「選ばせる」側に立つ――8つの力をつなぎ直す

十日間を、一つにつなぎ直す

こんにちは、あなたらしく輝ける未来を共に創造して、キャリア形成や就活の支援をおこなっている【あおラボ】です。

十日間、おつきあいいただき、ありがとう。①自信、②価値観・人間力、③思考力、④人間関係構築力、⑤文章力・面接力・センス、⑥容姿・雰囲気、⑦実績、⑧スペック。八つの要素を、一つずつ見てきた。

でも、白状すると、この八つは、もともと分かれてはいない。ひとつながりの「活躍できる力」を、育てやすいように、私が切り分けただけだ。

だから最終回の今日は、それを一つにつなぎ直す。そして、初日に話した「選んでもらう」から「選ばせる」へ、という話に戻ってくる。最後まで、一緒に見ていこう。

Chapter 37 八つは、もともと一つの力だった

八つに分けたのは、手をつけやすくするためだった。でも、分けたままにしておくと、チェックリストになってしまう。この章では、八要素を一つの力としてつなぎ直す。ここが見えると、努力の効率が、はっきり上がる。

37-1 分けたのは、育てるためだった

「活躍できる力を持て」と言われても、何をすればいいかわからない。だから、初日に、八つに分解した。

分けると、手がつけられる。「今日は自信の話」「今日は文章の話」。範囲がはっきりすれば、練習もできる。これが、分解の目的だった。でも、分解には副作用がある。バラバラの項目に見えて、「全部やらなければ」という気持ちになってしまうことだ。本来は一つの力なのに、八つの宿題に見えてしまう。だから、最後に、つなぎ直す作業がいる。今日は、そのための日だ。

八要素を、宿題リストではなく、一つの力の断面図として見てほしい。見え方が変われば、気持ちも軽くなる。八つの項目を埋める作業ではなく、一つの力を、別の角度から磨いていく作業だ。

37-2 一つを伸ばすと、他も動き出す

八つを別々に鍛えようとすると、時間がいくらあっても足りない。でも、その必要はない。要素同士が、つながっているからだ。

たとえば、自信がつくと、人と堂々と関われるようになる。人と関わる機会が増えると、経験が増え、実績になる。実績を語ろうとすると、文章力が必要になる。文章を整えるうちに、思考力が鍛えられる。そして、うまく話せた経験が、また自信になる。ぐるりと一周する。だから、どこから手をつけても、全体が動き出す。八分の一を伸ばすのではなく、全体を少し押し上げる感覚に近い。

いちばん取り組みやすい要素から、始めてほしい。一つ動かせば、となりの要素も、いっしょに動いていく。効率を考えるなら、得意なところから入るのが、いちばん早い。

37-3 全部そろっている人は、いない

八つ並べると、「これを全部そろえた人が受かるのだろう」と思ってしまう。でも、断言しておきたい。そんな人は、いない。

私がこれまで見てきた学生の中にも、八つすべてが高い人は、一人もいなかった。内定を得た学生も、どこかは弱かった。文章は苦手だが、人と関わる力が飛びぬけている人。目立たないが、続ける力が誰よりある人。それでいい。企業も、完璧な人を探してはいない。「うちで、この力が生きそうだ」と思える一点があれば、十分なのだ。

「全部できていない」ことを、責めないでほしい。そろっていないのが、普通だ。そこから始めればいい。むしろ、でこぼこがあるほうが、その人らしさが伝わることも多い。平らにならすより、高いところを、もっと高くしよう。

37-4 「一点突破」が、いちばん記憶に残る

平均点をそろえた人と、一つだけ飛びぬけた人。企業の記憶に残るのは、後者だ。ここは、はっきりしている。

理由は、単純だ。面接官は、何百人もの学生に会う。その中で思い出せるのは、「あの、商店街を五十軒まわった子」のように、一点が際立った人だけだ。バランスのいい人は、印象が平らになりやすい。だから、弱点を埋めることに時間を使いすぎないでほしい。弱いところは最低限にとどめ、強いところに、時間を集中させる。これが、いちばん効率のいい戦い方になる。先週の連載で話した「強みで勝負する」は、ここにつながっている。

八要素の中で、自分がいちばん伸ばせそうな一つを、決めてほしい。そこに、時間を寄せていこう。決めた一つを、この秋のあいだ、しつこく磨き続ける。それでいい。

Chapter 38 「選ばれる」から「選ばせる」へ

初日に、こう書いた。「志望企業を、選ばせるくらいの気持ちで臨んでほしい」と。十日間を経た今なら、この言葉の意味が、もう少しはっきり伝わると思う。この章では、そこに戻ってみよう。

38-1 準備が、姿勢を変える

「自信を持って臨もう」と言われても、中身がなければ、持ちようがない。気合いでは、姿勢は変わらないからだ。

姿勢を変えるのは、準備だ。自己分析を掘った。経験を実績に変えた。文章の型を身につけた。話す練習をした。この積み重ねがあると、「聞かれても、答えられる」という感覚が生まれる。その感覚が、そのまま姿勢に出る。背筋が伸び、目線が上がる。つまり、順番はこうだ。準備が、姿勢を変える。姿勢が、結果を変える。逆はない。姿勢だけを先に整えようとしても、たいてい空回りする。

自信が持てないときは、気持ちではなく、準備の量を確かめてほしい。足りなければ、足せばいいだけだ。気持ちは動かしにくいが、準備の量なら、今日から増やせる。

38-2 「選ばせる」は、おごりではない

「選ばせる」という言葉に、抵抗を感じた人もいるだろう。上から目線に聞こえるからだ。でも、まったくちがう。

これは、対等に立つ、という意味だ。企業は、あなたに働いてもらいたい。あなたは、そこで力を発揮したい。どちらも、相手を必要としている。本来、上下はない。それなのに、多くの学生が、最初から下から見上げてしまう。すると、へりくだった言葉ばかりになり、かえって「一緒に働く姿」が想像しにくくなる。堂々と、対等に。それが「選ばせる」の中身だ。おごりとは、まるでちがう。

面接に行くとき、「見てもらう」ではなく「お互いに確かめ合う場だ」と思ってほしい。それだけで、背筋が伸びる。そして、対等に話せる学生を、企業のほうも求めている。

38-3 対等に立つと、質問が変わる

対等に立てているかどうかは、じつは、逆質問の場面にはっきり出る。「何か質問はありますか」と聞かれたときだ。

受け身の人は、「特にありません」か、調べればわかることを聞く。一方、対等に立てている人は、こう聞く。「入社三年目の方は、どんな仕事を任されていますか」「この事業で、いま一番の課題は何ですか」。自分がそこで働く前提で、確かめにいく質問だ。この差は、大きい。面接官から見れば、後者は「もう一緒に働く目線でいる人」に見える。準備してきた人だけが、こういう質問を持てる。

逆質問を、三つ用意しておいてほしい。自分が働く前提で考えると、聞きたいことは、自然に出てくる。用意した三つのうち、一つ使えれば十分だ。残りは、次の面接で使えばいい。

38-4 会社を選ぶ目も、同時に育つ

八要素を育てると、もう一つ、いいことがある。企業を見る目が、育つのだ。これは、あまり語られない効果だ。

準備を重ねた学生は、説明会でも、見るところがちがってくる。「この会社は、どこで利益を出しているのか」「社員の話し方から、どんな文化が見えるか」。受け身のときは目に入らなかったものが、見えるようになる。すると、「どこでもいいから受かりたい」から、「ここでなら力を発揮できそうだ」に変わる。選ばれるだけの就活から、自分でも選ぶ就活へ。これは、入社後の満足度に、直接つながっていく。

次の説明会では、「自分はここを選ぶか」という目でも、見てみてほしい。両方向の目を、持っておこう。選ぶ目を持つと、志望動機も、借りものではなくなっていく。

Chapter 39 この夏から、秋へ

ここからは、具体的な行動の話だ。この連載を読んだ今日から、何をするか。そして、秋以降をどう進むか。学年ごとに事情がちがうので、そこも分けて書いておく。読み終えたら、一つでいいので、手をつけてほしい。

39-1 学年ごとの、この夏の使い方

「今から何をすべきか」は、学年によって変わる。ここだけは、まとめて言えないので、分けて示しておく。

一・二年生は、時間がある。だから、内側の四要素(自信・価値観・思考力・人間関係構築力)に、じっくり取り組んでほしい。新しい環境に飛びこむ経験を、たくさん積む時期だ。三年生は、外側の四要素に比重を置く。経験の棚卸しと、文章・面接の練習、そして企業に会うこと。高校生や専門学生も、基本は同じだ。時間があるなら内側から、就職が近いなら外側から。この順番でいい。

自分の学年の欄を読んで、そこから一つだけ選んでほしい。全部やろうとすると、動けなくなる。そして、学年が何であれ、今日が、いちばん早く始められる日だ。

39-2 秋からの半年で、何が変わるか

「夏に少し動いたくらいで、何か変わるのだろうか」。そう思うかもしれない。でも、半年後の差は、思っている以上に大きい。

たとえば、一日三行の記録を続けた人は、二月には五百行の材料を持っている。ゼロから絞り出す人とは、勝負にならない。一日一つ意見を書いた人は、百八十の意見を持っている。面接で「気になるニュースは」と聞かれて、慌てることがない。差がつくのは、能力ではなく、積み上げた量だ。そして、量は、続けた日数で決まる。今日から始めた人が、いちばん多く積める。

半年後の自分を、一度、想像してみてほしい。今日の一歩が、その姿を、確実に変えていく。一日の差は小さくても、百八十日分になると、埋めがたい差になる。

39-3 迷ったら、八要素の地図に戻る

就活が本格化すると、情報があふれる。あの対策もこの対策もと言われて、何から手をつけるかわからなくなる。

そういうときのために、この八要素の地図を持っておいてほしい。「今、自分に足りないのは、どの要素だろう」。そう問えば、やるべきことが絞れる。話がまとまらないなら③思考力。伝わらないなら⑤文章力。語る材料がないなら⑦実績。地図があると、迷子にならない。就活の不安の多くは、「何をすればいいかわからない」から来ている。だから、地図を持っているだけで、不安は減る。

この十日間のまとめを、スマホか手帳に残しておいてほしい。迷ったときに開ける地図が、あなたを支える。何をすればいいかがわかるだけで、不安の半分は消えていく。

39-4 うまくいかない時期の、乗りこえ方

正直に言っておく。就活には、必ずうまくいかない時期が来る。落ち続ける週がある。友人が先に決まる日もある。

そのとき、思い出してほしいことがある。不採用は、あなたの価値の否定ではない、ということだ。相性、タイミング、その年の採用計画。自分ではどうにもならない要因が、たくさん絡んでいる。だから、落ちた数を、自分の点数だと思わないでほしい。そして、こういう時期こそ、生活リズムを整え、人に話すことだ。一人で抱えると、事実以上に大きく見えてしまう。誰かに話すだけで、輪郭が戻る。

つらくなったら、必ず誰かに話してほしい。友人でも、家族でも、私たちのような支援機関でもいい。一人で抱えないことだ。話すことは、弱さではない。立て直すための、まっとうな手段だ。

Chapter 40 最後に、伝えておきたいこと

十日間の連載も、これで最後だ。最終章では、テクニックではなく、就活そのものへの向き合い方について、伝えておきたいことを書く。ここは、覚えなくていい。ただ、心のどこかに、置いておいてもらえたらうれしい。

40-1 就活は、あなたを値踏みする場ではない

就活を、審査や選別の場だと感じている人は多い。だから、始まる前から、身構えてしまう。心が消耗する。

でも、本来これは、値踏みの場ではない。あなたという人と、会社という場所の、組み合わせを探す作業だ。八要素も、あなたを採点するための表ではない。あなたが力を発揮できる場所を、見つけやすくするための地図だ。この捉え方に変えると、就活のしんどさは、ずいぶん減る。評価されにいくのではなく、合う場所を探しにいく。同じ活動でも、心の負担がまるでちがう。

就活を「探す作業」だと、捉え直してみてほしい。それだけで、肩の力が抜ける。探す側に立てば、うまくいかない日も、「ここではなかった」と受け取れるようになる。同じ出来事でも、受け取り方は、選べる。

40-2 落ちることは、否定ではない

これは、Day7でも触れたが、大事なことなので、もう一度書いておく。不採用は、あなたの否定ではない。

企業は、その年に必要な人を選んでいる。同じ人でも、年がちがえば、結果は変わる。実際、去年落ちた会社に、翌年受かる人もいる。人が変わったのではなく、企業の事情が変わっただけだ。だから、落ちた通知を、自分への評価として受け取らないでほしい。事実として受け取り、次に進む。この切り替えができる人が、最後まで走りきれる。心を守ることも、就活の技術のうちだ。

不採用が続いても、自分を責めないでほしい。合う場所は、必ずある。探し続けることが、いちばん確かな道だ。そして、走り続けるためには、自分を守ることが欠かせない。

40-3 働くことは、思っているより面白い

就活の話ばかりしていると、働くことが、つらいものに思えてくるかもしれない。だから、最後に、これも伝えておきたい。

働くことは、思っているより面白い。自分の工夫が、誰かの役に立つ。昨日できなかったことが、今日できるようになる。仲間と何かをつくり上げる。学生時代には味わえない種類の手ごたえが、そこにはある。もちろん、大変なこともある。でも、大変さと面白さは、同じ場所にある。就活は、その入口にすぎない。入口で消耗しきってしまうのは、もったいない。

就活を、ゴールだと思わないでほしい。その先に、もっと長くて面白い時間が待っている。入口の数か月のために、その先の何十年を、こわがらなくていい。楽しみにしていていい、と私は思っている。

40-4 今日の一歩から、始めよう

十日間、たくさんのことを書いてきた。全部を実行する必要は、まったくない。むしろ、全部やろうとすると、何も始まらない。

だから、一つだけ選んでほしい。八要素を書き写す。経験を三十個書き出す。TOEICを申し込む。一日三行の記録を始める。名前をつけてあいさつする。なんでもいい。読んで終わりにするか、一つだけでも動くか。この差が、半年後に、はっきりした形で表れる。知識は、行動に変えて初めて、あなたの力になる。それが、この連載でいちばん伝えたかったことだ。

この記事を閉じたら、五分以内に、一つだけ動いてほしい。その五分が、あなたの秋を、変えていく。あとで、ではなく、今。それだけが、確実に効く。動いた人だけが、次の景色を見られる。

今日のまとめ

八つの要素は、もともと一つの力だった。分けたのは、育てやすくするためであって、全部そろえるためではない。

一つを伸ばせば、他の要素も動き出す。だから、いちばん取り組みやすいところから始めればいい。そして、平均点をそろえるより、一点突破のほうが、企業の記憶に残る。

準備が、姿勢を変える。姿勢が、結果を変える。「選ばせる」とは、おごりではなく、対等に立つということだ。準備を重ねた人だけが、その場所に立てる。

そして、就活は、あなたを値踏みする場ではない。あなたが力を発揮できる場所を、探す作業だ。落ちることは、否定ではない。合う場所は、必ずある。

十日間、読んでくれてありがとう。この連載が、あなたの夏の、小さな地図になっていたら、これ以上うれしいことはない。

最後に、もう一度だけ書いておく。読むだけで終わらせないでほしい。今日、五分だけでいい。一つ、動いてみてほしい。あなたは、準備さえ整えば、堂々と対等に立てる人だと、あおラボは信じている。あなたのこれからの挑戦を、いつも全力で応援している。

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