5Sは掃除ではない——チームの文化をつくる最初の1歩

「掃除」ではなく、「文化をつくる入口」として始める。

こんにちは、あなたとあなたの組織の未来を共に創造し、組織の活性化を支援している【あおラボ】です。

「5Sなら、うちもやっていますよ」。そう答えるリーダーは多い。けれど、「今も続いていますか」と聞くと、答えが少し変わる。

「最初は全員で取り組んだが、いつの間にかやらなくなった」「担当者が声をかけるだけで、チームとしては動いていない」。5Sが定着しないのは、掃除の活動として始めているからではないだろうか。5Sの本当の役割は、職場をきれいにすることではない。チームが同じ基準で動く文化をつくることにある。

前回(10月9日)は、3年後のチームの理想像を言葉にするワークをお届けした。今日から、その理想に向けて、目に見える環境を整える段階に入る。最初は、5Sをチームでどう始めるかをお届けしたい。

Chapter 13 5Sを「文化づくり」として始める意味

5Sを「環境整備の手法」としてだけ捉えると、やりっぱなしで終わりやすい。「チームの文化をつくる入口」として捉えると、始め方も続け方も変わってくる。この章では、実際に始める前に押さえておきたい4つの前提を確かめておきたい。知っている話も多いかもしれないが、あらためて読んでほしい。

5つのSのうち、最後の「躾」が本題である

5Sは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字である。まず、それぞれの意味をあらためて確かめておきたい。

整理は、要るものと要らないものを分けて、要らないものを手放すこと。整頓は、要るものをすぐに取り出せる状態にすること。清掃は、汚れをなくし、あわせて点検すること。清潔は、その状態を保ち続けること。そして躾は、決めたことを守る習慣をつくることだ。注目してほしいのは、最後の躾である。前の4つは、目に見える環境を整える作業だ。一方で躾は、人の習慣にかかわる。決めたことを全員が守れるようになったとき、5Sは作業ではなく文化になる。

5Sの説明をチームにするときは、躾の意味から話してみてほしい。「きれいにしよう」ではなく、「決めたことを守れるチームになろう」と伝えるだけで、受け取られ方が変わるはずだ。

なぜ5Sが「風通しのいい職場」につながるのか

「5Sと職場の風通しに、何の関係があるのか」。そう感じる人もいるかもしれない。実は、深くつながっている。

どこに何があるかわからない。共有の棚が散らかっている。使い方のルールが、人によって違う。こうした状態は、メンバーの間に小さな不満や不信感を積み重ねていく。「また誰かが戻していない」という小さないらだちは、口には出されないまま、人間関係の中にたまっていくのだ。逆に、全員が同じ基準で動き、職場が整っていると、「この人はちゃんとしている」という信頼が生まれやすい。5Sは、環境を整えると同時に、同じルールで動く経験を積み重ねて、信頼の土台をつくる活動でもある。

今の職場で、小さないらだちが生まれていそうな場所を1つ思い浮かべてほしい。そこが、5Sを始める候補になる。

担当者に任せると、5Sは定着しない

5Sが続かない大きな原因の1つは、特定の担当者に任せてしまうことである。

担当者が声をかけ、ほかのメンバーは言われたときだけ動く。この形では、5Sは「担当者の仕事」になってしまう。担当者が異動したり、忙しくなったりした途端に、活動は止まる。定着の条件は、リーダーが自ら先に動くことだ。リーダーが毎朝、自分の机まわりを整えている。その姿を見て、メンバーは「これはチームのやり方なのだ」と受け取る。言葉で指示するより、行動で見せるほうが、ずっと早く伝わる。担当者を決めるのは、そのあとでいい。

担当者を決める前に、まず自分の机から始めてほしい。リーダーが動いていることを、メンバーは必ず見ている。担当者は、その後で決めても遅くない。

完璧を目指さずに始める

5Sを始めようとすると、「一度に全部を整えなければ」と力が入るリーダーもいる。けれど、完璧を目指すと続かない。

最初の1週間は、机のまわりの整理だけでいい。2週目に、共有スペースの整頓を加える。3週目に、終業前の清掃を加える。このように、少しずつ範囲を広げていくほうが、チームに根づきやすい。一度に全部を始めると、最初の熱が冷めたときに、全部が一緒に止まってしまうからだ。「あれもこれも」ではなく「今週はここだけ」と範囲を絞ること。それが、続けるためのいちばんの工夫である。

今週取り組む範囲を、1つだけ決めてほしい。「今週は机まわりだけ」と決めて、そこだけは確実にやりきってほしい。やりきった経験が、次の範囲へ進む力になる。

Chapter 14 今週から始める5Sの最初の1歩

「どこから始めればいいか」が決まらないと、人は動けない。この章では、今週のうちに実行できる5Sの最初の手順を、4つのステップに分けてお伝えする。どのステップも、特別な道具や予算はいらない。順番どおりに、1つずつ進めてほしい。

ステップ① リーダーの机まわりから始める

最初のステップは、リーダー自身の机まわりを整えることである。

要るものと要らないものに分け、要らないものは手放す。散らかったリーダーの机は、「ここでは整えなくてもいい」というメッセージを、言葉にしないまま伝えてしまう。反対に、整ったリーダーの机は、「これがこのチームの基準だ」ということを、黙って示してくれる。特別な宣言はいらない。整える姿を、メンバーは見ている。時間は15分もあれば十分だ。引き出しの奥の書類や、使っていない文具から手をつけると、始めやすい。

今日の午後、15分だけ時間を取って、自分の机まわりを整えてほしい。終わったら、その状態を写真に撮っておいてほしい。明日の朝、写真と見比べてみてほしい。

ステップ② チームで「1つだけ」ルールを決める

リーダーの机が整ったら、次はチームで1つだけルールを決める場をつくる。

「使ったものは、元の場所に戻す」「帰る前に、机の上を空にする」「要らない書類は、その日のうちに処分する」。どれでもかまわない。大切なのは、チームで話し合って決めることだ。リーダーがひとりで決めたルールより、チームで決めたルールのほうが守られやすい。自分たちで決めたことには、「守ろう」という気持ちが自然に生まれるからである。ルールの数は、最初は1つだけにしてほしい。3つも4つも決めると、どれも中途半端になってしまう。

15分のミーティングを開いて、ルールを1つだけ決めてほしい。決まったルールは、その場で紙に書いておいてほしい。書いた紙は、次のステップで使う。

ステップ③ 決めたことを「見える化」する

決めたルールが守られているかどうかを、目で見てわかる形にしてほしい。

チェック表をつくる。ルールを書いた紙を貼る。チャットのグループに、その日の様子を投稿する。方法は何でもかまわない。「今日はできた」「今日はできなかった」を、簡単に記録できる形があれば、続けるための土台になる。ここで大切なのは、管理ではなく共有だということだ。「上司が見張っている」ではなく、「チームみんなで確かめ合っている」という感覚をつくってほしい。見張られていると感じると、人は形だけ整えるようになるからだ。

ルールを書いた紙を、全員の目に入る場所に貼ってほしい。週に1度、「先週はどうだったか」を話す時間があれば、さらに定着しやすくなる。

ステップ④ できたことを「小さく認める」

5Sに取り組んでいるメンバーには、必ず一言かけてほしい。

「きれいにしてくれて、ありがとう」「机がすっきりしたね」。それだけでいい。人は、認められると、もう一度やりたくなる。5Sを続けるいちばんの力は、リーダーからの小さな承認である。「当たり前のことだから」と流してしまうと、当たり前のことは、いつの間にかやらなくなっていく。当たり前のことをしている人をきちんと認めるから、当たり前が守られていくのだ。承認は、大げさでなくていい。気づいたその場で、短く伝えるのがいちばん届く。

今週、5Sに取り組んでいるメンバーを見つけて、その場で一言伝えてほしい。名前を添えると、さらに届きやすくなる。伝えた相手と場面を、手帳に1行残しておいてほしい。

Chapter 15 5Sを「続ける仕組み」にする

始めることと、続けることは、別の話である。どんなに良い始まり方をしても、仕組みがなければ、いつか止まってしまう。この章では、5Sを文化として根づかせるための仕組みを、4つの面からお伝えする。どれも、明日からチームで取り入れられるものばかりだ。

週に1度の「5Sタイム」を決める

週に1度、決まった時間に「5Sタイム」を設けてほしい。

長い時間はいらない。5〜10分で十分である。「金曜日の終業30分前は、全員で5分間の5Sをする」と決めるだけでいい。時間が決まっていると、5Sは特別な行事ではなく、毎週の習慣になっていく。最初のうちは、リーダーが声をかける必要があるだろう。けれど続けていくうちに、メンバーが自然に動き始める。声をかけなくても手が動く状態になったら、5Sは習慣として根づいたと考えていい。そこまでは、リーダーが声をかけ続けてほしい。

5Sタイムの曜日と時間を、今週のうちにチームで決めてほしい。決めたら、全員のカレンダーに予定として入れておいてほしい。最初の数回は、リーダーが声をかけて始めてほしい。

全員が目にする場所から始める

5Sを広げていく順番としては、全員が使う共有スペースから始めることをおすすめしたい。

コピー機のまわり、休憩スペース、入口の近く。こうした、誰もが毎日目にする場所が整うと、職場全体の印象が変わる。「最近、なんだかきれいになった」と感じるメンバーが増えると、自分の机も整えようという気持ちが生まれやすくなる。個人の机から広げていくより、共有スペースから始めるほうが、チーム全体に波及しやすいのだ。共有スペースは、チームの「顔」でもある。お客様が最初に目にする場所でもあることを、思い出してほしい。

来週の5Sタイムでは、共有スペースを1か所だけ選んで、全員で整えてほしい。終わったら、整った状態を全員で確かめてほしい。

「なぜ5Sをするのか」を言葉で伝える

5Sを始めるとき、「掃除をしましょう」とだけ伝えるリーダーと、理由まで伝えるリーダーでは、定着の度合いがまったく違う。

「同じ基準で動けるチームになりたい。そのために、まず目に見える環境から整えたい」。こう伝えてほしい。理由がわかると、人は言われなくても動けるようになる。「なぜ」が腹に落ちると、行動が自分のものになるからだ。前回書いた理想の一言と結びつけて話せると、さらに伝わりやすい。5Sは、理想のチームに近づくための、最初の目に見える一歩なのだと伝えられるからである。理由の説明は、一度きりでなく、折にふれてくり返してほしい。

次の朝礼で、5Sを始める理由を2分だけ話してほしい。前回書いた理想の一言を、そのまま使ってかまわない。

止まってしまったら、責めずに再開する

5Sを始めたものの、しばらくすると誰もやらなくなってしまった。そんな経験があるリーダーもいるだろう。

そのとき、止まった理由を誰かのせいにしないでほしい。大切なのは、「また始めよう」と声をかけることである。「しばらく空いてしまったけれど、今日からもう一度やろう」。リーダーがこう言えるチームは、つまずいても立て直せるチームだ。失敗を責める空気の中では、誰も「もう一度」と言い出せない。止まっても再開できる空気は、5Sに限らず、チームのあらゆる取り組みを支える力になる。むしろ、再開の経験を重ねたチームのほうが、粘り強くなっていく。

もし過去に止まった取り組みがあるなら、今週、再開を呼びかけてほしい。最初の一言は、リーダーから発してほしい。

Chapter 16 5Sを超えて——文化として根づかせる

5Sは手段であって、目的ではない。目的は、チームが同じ基準で動く文化をつくることにある。最後の章では、5Sが根づいたチームにどんな変化が起きるのか、うまく進まないときに何を見ればいいのかをお伝えする。そして、今日の最初の行動を決めて、この記事を締めくくりたい。

5Sが根づいたチームの「空気」

5Sが文化として根づいたチームには、共通する空気がある。

探しものをしている人がいない。散らかったままの場所がない。使ったものは、誰に言われなくても元の場所に戻っている。これらは、一人ひとりの習慣であると同時に、チームの文化である。誰かが片づけているのを見かけたとき、ほかのメンバーが「ありがとう」と言える。そんな自然なやりとりが生まれていたら、5Sはもう文化になっている。目指したいのは、管理される5Sではない。自然と手が動く5Sだ。そこまで来ると、5Sのために時間をつくる必要さえなくなっていく。

1ヶ月後に、自分のチームがこの空気に近づいているかを確かめてほしい。今日の職場の様子を、今のうちに1行メモしておいてほしい。

5Sが進まないチームは、何かを抱えている

5Sがなかなか進まないとき、そこには別の問題が隠れていることがある。

たとえば、共有の棚がいつまでも片づかないのは、誰の担当なのかがあいまいだからかもしれない。忙しすぎて、整える余裕がまったくないのかもしれない。あるいは、「言っても変わらない」というあきらめが、チームに広がっているのかもしれない。5Sは、チームの状態を映す鏡でもあるのだ。進まない場所を「だらしない」と片づけず、その裏にある事情に目を向けてほしい。事情がわかれば、打つ手も変わってくる。10月5日にお届けしたチェックポイントも、ここで役に立つ。

5Sが進まない場所があったら、そこを担当しているメンバーに「何か困っていることはある?」と聞いてみてほしい。

環境が整うと、言葉が変わる

職場の環境が整ってくると、不思議と言葉も変わってくる。

散らかった職場では、「あれ、どこにある?」「誰が使ったの?」という言葉が増えがちだ。探しものや確認のための言葉は、ときにとげを含む。環境が整うと、そうした言葉が減っていく。そのぶん、「ありがとう」「助かった」という言葉が入る余地が生まれる。環境を整えることは、職場の言葉を整えることにもつながっているのだ。目に見える環境と、目に見えない空気は、思っている以上に結びついている。次回は、その言葉そのものに目を向けていく。

5Sを始めてから、職場で交わされる言葉がどう変わるかを、意識して聞いてみてほしい。変化に気づいたら、手帳に書き留めてほしい。その記録が、次回の凡事徹底につながっていく。

今日決める、リーダーの最初の行動

ここまで読んでくれたあなたに、今日決めてほしいことが1つある。明日の朝、出社して最初に何を整えるか、だ。

机の上の書類かもしれない。共有スペースの棚かもしれない。どこでもかまわない。大切なのは、今日のうちに決めておくことだ。明日の朝に考えようとすると、朝の忙しさに流されてしまう。決めておけば、体が自然に動く。そして、リーダーが最初に動く姿を、メンバーは必ず見ている。その最初の5分が、チームの文化をつくる最初の5分になる。小さな行動でも、毎朝続ければ、1ヶ月で20回以上の積み重ねになる。

明日の朝、最初に整える場所を、今このページを閉じる前に決めてほしい。決めたら、付せんに書いて机に貼っておいてほしい。朝いちばんに目に入る場所がいい。

今日のまとめ

5Sは掃除の活動ではない。チームが同じ基準で動く文化をつくるための入口である。5つのSのうち、決めたことを守る習慣をつくる「躾」こそが本題だ。

5Sが続かない大きな原因は、担当者に任せてしまうことにある。定着させるには、リーダーが自分の机から先に動くこと。そして、完璧を目指さず、範囲を絞って始めることだ。

今週の手順は4つある。リーダーの机まわりを整える。チームで1つだけルールを決める。決めたことを見える化する。できたことを、その場で小さく認める。

続けるためには、週に1度の5Sタイムを決め、共有スペースから広げていく。理由を言葉で伝え、止まったら責めずに再開してほしい。

次回(10月16日)は、あいさつ・言葉・態度という、もう1つの目に見える環境を整える凡事徹底の実践をお届けする。一緒に見ていきたい。

環境を整えることが、チームの文化を整える最初の一歩になると、あおラボは信じている。あなたの挑戦を、いつも全力で応援している。

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