「3年後のチーム」を15分で言葉にする——理想像のワーク

「どんなチームにしたいか」を、言葉にしたことはあるだろうか。

こんにちは、あなたとあなたの組織の未来を共に創造し、組織の活性化を支援している【あおラボ】です。

「どんなチームにしたいですか」。そう聞かれて、すぐに答えられるリーダーは、意外と少ない。

「風通しのいい職場にしたい」「助け合えるチームにしたい」。思いはある。けれど、それを言葉として整理したことはない。そういう状態のリーダーがほとんどではないだろうか。言葉になっていない思いは、メンバーには届かない。思いがないのではなく、言葉がないのだ。

前回(10月5日)は、チームの今を確かめる7つのチェックポイントをお届けした。現在地が見えたら、次は目的地である。今日は、3年後のチームの理想像を15分で言葉にするワークをお届けする。ノートとペンを用意して、読みながら書いてみてほしい。

Chapter 9 なぜ「言葉にする」ことが大切なのか

理想のチームを頭の中で思い描くだけでは、職場はなかなか変わらない。思い描くことと、言葉にすることの間には、思っている以上に大きな差があるからだ。この章では、ワークに入る前に、なぜ言葉にすることが変化の鍵になるのかを、4つの面から確かめておきたい。

言葉にしていない思いは、伝わらない

「自分の中では、はっきりしている」。そう思っていても、言葉にしていない思いは、他の人には見えない。

リーダーが心の中で「こういうチームにしたい」と思っていても、メンバーにはそれを知る手段がない。すれ違いが起きるとき、その原因は考え方の違いではなく、言葉が足りないことにある場合が多い。「言わなくてもわかるだろう」「わざわざ言うほどのことではない」。そうして言葉にするのを後回しにしているうちに、リーダーとメンバーの間に、少しずつ距離が生まれていく。職場の空気が変わらない理由の1つは、ここにあるのかもしれない。

まずは、リーダーであるあなた自身が、自分の思いを言葉にすることから始めてほしい。伝えるのは、その後でいい。言葉にすること自体が、最初の変化になる。

「なんとなく良い職場」では、動けない

「風通しのいい職場にしたい」。この言葉は、間違っていない。けれど、この言葉だけでは、明日何をすればいいかがわからない。

風通しのいい職場とは、具体的にどんな場面が起きている状態だろうか。メンバーが困ったことを、その日のうちに口にできる。ミーティングで、若手も自分の意見を言える。誰かが忙しいとき、自然に手が伸びる。こうして場面として言葉にしたとき、はじめて「では、何をすればいいか」が見えてくる。抽象的な理想を、目に浮かぶ場面に置き換える。それが、今日のワークの目的だ。言葉が具体的になるほど、行動の輪郭もはっきりしていく。

あなたが思う「良いチーム」を、1つの場面として書き出してみてほしい。「〜な職場」ではなく「〜という場面が起きている」という形で書くのがコツだ。

書きながら、リーダー自身が整っていく

理想を言葉にする作業は、メンバーに伝えるためだけのものではない。リーダー自身の頭が整う、という大きな意味がある。

書きながら、はっとした経験はないだろうか。頭の中でぼんやりしていたものが、文字にした瞬間に輪郭を持ち始める。「そうか、自分はこういうチームにしたかったのか」。この気づきは、書いてみなければ得られない。そして気づきが生まれると、日々の判断が変わる。迷ったときに立ち返る場所ができるからだ。言葉にするワークは、プレゼンの準備ではない。リーダー自身の考えを整えるための時間である。

今日のワークは、誰かに見せることを前提にせず、自分のために書いてほしい。うまく書こうとしなくていい。思ったことを、そのまま書いてほしい。

完成させるより、書き始める

「言葉にする」と聞くと、きちんとした文章にしなければ、と構えてしまうリーダーもいる。その必要はない。

箇条書きでも、単語の羅列でもかまわない。大切なのは、まず書き始めることだ。最初の1行が書けたら、次の行は意外と続く。ワークに使う時間は15分で十分である。15分で書いたものは、この先、何度も書き直していくことになる。最初から完璧を求めると、書き始めることさえできなくなってしまう。今日書くのは完成品ではなく、たたき台だ。たたき台があるから、直すことができる。

タイマーを15分にセットしてから、次の章に進んでほしい。時間を区切ると、迷う時間が減り、手が動きやすくなる。途中で手が止まっても、時間いっぱいまでペンは置かないでほしい。

Chapter 10 15分でできる理想像の言語化ワーク

準備するものは、ノートとペンだけだ。パソコンやスマホのメモでもかまわない。ここから、4つの問いに順番に答えていく。1つの問いに使う時間は、3〜4分が目安である。考え込まず、浮かんだことをそのまま書いてほしい。

問い① 「3年後、このチームではどんな場面が当たり前になっているか」

最初の問いは、「3年後、このチームでは、どんな場面が当たり前になっているか」である。

ここで書いてほしいのは、目標の数字ではなく、場面だ。メンバーが、問題の芽を自分から報告してくる。ミーティングで、新しいアイデアが出てくる。困っているメンバーに、誰かが「手伝おうか」と声をかけている。こうした場面を、できるだけ具体的に書き出していく。書きにくければ、逆から考えてもいい。「今のチームに何があれば、もっと良くなるか」。その答えの中に、3年後の場面が隠れている。

場面を3つ以上書き出してほしい。「〜が起きている」という形で書くと、読み返したときに情景が浮かびやすくなる。数が出てこなければ、1つだけでもかまわない。1つ書けば、次の場面も浮かびやすくなる。

問い② 「そのとき、メンバーはどんな表情をしているか」

2つ目の問いは、理想のチームが実現したとき、メンバーがどんな表情で働いているか、である。

目が生き生きしている。ときどき笑い声が聞こえる。忙しくても、どこか充実した顔をしている。感覚的な言葉でかまわない。人は、数字の目標よりも、人の表情のほうをずっと鮮明に思い浮かべることができる。そして、表情のイメージを言葉にしておくと、日々の判断の基準が変わってくる。「この決め方は、メンバーのあの表情につながるだろうか」。そんな問いが、自然と頭に浮かぶようになるからだ。

できれば、メンバー1人ひとりの顔を思い浮かべながら書いてほしい。名前を出して書いてもかまわない。自分だけのノートなので、遠慮はいらない。浮かんだ表情が明るくなくても、そのまま書いておいてほしい。

問い③ 「そのとき、リーダーであるあなたは何をしているか」

3つ目の問いは、もしかすると、いちばん大切な問いかもしれない。理想のチームが実現したとき、あなたは何をしているだろうか。

メンバーと一緒に、問題の解き方を考えている。細かな指示を出すのではなく、方向を示すことに時間を使っている。余裕を持って、1人ひとりの話を聞いている。そうした姿を書き出してほしい。この問いに答えると、今の自分に足りないものが見えてくる。理想のチームとは、メンバーの姿だけで描けるものではない。そこにいるリーダーの姿も含めて、はじめて理想像になるのだ。

3年後の自分の姿を、2〜3行で書いてほしい。今の自分との違いに気づいたら、それも書き添えておいてほしい。その違いが、あなたがこれから変えていく場所になる。

問い④ 「ここまでを、一言にまとめると何になるか」

最後の問いは、ここまで書いたことを振り返り、一言にまとめることである。

「ひとりで抱え込まないチーム」「言えてよかったと思える職場」「まず動いてみる文化」。どんな言葉でもかまわない。気の利いた言葉でなくていい。今のチームの現状と、目指したい未来の両方が入っていれば十分だ。この一言は、この先の連載でもう一度使う場面がある。月の後半には、チームのメンバーと一緒に「合言葉」をつくるワークをお届けする予定だ。今日の一言は、そのときの大切な下書きになる。

候補を2つか3つ書いて、その中から1つに丸をつけてほしい。迷ったら、声に出して読んでみて、しっくりくるほうを選んでほしい。口にしやすい言葉ほど、チームの中で長く使われていく。

Chapter 11 言葉にした理想を、メンバーに届ける

書いた理想は、次はメンバーに届ける番である。ただし、届け方には少しだけコツがある。大げさにしないこと、反応を急がないこと、完成品として扱わないこと。この章では、書いた言葉を無理なく届けるための4つのポイントをお伝えしたい。

「正式な発表」にしなくていい

理想をメンバーに伝えるとき、会議室で改まって発表する必要はない。

朝礼で2〜3分だけ話す。1on1で「最近、こんなことを考えている」と話してみる。チャットに「こんなチームを目指したいと思っている」と一言書く。それで十分である。大切なのは、「リーダーがこのことを考えている」という事実が伝わることだ。形式を整えようとすると、かえって伝えるのが遅れてしまう。完璧な言葉を待つより、今の言葉で届けるほうが、ずっと意味がある。言葉は、届けてからでも磨くことができる。

今週中に、どの場面で伝えるかを決めてほしい。朝礼、1on1、チャットのどれか1つを選べばいい。話す内容は、今日書いた一言と、それを書いた理由の2つだけで十分だ。

メンバーの反応を、そのまま受け取る

理想を伝えたとき、メンバーの反応はさまざまだ。「いいですね」と言ってくれる人もいれば、ほとんど反応がないこともある。

どちらであっても、まずはそのまま受け取ってほしい。反応が薄いからといって、「なぜ何も言わないんだ」と焦る必要はない。メンバーが「このリーダーは本気だ」と感じ始めるのは、言葉を聞いたときではなく、その後の行動を見たときである。言葉だけでは、まだ半分しか伝わっていない。残りの半分は、これからの毎日で伝えていくものだ。伝えたことを、行動で示し続ける。それが次の一歩になる。

反応が薄くても、がっかりしないでほしい。今日の目標は、「伝えてみた」という事実をつくることである。伝えた日と、そのときの反応を、ノートに書き留めておいてほしい。

理想は「育てていくもの」と考える

今日書いた理想は、完成品ではない。チームが変わっていくにつれて、言葉も変わっていく。

3ヶ月後に読み返したとき、「もっといい言い方がある」と感じるかもしれない。それでいい。理想は一度つくって終わりにするものではなく、育てていくものだからだ。チームの変化に合わせて、言葉も少しずつ深まっていく。むしろ、3ヶ月たっても言葉がまったく変わらないなら、チームの変化を見られていない可能性もある。言葉の変化は、チームの変化の記録でもあるのだ。

今日書いたページは、破らずに残しておいてほしい。日付を書き添えておけば、そのページがチームの変化の出発点を示す記録になる。書き直すときも、前のページは消さずに残してほしい。消さずに重ねていくことに、意味がある。

言葉が出てこないときは、「変えたいこと」から考える

ワークをやってみて、「言葉が出てこない」と感じた人もいるかもしれない。それは珍しいことではない。ふだんから思いを言葉にする習慣がなければ、最初は誰でも難しい。

そんなときは、逆から考えてみてほしい。今のチームで、いちばん変えたいことを1つだけ書く。「報告が遅い」「会議で誰も話さない」。変えたいことの裏側には、必ず理想がある。報告が遅いことを変えたいなら、理想は「問題の芽を早く共有できるチーム」かもしれない。変えたいことから逆算して、理想を言葉にする。これなら、書きやすくなるはずだ。

今日のワークで手が止まった人は、「変えたいこと」を1つ書くところからやり直してほしい。そこから理想を一言にしてみてほしい。変えたいことは、誰でも1つは持っているはずだ。

Chapter 12 書いた言葉を「行動」につなげる

理想を言葉にしただけでは、チームは変わらない。言葉を、毎日の行動につなげて、はじめて意味を持つ。最後の章では、今日書いた言葉を、今週の行動、迷ったときの判断、そしてチームの対話へとつなげていくための方法を、4つお伝えする。

理想から、今週の行動を1つ決める

書いた理想を見ながら、「今週、1つだけできることは何か」を考えてほしい。

「メンバーが話しかけやすいチーム」が理想なら、今週の行動は「毎朝、誰か1人に自分から声をかける」かもしれない。「助け合えるチーム」が理想なら、「困っていそうなメンバーに、自分から手を貸す」かもしれない。理想と行動を結びつけると、言葉は飾りではなく、動くための指針になる。理想が大きくても、行動は小さくていい。小さな行動が積み重なって、理想に近づいていくのだ。

理想の一言の下に、「今週の行動」を1つ書き足してほしい。できれば、曜日と場面まで決めておいてほしい。決めた行動は、手帳にも書き写しておいてほしい。週の終わりに、できたかどうかを振り返ってほしい。

迷ったときに、書いた言葉に立ち返る

一度言葉にしたことは、リーダー自身に責任を生む。けれど、それは重荷ではなく、むしろ支えになる。

「こんなチームにしたい」と書いたなら、その言葉に沿って行動しようという意識が生まれる。忙しいとき、判断に迷ったとき、つい楽なほうを選びたくなることがある。そんなときに、書いた言葉が軸になる。「今の判断は、書いた理想に沿っているだろうか」。この問いを持てるかどうかで、リーダーの行動の一貫性が変わってくる。一貫した行動は、メンバーからの信頼につながっていく。

書いたページに、しおりをはさんでおいてほしい。迷ったときに、すぐ開けるようにしておくためだ。スマホで写真に撮っておくのもいい。外出先でも見返せるようにしておくと、判断に迷う場面で役に立つ。

月に1度、理想を書き直す

今日の15分のワークは、一度きりで終わらせないでほしい。月に1度、同じ問いで書き直す時間を取ってほしい。

書き直すたびに、言葉は少しずつ洗練されていく。「先月の言葉と比べて、何が変わったか」。その違いに気づくことが、チームの変化を映す鏡になる。先月は「話しやすいチーム」と書いていたのが、今月は「問題を早く共有できるチーム」になっているかもしれない。言葉が具体的になっているなら、それはリーダーの目が深まった証拠だ。言葉にすることは、チームの成長とともに深めていくものなのだ。

来月の同じ日に、「理想の書き直し」を予定として入れておいてほしい。15分あれば十分である。書き直したら、先月の言葉と並べて読み比べてほしい。

やがて、チームと一緒に理想を描く

今日は、リーダーがひとりで書くワークをお届けした。けれど、チームの状態が整ってきたら、メンバーと一緒に理想を描く段階へ進むことができる。

「どんなチームにしたいか」をメンバー同士で語り合う場は、チームの一体感を強める大きな機会になる。この連載でも、月の後半にチームの合言葉をつくるワークをお届けする予定だ。その場を実りのあるものにするためには、まずリーダー自身の言葉が必要になる。リーダーの言葉があって、はじめてメンバーの言葉も引き出されるからだ。今日のワークは、その準備でもある。

今日書いた一言を、合言葉づくりの日まで大切に取っておいてほしい。その日に向けて、少しずつ言葉を磨いておいてほしい。メンバーの言葉と重ねたとき、きっと新しい発見がある。

今日のまとめ

「どんなチームにしたいか」は、言葉にしなければメンバーに届かない。思いがないのではなく、言葉がないだけのことが多い。

言葉にするときは、「〜な職場」ではなく「〜という場面が起きている」と書く。場面として書くと、何をすればいいかが見えてくる。

15分のワークでは、4つの問いに答える。3年後に当たり前になっている場面、そのときのメンバーの表情、そのときのリーダーの姿、そして全体を一言にまとめた言葉だ。

書いた理想は、大げさにせず、朝礼や1on1で届けてほしい。反応を急がず、行動で示し続けることが大切である。そして、今週の行動を1つ決めてほしい。

次回(10月12日)からは、目に見える環境を整える段階に入る。最初は、チームで5Sを始めるための最初の1歩をお届けする。一緒に見ていきたい。

言葉にすることから、チームの変化は始まると、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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