全員が同じ方向を向く――一枚岩のチームのつくり方

優秀な人が集まっても、成果が出ないのはなぜか

こんにちは、あなたとあなたの組織の未来を共に創造し、組織の活性化を支援している【あおラボ】です。

前回は、挑戦を支える「心理的安全性」を見てきた。安心して発言し、失敗できる土台があれば、人は前を向ける、という話だった。

だが、安全な土台ができても、それだけでは成果は生まれない。全員が、それぞれ好きな方向に、安心して進んでしまっては、力は分散してしまう。

一人ひとりは優秀なのに、チームとしての成果が上がらない。よく見ると、みんなが少しずつ違う方向を向いて、頑張っている。力は出ているのに、合わさっていない。今日は、全員が同じ方向を向く、一枚岩のチームのつくり方を、一緒に考えていく。

Chapter 1 なぜ「同じ方向」が成果を生むのか

「チームワークが大事」と言われても、具体的に何をすればいいのか、わかりにくい。仲良くすること? 協力すること? どれも間違いではないが、核心ではない。チームワークの本質は、全員が同じゴールに向かって、力を合わせることにある。この章では、なぜ「同じ方向」が成果を生むのかを、四つの角度から見ていく。

力はあるのに、成果にならないチーム

メンバーは、みんな優秀だ。それぞれ、一生懸命に働いている。なのに、チームとしての成果が、どうも上がらない。上司は「これだけの人材がいるのに、なぜ」と、首をかしげる。

原因は、能力ではなく、方向にあることが多い。それぞれが、良かれと思って、少しずつ違う方向に力を注いでいる。営業は数を追い、開発は品質を追い、サポートは満足度を追う。どれも、正しい。だが、向きがそろっていないと、力は打ち消し合う。綱引きで、全員が別々の方向に引けば、綱は動かない。同じ方向に引いて初めて、大きな力になる。

チームの成果が伸び悩んでいるなら、能力を疑う前に、「全員が同じゴールを見ているか」を確かめてほしい。方向のズレは、努力の量では、決して埋められない。

成果は「力の大きさ×方向のそろい方」で決まる

成果を上げようとすると、つい「もっと頑張れ」「もっと人を」と、力の大きさばかりに目が向く。だが、それだけでは、思うように伸びないことがある。

成果は、力の大きさだけでは決まらない。力の大きさと、方向のそろい方の、掛け合わせで決まる。同じ100の力でも、方向がそろえば100になり、バラバラなら、打ち消し合って、30にも、20にもなる。逆に言えば、力を増やさなくても、方向をそろえるだけで、成果は大きく上がる。頑張りを増やす前に、向きをそろえる。これは、最もコストの低い、成果の上げ方でもある。

「もっと頑張れ」と言いたくなったら、その前に「全員が同じ方向を向いているか」を見てほしい。方向をそろえるほうが、頑張りを増やすより、ずっと効くことが多い。

目的の共有は「管理」ではなく「意味づけ」

方向をそろえる、というと、上司がルールで縛り、細かく管理することだと思われがちだ。だが、管理を強めても、方向はそろわない。むしろ、部下はやらされ感で、動きが鈍る。

方向をそろえるのは、管理ではなく、意味づけの仕事だ。「何のために、このチームがあるのか」「この仕事は、誰の役に立つのか」。その意味を、くり返し語り、共有する。人は、命令では動かないが、意味には動く。同じゴールの「意味」が共有されたとき、部下は自分の判断で、その方向に進み始める。縛るのではなく、腹落ちさせる。それが、そろえるということだ。

方向をそろえたいなら、ルールを増やす前に、「なぜ」を語る回数を増やしてほしい。目的が腹落ちすれば、細かい管理は、いらなくなっていく。

方向がそろうと、自律が働く

「自分で考えて動いてほしい」。そう願いながら、いざ任せると、思っていた方向と違うことをする。だから、また細かく指示してしまう。この繰り返しに、悩む上司は多い。

部下が自律的に、正しい方向へ動くためには、前提がいる。「どこを目指すのか」が、共有されていることだ。ゴールが共有されていれば、部下は、そのゴールに照らして、自分で判断できる。逆に、ゴールが曖昧なまま任せると、方向がずれる。自律と方向づけは、対立しない。むしろ、方向が共有されているからこそ、安心して任せられる。ゴールが、判断の羅針盤になる。

部下に任せる前に、「私たちが目指すゴール」を、しっかり共有してほしい。ゴールさえ共有できていれば、やり方は任せられる。方向の共有が、自律の土台になる。

Chapter 2 方向がバラバラになる原因

「うちは、ちゃんと目標を掲げている」。多くの上司は、そう言う。だが、目標があることと、方向がそろっていることは、別だ。目標が壁に貼ってあっても、メンバーの心と行動がそろっていなければ、意味がない。この章では、方向がバラバラになってしまう、よくある原因を、四つの失敗事例で見ていく。

目標はあるが、腹落ちしていない

期のはじめに、目標を立てる。全員に共有する。だが、しばらくすると、誰もその目標を意識していない。日々の忙しさの中で、目標は、掲げただけの飾りになっていく。

目標が機能しないのは、掲げ方の問題であることが多い。上から降ってきた数字を、一度伝えただけでは、腹落ちしない。腹落ちしていない目標は、行動を変えない。大切なのは、「なぜ、この目標なのか」を、メンバーが自分の言葉で語れるかどうかだ。語れないなら、それは共有されたのではなく、通達されただけだ。伝えたことと、伝わったことは、違う。

目標を掲げたら、一度、メンバーに「この目標を、自分の言葉で説明して」と頼んでみてほしい。説明できれば、腹落ちしている。詰まるなら、共有をやり直す合図だ。

上司の中だけにある「暗黙のゴール」

上司の頭の中には、明確なゴールがある。「本当は、こうしたい」。だが、それを、はっきり言葉にして伝えていない。「言わなくても、わかるだろう」と思っている。

だが、上司の中にしかないゴールは、部下には見えない。部下は、見えないゴールに向かって、正しく進むことはできない。だから、それぞれが想像で動き、方向がバラバラになる。そして上司は「なぜ、わかってくれないんだ」と嘆く。だが、伝えていないものが、伝わるはずがない。暗黙のゴールは、無いのと同じだ。ゴールは、言葉にして、初めて共有される。

自分の中にある「本当は、こうしたい」を、一度、はっきり言葉にして伝えてほしい。察してもらうのを、あてにしない。明示されたゴールだけが、チームの共通の的になる。

数字だけの目標が、心を動かさない

「売上◯円」「件数◯件」。目標が、数字だけで語られる。もちろん、数字は大切だ。だが、数字だけでは、なぜか力が入らない。メンバーの目が、輝かない。

人は、数字だけでは、心が動きにくい。数字の向こうにある「意味」に、動く。「売上◯円」の先に、「この地域のお客さまの、こんな困りごとを解決する」という意味があると、同じ数字でも、力の入り方が変わる。数字は、目的地までの「距離」を示すが、目的地そのものではない。なぜ、そこを目指すのか。その物語が、人を同じ方向に向かせる。数字と意味は、いつもセットで語る。

数字の目標を伝えるとき、「この数字が達成できたら、誰が、どう喜ぶか」を、必ず添えてほしい。数字に意味が加わると、目標は、心を動かす旗になる。

個人の目標が、全体とつながっていない

一人ひとりには、それぞれの目標がある。みんな、自分の目標に向かって、真面目に働いている。なのに、チーム全体としては、まとまらない。個人の頑張りが、全体の成果に、つながっていかない。

これは、個人の目標と、チームのゴールが、線でつながっていないときに起きる。自分の仕事が、全体のどこに効いているのかが見えないと、人は、自分の担当だけに閉じてしまう。隣の仕事には、関心が向かない。大切なのは、「あなたのこの仕事が、チームのこのゴールに、こうつながっている」と、線を見せることだ。つながりが見えると、人は、全体のために動き始める。

メンバー一人ひとりに、「あなたの仕事が、チーム全体のどこに効いているか」を、言葉で伝えてほしい。全体とのつながりが見えると、個人の頑張りが、チームの力に変わる。

Chapter 3 全員を同じ方向に向ける、上司の関わり

方向がバラバラになる原因がわかれば、打つ手も見えてくる。全員を同じ方向に向けるのは、一度の号令では、できない。日々の関わりの中で、少しずつ、そろえていくものだ。この章では、全員を同じ方向に向けるための、上司の具体的な関わりを、四つ見ていく。特別なことは、必要ない。

「何のため」を、くり返し語る

目的は、一度伝えれば、それで共有できる。多くの上司は、そう思っている。だが、一度伝えただけの目的は、驚くほど早く、忘れられていく。

目的は、くり返し語ることで、初めて根づく。人は、日々の忙しさの中で、「何のため」を、すぐに見失う。だから、優れたリーダーは、同じことを、何度でも語る。しつこいくらいで、ちょうどいい。朝礼で、会議で、1on1で。同じ目的を、手を変え品を変え、語り続ける。くり返しは、飽きられるどころか、チームの背骨になっていく。語る回数が、方向のそろい方を決める。

チームの目的を、今週、何回口にしたかを、数えてみてほしい。少ないと感じたら、増やす。くり返し語ることを、面倒がらない。それが、方向をそろえる、いちばん確実な方法だ。

メンバーの言葉で、目的を語ってもらう

上司が、いくら熱心に目的を語っても、部下が「聞いているだけ」では、なかなか自分ごとにならない。受け取るだけの目的は、他人ごとのまま、通り過ぎていく。

目的が自分ごとになるのは、自分の言葉で語ったときだ。だから、上司が語るだけでなく、メンバーに語ってもらう機会をつくる。「この目標、あなたはどう捉えている?」「あなたの言葉で言うと、何を目指している?」。自分の言葉にした瞬間、目的は、外から与えられたものから、自分のものに変わる。人は、自分が口にしたことに、責任を感じる。語らせることが、当事者にする。

会議で、目的について、メンバーに一言ずつ話してもらう時間をつくってほしい。聞かせるだけでなく、語らせる。自分の言葉にする経験が、方向を、心の底からそろえていく。

全体像と、自分の仕事のつながりを見せる

部下は、自分の目の前の仕事に、集中している。だが、その仕事が、全体のどこに効いているのかは、意外と見えていない。木を見て、森が見えない状態だ。

上司の役割は、その「森」を見せることだ。「あなたの、この地道な作業が、じつはお客さまのこの体験を支えている」。全体像の中に、自分の仕事を位置づけて見せる。つながりが見えると、同じ仕事でも、意味が変わる。単なる作業が、全体に貢献する仕事に変わる。そして、自分の仕事の先に、他のメンバーの仕事が見えると、協力も、自然に生まれる。地図を見せるのが、上司の仕事だ。

メンバーに仕事を渡すとき、「これは、全体のこの部分だよ」と、地図の中の位置を見せてほしい。木ではなく、森の中の一本の木として見せる。つながりが、方向をそろえる。

決めた方向を、日々の判断基準にする

立派な方向性を掲げても、日々の判断が、それと関係なく行われていては、意味がない。会議での決定が、掲げたゴールと、ちぐはぐになっていく。

方向を本物にするのは、日々の判断だ。何かを決めるとき、「これは、私たちのゴールに近づくか」を、判断の基準にする。優先順位に迷ったとき、意見が割れたとき、その方向に照らして決める。方向が、日々の判断に使われて初めて、それは飾りではなく、生きた羅針盤になる。掲げるだけの方向と、判断に使う方向とでは、チームへの効き方が、まるで違う。

何かを決めるとき、「これは、私たちの目指す方向に合っているか」と、一度問うてみてほしい。判断のたびに方向へ立ち返ることが、チームの向きを、ぶれさせない。

Chapter 4 チームで方向をそろえるワーク

方向をそろえるのも、話し合いや号令だけでは、なかなか進まない。ここでも、体験を通して、チーム全員で「同じ方向」を確かめることが効く。この章では、チームで方向をそろえるためのワークを紹介する。どれも、その場で手を動かしながら、全員で方向を見える化していくものだ。

ワークの狙い――方向を「みんなで」つくる

方向は、上司が決めて、伝えるもの。そう思われがちだ。だが、上から与えられた方向は、なかなか自分ごとにならない。受け取っただけでは、心は動かない。

このワークの狙いは、方向を「みんなでつくる」ことにある。上司が一人で決めて配るのではなく、全員で言葉にし、確かめ合う。自分たちで手を動かして描いた方向は、与えられたものより、はるかに強く心に残る。そして、つくる過程そのものが、方向の共有になる。結論だけでなく、そこに至る対話が、チームをそろえていく。

次のチームの時間を使って、この後のワークを試してみてほしい。上司も、一人の参加者として加わる。みんなでつくった方向は、みんなで守られていく。上司が「これがゴールだ」と一枚の紙を配るのと、全員で一緒に一枚の紙を描くのとでは、その後の本気度がまるで違う。手を動かした分だけ、方向は自分ごとになる。

ワーク:チームの「北極星」を一文にする

チームの目指すものを聞くと、人によって、少しずつ答えが違う。長々とした説明はできても、一言では言えない。それは、方向が、まだ共有されていないサインだ。

「北極星」ワークは、チームの目指すものを、全員で一文にまとめるワークだ。まず各自が、「私たちのチームは、何のためにあるか」を、一文で書く。次に、それを持ち寄り、共通点と違いを話し合う。最後に、全員が納得する一文を、みんなでつくる。「私たちは、◯◯を通じて、◯◯に貢献する」。この一文が、迷ったときに立ち返る、北極星になる。短くまとめる過程で、方向が、驚くほどくっきりする。

チームで、目指すものを「一文」にしてみてほしい。うまくまとまらなくても、その議論自体に、価値がある。一文にする過程で、バラバラだった方向が、そろい始める。

ワーク:一人ひとりの役割と目的をつなぐ

チームの目的は決まっても、「では、自分は何をすればいいのか」が、一人ひとりには、つながっていないことがある。全体のゴールと、個人の仕事の間に、距離がある。

このワークは、その距離を、埋めるものだ。チームの北極星を真ん中に置き、メンバー一人ひとりが、「自分の仕事は、この北極星に、どうつながっているか」を書き出す。そして、それを全員で共有する。「あなたのその仕事が、そこにつながっていたのか」という発見が、生まれる。自分の役割と全体が線でつながると、人は、自分の仕事の意味を、あらためて感じる。つながりが見えることが、当事者意識を生む。

北極星を決めたら、次に、一人ひとりの仕事と、それをつなぐ線を、みんなで描いてみてほしい。全員の役割が、一つのゴールにつながる様子を、目に見える形にする。

方向を「見える化」して、壁に貼る

せっかく方向をそろえても、日がたつと、また忘れられていく。決めたその日がピークで、あとは、じわじわと薄れていく。よくあることだ。

そこで効くのが、決めた方向を「見える化」することだ。北極星の一文と、みんなの役割のつながりを、一枚の紙にまとめ、いつも目に入る場所に貼る。会議のたびに、それを見る。判断に迷ったら、そこに立ち返る。見えているものは、忘れにくい。方向は、頭の中に置いておくより、壁に貼っておくほうが、ずっと長く生き続ける。目に入り続けることが、方向を保つ。

決めた方向を、紙に書いて、チームの目につく場所に貼ってほしい。そして、会議のたびに、一度そこに目を向ける。見える化が、そろえた方向を、日々のものにしていく。

今日のまとめ

今回は、全員が同じ方向を向く、一枚岩のチームのつくり方を見てきた。成果は、力の大きさだけでなく、方向のそろい方で決まる。方向をそろえるのは、管理ではなく、意味づけの仕事だ。目標が腹落ちせず、暗黙のゴールを察してもらおうとし、数字だけを語ると、方向はバラバラになっていく。

鍵は、「何のため」をくり返し語り、メンバーの言葉で語ってもらい、全体とのつながりを見せ、日々の判断基準にすること。そして、北極星を一文にするワークが、その方向を、みんなのものにする。

ここまでの連載で、任せ方、動機づけ、対話、失敗、安全、そして方向を見てきた。次回はいよいよ、それらを「体験」で腹落ちさせる、実践ワークをまとめて紹介する。あなたとあなたのチームの一歩を、あおラボはいつも全力で応援している。

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