就活には、勝ち筋がある
こんにちは、あなたらしく輝ける未来を共に創造して、キャリア形成や就活の支援をおこなっている【あおラボ】です。
先週まで「志望企業で活躍できる力」を八つの要素に分けて見てきた。読んでくれた人は、ありがとう。
でも、あの連載には、意図的に書かなかったことがある。八つの力を「なんのために」育てるのか、という部分だ。
私は、就活には勝ち筋があると考えている。そして、その勝ち筋の一番目に置くべきものは、面接対策でも企業研究でもない。「自分は、どんな人生を生きたいのか」という、たった一つの問いだ。今日から五日間、そこを一緒に考えていく。
Chapter 1 なぜ「勝ち筋」という言い方をするのか
就活を、運や相性だけの世界だと思っている人がいる。でも、私はそう思わない。うまくいく人には、共通した進め方がある。この章では、その「勝ち筋」とは何かを、はっきりさせておこう。ここが腹落ちすると、これから何に時間を使うべきかが、見えてくる。
1-1 勝ち筋とは、「順番」のこと
「勝ち筋」と聞くと、必勝法や裏ワザを想像するかもしれない。これをやれば受かる、という魔法の手順のようなものだ。
でも、私の言う勝ち筋は、そういうものではない。順番のことだ。何から手をつけ、何を後回しにするか。その並べ方のことである。同じ努力量でも、順番がちがうだけで、結果は大きく変わる。料理と同じだ。材料が同じでも、入れる順番をまちがえれば、味は変わってしまう。就活も、これによく似ている。だから私は、量よりも順番の話を、いつも先にする。
これから何かを始めるとき、「これは何番目にやることだろう」と、一度考えてみてほしい。順番を意識するだけで、努力の効きがはっきり変わる。焦って手当たりしだいに動く前に、まず並べ方を決めよう。
1-2 テクニックから入ると、行き止まる
多くの学生が、就活の準備をこう始める。まず面接対策の本を買う。エントリーシートの書き方を調べる。自己PRの型を覚える。とても真面目な取り組み方だ。
でも、この順番だと、途中で必ず行き止まる。「あなたはなぜ、この会社を志望するのですか」と聞かれたときに、答えが出てこないからだ。書き方は覚えたのに、書く中身がない。話し方は練習したのに、話す中身がない。テクニックは、中身を運ぶ器でしかない。器を先に磨いても、入れるものがなければ、空のまま出すことになってしまう。
面接対策の本を開く前に、「自分は何を伝えたいのか」を考える時間をとってほしい。中身が先、器は後。この順番だけは、まちがえないでほしい。遠回りに見えて、これがいちばん早い道になる。
1-3 勝ち筋の一番目に置くもの
では、順番の一番目には何を置くのか。ここが、今日いちばん伝えたいところだ。
一番目は、「自分は、どんな人生を生きたいのか」である。就活の話をしているのに、いきなり人生の話かと思うかもしれない。でも、これが出発点になる。なぜなら、どんな人生を生きたいかが見えていないと、どの会社を選ぶかも、なぜその会社なのかも、決めようがないからだ。地図の目的地が決まっていないのに、道順だけを調べているようなものである。目的地が決まれば、道は自然と絞られていく。
「どんな会社に入りたいか」の前に、「どんな人生を生きたいか」を置いてみてほしい。順番を入れかえるだけで、考えやすさが変わる。会社は、その人生を実現するための場所として、後から選べばいい。
1-4 早く始めた人が、確実に有利になる
この問いには、一つだけ、やっかいな性質がある。時間がかかる、ということだ。
私は、大学二年生の晩秋あたりから着手することを勧めている。三年生になってからでは、説明会や選考に追われて、じっくり考える時間がとれないからだ。しかも、この問いは、数回考えれば答えが出るようなものではない。書いては消し、しばらく寝かせ、また書き直す。そういう時間が必要になる。だからこそ、時間に余裕のあるうちに始めた人が、確実に有利になる。これは能力の差ではなく、着手時期の差だ。
一・二年生なら、今日から始められる。三年生でも、今日が、いちばん早く始められる日だ。時間がかかることを知っているだけで、焦らずに向き合える。まずは、始めることだ。

Chapter 2 二度とない人生、という当たり前
「人生は一度きり」。誰もが知っている言葉だ。でも、本気で自覚している人は、意外と少ない。この章では、その当たり前を、あらためて自分の側に引き寄せてみる。ここが動くと、進路の考え方が、根っこから変わってくる。
2-1 「一度きり」を、本気で考えたことがあるか
「人生は一度きりだから、後悔のないように」。よく聞く言葉だ。あまりによく聞くので、聞き流してしまう。
でも、この当たり前を、本気で考えたことがあるだろうか。やり直しはきかない。もう一度、十八歳からやり直すことはできない。今日という日は、二度と来ない。そう考えたとき、「なんとなく選ぶ」ことの重みが、少し変わってくる。多くの人は、この自覚がないまま、進路を決めてしまう。悪いことではない。ただ、あとで「どうしてあのとき考えなかったのか」と思う人を、私は何人も見てきた。
一度でいい。「自分の人生は、これ一回きりだ」と、静かに考えてみてほしい。恐がらせたいのではない。この自覚があるかどうかで、これから先の選び方が、はっきり変わってくるからだ。
2-2 時間は、静かに減っていく
学生のうちは、時間が無限にあるように感じる。夏休みも長いし、卒業までまだ何年もある。そう思えるのは、健やかなことだ。
でも、事実を一つだけ書いておく。仮に八十歳まで生きるとして、二十歳の人には、あと六十年しかない。多いように見えるが、そのうち眠っている時間が約二十年。働く時間が約十年から十五年。自由に使える時間は、思っているより短い。しかも、時間は静かに減る。減っている実感がないまま、減っていく。だからこそ、意識して立ち止まる時間を、自分でつくる必要がある。
一度、紙に自分の人生の年表を書いてみてほしい。今、自分がどのあたりにいるのか。目で見ると、頭で考えるのとは、まるでちがう感覚になる。この作業は、あとで具体的に紹介する。
2-3 なんとなく決めた進路は、なんとなく続く
進路を決めるとき、多くの人が「なんとなく」で決める。親に勧められたから。友だちが受けるから。有名だから。安定していそうだから。
これ自体は、責められることではない。誰でも、情報が少ない中で決めるしかないからだ。でも、覚えておいてほしいことがある。なんとなく決めた進路は、なんとなく続いていく、ということだ。選んだ理由があいまいだと、うまくいかないときに、踏ん張る理由も見つからない。逆に、自分で納得して選んだ人は、つらい時期にも「自分で決めたことだから」と立て直せる。理由の強さが、続ける力になるのだ。
自分の進路を、なぜそう考えているのか。一度、言葉にしてみてほしい。うまく言えなくてもいい。言葉にしようとした時点で、「なんとなく」からは、一歩抜け出している。
2-4 自覚した人から、選び方が変わる
「二度とない人生だ」と自覚すると、人は何が変わるのだろうか。急に立派になるわけでも、志が高くなるわけでもない。
変わるのは、選び方だ。同じ会社説明会に行っても、見るところがちがってくる。「この会社は有名だ」ではなく、「ここで働く自分は、納得できているだろうか」と考えるようになる。バイトの選び方、時間の使い方、人との付き合い方まで、少しずつ変わる。自覚は、目立つ変化を起こさない。でも、日々の小さな選択の質を、静かに上げていく。そして、その積み重ねが、数年後に大きな差になる。
大げさな決意は、いらない。ただ、選ぶ場面で一呼吸おいて、「これは自分が納得している選択か」と問うてほしい。その一呼吸が、あなたの人生の解像度を上げていく。
Chapter 3 なぜ、就活の話なのに「人生」から考えるのか
「就活の記事なのに、人生の話をされても」と感じる人もいるだろう。もっともな反応だと思う。この章では、なぜ人生から考える必要があるのかを、就活の現場に引きつけて説明する。ここがつながると、この五日間が自分ごとになる。
3-1 会社選びは、生き方選びでもある
就職先を選ぶとき、多くの人は、業界や職種、給与や勤務地を見る。もちろん、それらは大事な条件だ。
でも、少し引いて考えてみてほしい。就職するということは、平日の日中という、人生でいちばん元気な時間帯を、その会社で過ごすということだ。二十二歳から六十五歳まで働くとして、四十年以上になる。つまり、会社選びは、条件選びである以上に、生き方選びでもある。どんな人たちと、何のために、どんなふうに時間を使うか。それを決める作業なのだ。そう考えると、条件だけで決めるのは、少しもったいない。
企業を見るとき、条件のとなりに「ここで過ごす自分は、どんな毎日を送るのか」という欄を、心の中につくってほしい。その欄が、あなたの選択を、深いところで支えてくれる。
3-2 志望動機が薄くなる、本当の理由
就活で、多くの学生がつまずくのが志望動機だ。「なぜ、この会社なのですか」と聞かれて、言葉に詰まる。書いても、どこか借りものになる。
原因は、文章力ではない。自分の中に、判断の基準がないことだ。基準がないと、志望動機を「その会社の良いところ」から組み立てるしかなくなる。だから、誰が書いても似た文章になる。逆に、「自分はこういう人生を生きたい。だからこの仕事がしたい」という基準があれば、志望動機は自然と自分だけのものになる。会社の側から書くのではなく、自分の側から書けるようになるのだ。この差は、読む側にはっきり伝わる。
志望動機に悩んだら、会社を調べる前に、自分に問い直してほしい。「自分は、何のために働きたいのか」。ここが定まると、志望動機は、あとから書けるようになる。
3-3 軸があると、迷いが減る
就活が始まると、情報があふれる。あの業界がいい、この会社は成長している、今はこの資格が有利だ。周りの声に、心が揺れる。
そのとき、自分の中に軸がある人は、揺れが小さい。「自分はこういう人生を生きたい」がはっきりしていれば、情報を「自分に必要か、そうでないか」で仕分けできるからだ。逆に軸がないと、すべての情報が気になってしまい、消耗する。就活で疲れきってしまう人の多くは、努力量ではなく、この揺れの大きさで疲れている。軸は、あなたを縛るものではない。むしろ、余計なものから守ってくれる盾になる。
情報に振り回されていると感じたら、自分の軸に戻ってほしい。「これは、自分の生きたい人生に必要か」。この一問で、たいていの迷いは整理できる。
3-4 この軸は、入社後もずっと効く
ここまで就活の話をしてきたが、じつは、この軸がいちばん効いてくるのは、入社した後だ。
社会に出れば、迷う場面がたくさん来る。この仕事を続けるべきか。異動を受けるべきか。転職すべきか。そのたびに、判断が必要になる。そのとき、「自分はどんな人生を生きたいのか」を持っている人は、自分で決められる。持っていない人は、他人の意見や、そのときの気分で決めることになる。就活は、この軸をつくる、最初の大きなきっかけにすぎない。だから、就活のためだけの作業だと思わないでほしい。
今つくる軸は、一生使う道具だと思ってほしい。だから、時間をかける価値がある。就活が終われば捨てるものではなく、その後もずっと、あなたを助け続けてくれる。

Chapter 4 今日から始める、最初の一歩
ここまでで、「なぜ人生から考えるのか」は伝えられたと思う。最後は、実際にどう始めるかだ。この章では、今日からできる具体的な行動を紹介する。むずかしいことは、何もない。まずは、始める形をつくることだけを考えよう。
4-1 始めどきは、大学二年の晩秋
「いつから始めればいいですか」。これは、よく受ける質問だ。私の答えは、はっきりしている。
大学二年生の晩秋あたりから着手してほしい。理由は二つある。一つは、三年生になると選考の情報が入り始め、落ち着いて考える時間がとれなくなること。もう一つは、この問いが、時間をかけないと形にならないからだ。一年生なら、もっと早く始めてもいい。高校生も同じで、進路を考えるこの時期が、そのまま入口になる。逆に、三年生や卒業間近でも遅すぎることはない。ただ、使える時間は少ないので、集中してやることになる。
自分の学年に関係なく、今日を着手日にしてほしい。「そのうち」と思っているうちに、時間だけが過ぎていく。始めた日から、この作業は動き出す。
4-2 ノートを一冊、決める
この作業には、道具がいる。といっても、特別なものではない。ノートを一冊、決めるだけだ。
なぜノートかというと、この問いは、書かないと進まないからだ。頭の中で考えていると、同じところをぐるぐる回って終わってしまう。書くと、考えが外に出る。外に出たものは、見返せる。見返せると、直せる。しかも、一冊にまとめておくと、半年後に読み返したときに、自分の変化が見える。スマホのメモでもいいが、私は紙のノートを勧めている。手で書くほうが、考えが深くなりやすいからだ。
今日、ノートを一冊決めてほしい。新しく買ってもいいし、使いかけでも構わない。表紙に「これから何度も開くノート」と決めるだけで、準備は整う。りっぱなノートである必要は、まったくない。開く回数のほうが、ずっと大事だ。
4-3 人生の時間を、目で見てみる
最初のワークを紹介する。「二度とない人生」を、頭ではなく目で確かめる作業だ。
やり方は簡単だ。ノートを開き、横長のマス目を八十個描く。一マスが一年で、八十歳までを表している。そして、すでに過ごした年数分を、鉛筆で塗りつぶす。二十歳なら二十マス。次に、これから働く時期にあたるマスに、線を引いてみる。すると、自分の人生のどこにいて、どれくらいの時間が残っているかが、一目でわかる。多くの学生が、この作業をした直後に「思ったより短い」と言う。頭ではわかっていたことが、目で見ると、はっきり実感に変わる。
今日か明日のうちに、この八十マスを描いてみてほしい。十分もあれば終わる。そして、塗り終えた紙を、しばらく眺めてみてほしい。この十分が、これからの考察の出発点になる。
4-4 焦らなくていい。でも、始めてほしい
最後に、大事なことを書いておく。この作業は、急がなくていい。むしろ、急ぐと失敗する。
なぜなら、無理に答えを出そうとすると、立派に聞こえる言葉に飛びついてしまうからだ。「社会に貢献したい」「成長し続けたい」。悪くはないが、借りものだと、自分でもわかっている。本当に納得できる言葉は、時間をかけて、少しずつ形になっていく。だから、今日答えが出なくても、まったく問題ない。むしろ、出ないのが普通だ。大事なのは、問いを持ったまま、日々を過ごすことである。問いを持っていると、日常の出来事から、ヒントが拾えるようになる。
答えを急がず、でも、問いは持ち続けてほしい。「自分は、どんな人生を生きたいのか」。この一行を、今日ノートの最初のページに書く。それが、今日の一歩だ。
今日のまとめ
就活には勝ち筋がある。それは必勝法ではなく、準備の「順番」のことだ。同じ努力量でも、順番がちがえば、結果は変わる。
その順番の一番目に置くべきものは、面接対策でも企業研究でもない。「自分は、どんな人生を生きたいのか」という問いだ。目的地が決まらないうちに、道順だけを調べても、たどりつけない。
そして、この問いには時間がかかる。だから、大学二年生の晩秋あたりから着手してほしい。数回考えて答えが出るものではないからこそ、早く始めた人が有利になる。これは能力ではなく、着手時期の差だ。
今日やってほしいことは、二つだけ。ノートを一冊決めること。そして、人生の八十マスを描いて、自分の現在地を目で見ること。それだけでいい。
明日は、「どんな人生を生きたいか」を、実際に言葉にしていく作業に入る。ここで大事なのは、誰かの真似や憧れではなく、自分が心から納得できる言葉にすることだ。その進め方を、一緒に見ていこう。
答えを急がなくていい。でも、問いは今日から持ってほしいと、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。