資格を増やしても、強みは増えない
こんにちは、あなたらしく輝ける未来を共に創造して、キャリア形成や就活の支援をおこなっている【あおラボ】です。
昨日は、できることと強みが別のものだと書いた。20個のうち、4つは書けただろうか。
今日はその続きになる。多くの学生が混同している、もう1つの言葉を扱いたい。スキルだ。
「就活のために何か資格を取ったほうがいいですか」。この質問を、毎年何十回と受ける。気持ちはよくわかる。何か持っていれば安心できるからだ。けれど、答えは少し複雑になる。今日はその理由を、丁寧に書いていきたい。
Chapter 5 スキルと強みは、別のもの
まずは、スキルという言葉を明確にしておきたい。スキルは悪いものではない。ただ、強みとは性質がちがう。この違いを知らないまま就活を進めると、努力の方向がずれてしまう。この章では、4つの角度から確かめていく。
5-1 資格を取っても、強みにはならない
秋になると、資格の勉強を始める学生が増える。簿記、TOEIC、パソコン関係。どれも意味のある勉強だ。
けれど、ここで確かめておきたいことがある。その資格は、あなたを説明してくれるだろうか。たとえばTOEICで高い点を取ったとする。面接官に伝わるのは「英語ができる」という事実だけだ。あなたがどういう人間かは、まだ何も伝わっていない。しかも、同じ点数を持つ学生は何千人もいる。区別がつかないのだ。資格は、条件を満たすためには役立つ。けれど、選ばれる理由にはなりにくい。ここを取りちがえると、秋の貴重な時間を使いどころのちがう場所に投じてしまう。
資格の勉強を、自己分析の代わりにしないでほしい。順番を逆にすると、遠回りになってしまう。
5-2 スキルは、あとから身につく
スキルのいちばんの特徴は、学べば身につくことだ。これは利点でもあり、同時に弱点でもある。
会計の知識も、プログラミングも、語学も、時間をかければ誰でも一定の水準まで到達できる。だから企業は、スキルについてはそれほど心配していない。入社後に教えればよいからだ。実際、新入社員研修で多くの企業が業務に必要な知識を教えている。むしろ企業が知りたいのは、教えたことを吸収して伸びる人かどうかである。それは、スキルの有無ではわからない。どう考え、どう動く人なのかを見ないとわからない。だから面接では、経験の過程を聞かれるのだ。
いま持っているスキルの数を、気にしないでほしい。企業が見ているのは、その手前にあるものだ。
5-3 スキルは、環境が変わると価値が変わる
もう1つ、知っておいてほしい性質がある。スキルの価値は、置かれた場所によって変わる。
ある業界では重宝される知識が、別の業界ではまったく使われないことがある。技術の移り変わりが速い分野では、数年で古くなるものもある。転職したとたんに使えなくなるスキルも珍しくない。これは、スキルが「外から与えられた道具」だからだ。道具は、使う場所が変われば必要なくなることがある。昨日、持ち運べるかどうかが判断基準になると書いた。スキルは、持ち運べるとは限らない。ここが、強みとの決定的なちがいになる。
その力が、別の場所でも使えるかを考えてみてほしい。使えないものは、土台にはならない。土台は、どこへ行っても崩れないものでつくりたい。
5-4 それでも、スキルが無駄なわけではない
ここまで読むと、スキルを否定しているように聞こえるかもしれない。そうではないので、はっきりさせておきたい。
スキルは必要だ。仕事は、具体的な作業の積み重ねでできている。知識がなければ、任される仕事の幅は広がらない。問題は、順番である。強みがわからないままスキルだけを増やすと、どこで使うのかがわからない道具が増えていく。逆に、強みがはっきりしていれば、その強みを活かすために必要なスキルが見えてくる。学ぶ対象が絞れるのだ。だから、今月は強みを先に掘る。スキルを磨くのは、そのあとでいい。
スキルを否定せず、順番を変えてほしい。強みが決まると、学ぶべきものも決まってくる。学ぶ対象が絞れると、時間の使い方も変わる。

Chapter 6 コンピテンシーという考え方
では、強みのほうは何と呼べばいいのか。人材育成の世界には、これを指す言葉がある。コンピテンシーという。聞き慣れないと思うが、中身はむずかしくない。この章で、4つに分けて説明していきたい。
6-1 どんな状況でも、一定以上の成果を出せる型
コンピテンシーとは、どんな状況でも一定以上の成果を出せる思考と行動のパターンのことだ。
少し硬い言い方になったので、かみくだきたい。大事なのは「どんな状況でも」という部分である。うまくいったときだけ出るものは、コンピテンシーとは呼ばない。条件が悪いときにも、それなりの結果を出せる。その安定感を指している。たとえば「相手の話を整理して返せる」という型を持っている人は、相手が誰であっても、話が複雑でも、ある程度は整理できる。場面が変わっても崩れない。この再現性が、企業が知りたがっているものだ。
自分の経験の中で、条件が悪くても出せた力を探してほしい。安定して出るものが、あなたの型になる。うまくいったときだけの力は、まだ型ではない。
6-2 「状況を自分でつくれる」という特徴
コンピテンシーが高い人には、共通する特徴がある。人材育成の現場で長く見てきて、はっきり感じていることだ。
それは、スキルの多さではない。自分の強みが発揮されやすい状況を、自らつくり出せることである。たとえば「人の話を引き出す」という型を持つ人は、会議でも面談でも、自然と相手が話しやすい空気をつくる。意識してやっているというより、そうなってしまう。だから、どの職場に行っても同じことが起きる。ここが、道具としてのスキルとの大きなちがいだ。スキルは使う場面を選ぶが、コンピテンシーは場面そのものをつくる。
自分が場をつくってしまった経験を、思い出してほしい。意図せず流れが変わったなら、そこに型がある。狙ってやっていないことほど、根が深い。
6-3 意識してできる、から無意識にできる、へ
コンピテンシーには、深さの段階がある。ここを知っておくと、これからの伸ばし方が見えてくる。
最初は、意識すればできる段階だ。「今日は相手の話を最後まで聞こう」と決めて実行する。次に、慣れてくると考えずにできるようになる。ここまで来ると、疲れなくなる。さらに進むと、その型を使って人を助けられるようになる。就活の時点では、多くの学生が1つ目か2つ目の段階にいる。それで十分だ。大事なのは、自分がどの型を持っているかを知ることである。深さは、働きながら育てていけばいい。
今は深さより、種類を知ることに集中してほしい。どの型を持っているかが、先の選択を決めていく。深さは、働きながらいくらでも育てられる。今は、知ることが先だ。
6-4 学生にも、すでにある
「コンピテンシーは、社会人が持つものではないですか」。そう聞かれることがある。そんなことはない。
コンピテンシーは、仕事を始めてから急に生まれるものではない。これまでの生活の中で、少しずつ形づくられてきたものだ。だから学生にも、すでにある。アルバイトでも、サークルでも、ゼミでも、あなたは何らかの型で動いてきた。その型が、仕事の場に移るだけである。実際、採用の現場で見てきた限り、学生時代の動き方と入社後の動き方は驚くほど似ている。だから企業は、学生時代の経験を聞くのだ。未来を予測する材料として使っている。
これまでの自分の動き方を、材料として見てほしい。社会人になってから探すものではない。すでにあるものを、言葉にしていくだけである。
Chapter 7 スキルとコンピテンシー、見分け方
違いはわかっても、実際に自分の経験を分けるとなると迷う。この章では、見分けるための3つの問いと、両方をどう扱うかを書いておく。集めた材料を整理するときに、使ってほしい。
7-1 教わって身につくか、で分ける
いちばん簡単な見分け方が、これだ。教われば身につくものかどうかを考えてみる。
エクセルの操作は、教われば身につく。会計の知識も、教科書がある。だからスキルだ。一方、「相手が言いたいことを察する」「場の空気を読んで動く」といったものは、教科書を読んでもすぐには身につかない。これはコンピテンシーの側になる。この見分け方は、集めた材料を分けるときにすぐ使える。書き出した20個を見て、「これは習えば誰でもできる」と思うものはスキル、「習ってもすぐにはできない」と思うものは型のほうだ。
書き出した経験を、この問いで分けてみてほしい。2つに分けるだけで、見え方が変わってくる。どちらが多いかも、あわせて見ておこう。
7-2 場所が変わっても持ち運べるか
2つ目の問いは、昨日も触れた基準になる。別の環境に移したときに、ついてくるかどうかだ。
飲食店のアルバイトで覚えた接客用語は、その店を辞めれば使わなくなる。これはスキルだ。一方、同じアルバイトで身についた「忙しいときほど優先順位をつける」という動き方は、どこへ行っても使える。ゼミでも、就職してからも出てくる。こちらが型になる。同じ経験の中に、スキルとコンピテンシーが両方含まれていることも多い。だから、経験ごとに「持ち運べる部分はどこか」を考えてみるといい。そこを抜き出せば、そのまま材料になる。
1つの経験から、持ち運べる部分だけを抜き出してほしい。それが、あなたの型の候補になる。1つの経験に、両方が混ざっていることも多い。
7-3 履歴書に書けるか、面接で語れるか
3つ目は、就活の場面に即した見分け方だ。どこに書くものかで考えてみる。
スキルは、履歴書の資格欄に書けるものが多い。短く、事実として書ける。一方、コンピテンシーは資格欄には書けない。代わりに、エントリーシートの本文と面接で語ることになる。なぜなら、経験の中身を説明しないと伝わらないからだ。8月の連載で、事実に意図と変化を足すと書いた。あの形で語れるものが、コンピテンシーだと考えてほしい。逆に、事実を言うだけで終わってしまうものは、たいていスキルの側にある。
「これは語れるか、書いて終わりか」で分けてみてほしい。語れるもののほうに、時間をかける価値がある。面接で問われるのは、いつもそちらだ。書いて終わるものに、深掘りは来ない。
7-4 両方ある人が、いちばん強い
最後に、誤解のないように書いておきたい。どちらかを選ぶ話ではない。
理想は、型がはっきりしていて、それを活かすスキルも持っている状態だ。たとえば「人の話を整理する」という型を持つ人が、資料作成の技術を身につければ、その型はさらに活きる。順番としては、型が先、スキルが後になる。型が決まると、必要なスキルが見えてくるからだ。逆にスキルから入ると、何のために学ぶのかがわからないまま資格が増えていく。今月は型を掘る。スキルは、冬から春にかけて、必要なものを絞って学べばいい。
型を先に掘り、スキルはあとから足してほしい。この順番が、いちばん無駄がない。どちらか一方でなく、両方を持つ人がいちばん強い。冬からでも、スキルは十分に間に合う。

Chapter 8 集める作業を、一段深くする
今日の話を、今日の作業につなげたい。この章では、昨日から始めた「集める」作業を、もう一段深くする方法をお伝えする。やることは増えないので、安心してほしい。
8-1 昨日の4つを、見直してみる
まず、昨日書いた4つを開いてほしい。捨てる必要はない。見る角度を変えるだけでいい。
右の欄に、自分が何をしたかを動詞で書いてもらった。そこを見て、「これは習えば誰でもできることか」と問うてみる。もし「レジを打った」と書いてあるなら、それはスキルに近い。けれど、その日に何が起きていたかを思い出すと、別のものが見えてくることがある。「混んでいたので、並んでいる人に先に声をかけた」。これは習ったことではない。自分で判断して動いている。同じ経験でも、書き方ひとつで材料の質が変わるのだ。
昨日の4つを、もう一度見てほしい。書き換えなくていい。1行足すだけでいい。同じ経験でも、書き方ひとつで材料の質は変わる。
8-2 スキルの話になっていないか
書き出したものを眺めると、スキルの話ばかりになっていることがある。これはよくあることだ。
「エクセルを覚えた」「敬語を使えるようになった」「レジ操作に慣れた」。こうした項目が並んでいたら、少し掘り方を変えたい。そのスキルを身につける過程で、自分はどう動いたのかを思い出す。誰かに聞いたのか、自分で調べたのか、何度も練習したのか。そこに型が出ている。「わからないことは人に聞く」も立派な型だ。実際、これができる新入社員は、できない人より早く伸びていく。スキルそのものではなく、身につけた過程を見てほしい。
スキルが並んでいたら、身につけた過程を書き足してほしい。過程のほうに、あなたが出ている。「わからないことは人に聞く」も、立派な型の1つだ。
8-3 「そのとき、どう動いたか」を足す
今日から、書き方に1つだけ足してほしいことがある。動き方の記録だ。
左に場面、右に自分がしたこと。ここまでは昨日と同じでいい。そこに、もう1行だけ足す。「そのとき、自分はどう動いたか」。たとえば「文化祭の準備/役割分担を決めた/まず全員の予定を聞いてから割り振った」。この3行目に、型が出る。同じ「決めた」でも、人によって動き方はちがう。先に相談する人もいれば、案を出してから意見を聞く人もいる。このちがいが、あなたの型そのものになる。
今日からは、3行目を足して書いてほしい。1行増やすだけで、材料が使えるものに変わる。同じ「決めた」でも、人によって動き方はちがう。そのちがいが、あなたそのものになる。手間は、ほとんど増えない。
8-4 明日は、3つの円を扱う
最後に、明日の予告をしておきたい。今日までの話が、明日きれいに整理される。
明日扱うのは、人の性質を3つの円で捉える考え方だ。中心に価値観があり、その外側にコンピテンシーがあり、いちばん外側にスキルがある。この図を知ると、今日の話が1枚の絵として見えてくる。しかも、自己分析でどこを掘るべきかがはっきりする。この考え方を示したのは、ある著名なマーケターの方だ。その方が、就職に悩む娘さんに向けて書いた本の中で紹介している。明日は、そこから始めたい。
今日の分の材料を、忘れずに書いておいてほしい。明日は、それを整理する話になる。手元に材料があるかどうかで、読んだときの深さが変わる。今日も4つ、書き足しておこう。
今日のまとめ
資格を増やしても、強みは増えない。資格が伝えるのは事実だけで、あなたがどういう人間かは伝わらない。条件を満たすには役立つが、選ばれる理由にはなりにくい。
スキルには、はっきりした性質がある。学べば身につく。だから企業は、入社後に教えればよいと考えている。そして、置かれた場所が変われば価値も変わる。持ち運べるとは限らない。
一方、コンピテンシーとは、どんな状況でも一定以上の成果を出せる思考と行動のパターンのことだ。条件が悪いときにも出せる安定感を指している。しかも、自分の強みが発揮される状況を自らつくり出せるという特徴がある。
見分け方は3つ。教われば身につくか。場所が変わっても持ち運べるか。そして、語れるか書いて終わりか。どちらか一方を選ぶ話ではなく、型が先、スキルが後という順番の問題である。
今日から、書き方に1行足してほしい。場面、自分がしたこと、そして「そのとき、どう動いたか」。この3行目に、あなたの型が出る。
明日は、人の性質を3つの円で捉える考え方を扱う。価値観、コンピテンシー、スキル。この図を知ると、掘るべき場所がはっきりする。一緒に見ていこう。
スキルは道具であり、コンピテンシーは持ち主のものだと、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。