うことが一般的と言われています。また、コンピテンシーを理解する際には、⑴「意見」ではなく「事実」を聞くこと。⑵結果に至った背景と、行動を振り下げること。が大切です。
コンピテンシーのなかでも重要とされているのが、下図の上段にある「成果思考」、「戦略思考」、「変革志向」です。
成果志向:目標を課せられたときの行動特性
- 低レベルの人は「難しいと辞めてしまう」
- 中レベルの人は「絶対にやり遂げ、目標は何とか達成しようとする」
- 高レベルの人は「目標は越えることが当たり前で、そのための動きが早期から逆算でき、目標声の結果を繰り返すことに価値を考える」
- 資質を段階で仕分けして評価することができる。
戦略志向:現場で重要視されるコンピテンシー
- 低レベルの人は「自部門の戦略を立てることはできる」
- 中レベルの人は「自社全体の戦略を策定できる」
- 高レベルの人は「業界や産業全体の戦略を立てられる」
- 具体的な中身の高度差、綿密さを探っていく。
- EX.ビジョン達成のためにどんな抱負を取るのか? 他の人たちと違うやり方をするのか? 独自の道を見出すのか? 競争上の差別化要因をどうやって作っていくのか?
変革志向:物事を変えてゆく行動特性
- 現状打破のために何をすべきか?
- 変化の方向性はどのようなものであるべきか?
- どうすれば、人々が熱狂して変革に取り組めるか?
上述をしたが、相手のコンピテンシーを見極めるときに大切なことは、相手の話の聴き方にあります。一つは相手の意見」ではなく「事実」を聴くこと。事実のなかでさらに深く掘る点としては、その結果に至った背景と、どのような行動を取ったのかをしっかり傾聴することです。特に採用面接の担当者の間では「エピソード・ベースのインタビュー」として広く認知されています。
例えば、「その時、あなたはどのようにして問題を解決しましたか?」といった質問をすることです。この問に対して「仲間と協力して人間関係で問題解決した」といった回答だったなら「協力」「協働」「チーム」関係のコンピテンシーにつながりそうだと考えてさらに話を深掘りしていきます。あるいは違った視点の「計画を見直して根本的に再発を防いだ」といった回答なら、「戦略」「変革」のコンピテンシーが高そうと見立て面接を展開していくのです。
例えば応募者から「サークルの部長と合わなかった…」という話が出たときに「そうでしたか」と返答する面接官はあなたのコンピテンシーに関心を持っていないか、そういうことに無知であるか、です。コンピテンシーを理解した上で自社にとって資質ある人材を採用しようとしている人事担当者であれば、すかさず「あなたはその時、何をしたの?」と行動にフォーカスした質問をするのです。どんな行動をしたか、はその人のコンピテンシーを知る有益な情報であることを理解しているのです。
ちなみに就活で活用するには、自分のコンピテンシーを探すだけでなく、志望する職能で成果をあげる行動の元となる資質や動機、価値観などの要素を把握することが大切です。
下表のように、汎用的に活用できるものが公開されています。就活における自己分析で差別化を考えるのであれば、自分のコンピテンシーを把握することを強くお勧めします。あなたの強みや適している職能を知る手掛かりにもなるものです。