就職活動が進む中で、こんなモヤモヤを感じていませんか?
「どの会社を選べば自分らしく働けるのか、わからない」
「企業の理念や制度は理解できても、それが自分に合っているかどうかがピンとこない」
「自己分析は進めているけど、最後の決め手が見つからない」
そのような状態にあるなら、もしかすると今必要なのは、スキルや強みを掘り下げることよりも、「自分の価値観」を見つめ直すことかもしれません。
多くの学生が、「働きがいのある仕事」「自分に合った会社」を探そうと情報収集や自己分析に励んでいます。しかし、情報の波にのまれ、自分の判断軸が曖昧なままでは、選考のたびに迷いや不安がつきまとってしまいます。
だからこそ今、立ち止まって問いかけてみてください。
「自分が仕事をするうえで、何を大切にしたいのか?」
「どんなときに、自分は充実感や喜びを感じるのか?」
この記事では、キャリアコンサルタントとしての専門的な視点から、自分の価値観を言語化するためのヒントとやり方をわかりやすくお伝えします。就活生として「選ばれる存在」になることはもちろん、それ以上に「自ら選び取る軸を持った存在」になることを目指していきましょう。
「価値観」とは、自分の人生を動かす“内なるコンパス”
まずはじめに、「価値観とは何か?」について考えてみましょう。
価値観とは、あなたが「大切にしたい」「こうありたい」と思っている信念や考え方のことです。目には見えませんが、私たちの選択や行動の背景には、必ず価値観が影響しています。
たとえば、以下のような感覚を覚えた経験はありませんか?
• 目立たない仕事でも「誰かの支えになっている」と思えたときに、やりがいを感じた
• 自分の提案が採用されて、チームの成果につながった瞬間に、誇らしさを感じた
• 自分の時間を自由に使える働き方に、心地よさを覚えた
こうした感情の動きには、あなたが大切にしている価値観が表れているのです。
キャリア選択においては、スキルや知識よりも、「自分の価値観と企業や仕事の価値観がマッチしているかどうか」が、長く充実して働けるかどうかを左右します。だからこそ、自己理解のなかでも価値観の言語化は非常に重要なプロセスです。
自分の価値観を言語化する5つのヒント
では、どうすれば自分の価値観を言語化できるのでしょうか?
以下に、今日から取り組める5つのヒントをご紹介します。
① 「やりがいを感じた経験」を振り返る
まずは、自分がやりがいを感じた過去の体験を思い出してみてください。部活動、アルバイト、ゼミ活動、ボランティアなど、学生生活の中で心が動いた場面を3〜5つピックアップします。
そして、それぞれの経験について次の3つの視点で深掘りしてみましょう。
1. どんなことに一生懸命になれたか
2. なぜそれに夢中になれたのか
3. どんな気持ちや考えが湧いたか
このプロセスのなかに、あなたが大切にしている価値観が隠れています。たとえば、「相手に感謝されたときにやりがいを感じた」という経験は、「人の役に立ちたい」という価値観の表れです。
② 「モヤモヤした経験」から価値観を逆照射する
意外かもしれませんが、ネガティブな感情の裏にも価値観は宿っています。
たとえば、グループワークで自分の意見がまったく聞き入れてもらえなかった経験にモヤモヤしたなら、そこには「対等な関係でありたい」「互いに尊重し合いたい」という価値観があるかもしれません。
「納得できないこと」「違和感を覚えたこと」には、あなたが本当に大切にしたいものが明確に浮かび上がるヒントがあるのです。
③ 「こんな社会人になりたい」を思い描く
未来の理想像を描くことも、価値観の言語化に役立ちます。
たとえば、次のような問いを自分に投げかけてみてください。
• どんな人と一緒に働きたいか?
• どんな風に仕事に取り組む人になりたいか?
• 周囲からどんな存在だと思われたいか?
このときに描く理想像は、他人の期待ではなく、自分が「本当にそうありたい」と思う姿にしましょう。そこには、「信頼関係」「誠実さ」「挑戦」「成長」「自由」「安定」など、あなたの内面から湧き出る価値観が含まれているはずです。
④ 価値観リストを使って、言語化をサポートする
「言語化が難しい」と感じる人におすすめなのが、価値観リストの活用です。これは、あらかじめ用意された価値観のキーワード一覧から、自分にしっくりくるものを選ぶ方法です。
以下のようなキーワードの中から、特に自分にとって大事だと感じるものを3〜5個選んでみましょう。
| 成長 | 貢献 | 信頼 | 挑戦 | 創造性 | 調和 | 独立 | 安定 | 影響力 | 公正 |
選んだキーワードについて、「なぜ自分はそれを大事にしているのか?」を考えると、あなたらしい言葉で価値観を表現するヒントが見えてきます。
⑤ 他者と対話しながら整理する
価値観は、頭の中で考えているだけでは言語化しにくいものです。だからこそ、他者との対話が大きな助けになります。
就活支援の面談やキャリアカウンセリング、あるいは信頼できる友人との対話を通じて、「自分はこんなことを大事にしたいと思っている」と言葉にしてみることで、考えが整理され、価値観がより明確になります。
また、対話を通じて「それって、○○っていう価値観かもしれないね」と言い換えてもらえると、自分では見えなかった言葉の輪郭がくっきりしてくることもあります。
言語化された価値観は、就活の「判断軸」と「伝える力」を支える
自分の価値観を言語化することには、大きく2つの意味があります。
それは、就職活動を進める上での「判断軸」になること、そして面接やエントリーシートでの「伝える力」になることです。
① 判断軸があると、迷いが減る
就活では、何十社もの企業に出会い、情報も次々と飛び込んできます。どれも魅力的に見える中で、「どの会社がいいのか分からない」「本当にこの選択で良いのか不安」といった迷いが生まれやすいのは当然のことです。
ここで役立つのが、価値観に基づく“判断軸”です。
たとえば、自分の中で「チャレンジ」「スピード感」「裁量権」といった価値観を大切にしたいと明確になっていれば、業務内容や制度、社風などをその視点で見極めることができます。逆に、「安心感」「丁寧な人間関係」「長期的な視点」を大事にしたいと感じる人にとっては、別の環境の方が心地よく働けるかもしれません。
このように、自分の価値観が言語化されていれば、「何を基準に企業を見るか」がはっきりし、選択のブレが少なくなるのです。これは、選考途中での企業選びの精度を高めるだけでなく、内定承諾の判断にも大いに役立ちます。
② 伝える力があると、相手に届く
もうひとつ、価値観の言語化がもたらす大きな効果は、自分の考えを「伝わる言葉」で話せるようになることです。
面接の場面では、「あなたが大切にしていることは?」「なぜその企業を志望するのですか?」「どんな社会人になりたいですか?」といった、価値観に関わる問いが頻繁に登場します。ここで曖昧なままの答えをしてしまうと、表面的な印象になってしまいがちです。
しかし、価値観を言語化できていれば、
• 「私は、相手の立場を尊重しながら信頼関係を築くことを大切にしており、それを活かせるような顧客対応やチーム連携に貢献したいと考えています」
• 「私は、自分の成長と挑戦のプロセスにやりがいを感じるタイプなので、御社の若手にも裁量を与える文化に魅力を感じました」
このように、具体的な価値観と企業の特性とを結びつけて、説得力のある言葉で伝えることができます。
企業側にとっても、「この学生は自分の軸を持っていて、入社後もズレが少ないだろう」という安心感につながりますし、なにより「自分自身をよく理解している人」は、それだけで信頼されやすいのです。
価値観は、“就活に便利な道具”ではなく、あなたの生き方や働き方そのものを支える土台です。だからこそ、言葉にして初めて、自分でも理解し、他者にも伝えられるようになります。
「この企業に入りたい」ではなく、「この企業で、私はこう働きたい」と、自分の言葉で語れるようになること。
それが、企業と真にフィットする出会いにつながり、長く働くうえでの納得感と安心感を生み出してくれるのです。
まとめ:「自分の価値観」に気づくことが、就活成功の第一歩
価値観の言語化は、就職活動を成功させるための強力な武器になります。それは単に内省のためだけでなく、自分に合った企業を見つけ出すためのコンパスとなり、選考の場で自分らしさを伝える力にもなるのです。
本日紹介した5つのヒント──
1. やりがいを感じた経験の振り返り
2. モヤモヤした経験からの逆照射
3. 理想の社会人像の言語化
4. 価値観リストの活用
5. 他者との対話
──これらを活用しながら、少しずつでも自分の「働く軸」を見つけていってください。
自分の価値観に気づくことは、自分自身を深く理解することにつながり、その理解こそが、あなたらしいキャリアの第一歩を照らしてくれます。
焦らず、自分のペースで大丈夫です。
あなたの中にある「大切にしたいもの」に耳を傾けながら、自分らしい未来を選び取っていってください。就活という大きな一歩を、価値ある時間にしていきましょう。あなたの挑戦を、心から応援しています。