就活当事者としての自覚をすると、就活に盲目的になってしまう学生がおられます。自分の人生にそれなりに影響を与えることですから、そうなることもあるでしょう。ですが客観的に見ると、就活の結果が人生に多少の影響を及ぼすことはあっても、あなたの人生を決定づけることはありません。
それよりも、就活に留まらないキャリア軸やライフプランといったことをそれまでにしっかり考えてこなかったことに反省すべきでしょう。大切なことは反省から気づきを得ることです。大丈夫です。しっかり気づきを得ることができれば、いくばくかの時間のロスがあったとしてもそこからちゃんと進むことができるのです。
大学生であれば20数年の経験のなかであっても、価値観や自分が面白い、楽しいと思える物事を、幾つか自分の内側に積んできていいます。まずは、そこから棚卸しを始めることです。
たとえば、仕事や自分が働くことについての考えや思いを言語化します。次に、自分の強みを知ることです。強みとはあなたの可能性とも言えます。職業人としての評価を高めるのは、自分の強み(可能性)を、職務遂行を通して武器になるくらい磨いて、強みを惜しみなく発揮できる仕事に就くことが重要なのです。
自己分析では、必ず価値観や強み・弱みの理解がありますが、それはESを書き上げるためでも、面接で上手く話すことでもなく、主体的に自分のキャリア軸を生きるために大切なことなのです。
就活を経て就職した新入社員の多くが、毎年実施される就活での反省点として、「もっと自己分析をしておくべきだった」と語っているのです。
キャリア理論の一つに「4L理論/サニー・ハンセン」があります。ハンセンは、人生には仕事以外にも3つの役割があると説いています。
仕事(Labor):本業副業問わず、収入を得る活動
愛(Love):家事、育児、介護、ペットの世話など、大切な存在と過ごすための時間
学習(Learning):読書、通信教育、セミナー参加などの自己啓発
余暇(Leisure):趣味、ボランティア、地域の活動など、他の3つに当てはまらない活動
ハンセンは、4つのLが組み合わさることで、人生は意味のある全体となると述べています。
パッチワークが、いろんな柄が組み合わさる事で美しくなるように、
人生も様々な役割が組み合わさって初めて、美しく輝く
ハンセンは、「人生を有意義な全体として織り上げる」と表現して、仕事以外の役割の重要性を説いています。
二度とない人生を自分らしく生きるためには、仕事だけではなく人生全体を自分らしく織り上げることを考えることが大切ではないかと思うのです。そこで、仕事・愛・学習・余暇の4つについて、持っている資産の一つである時間をどのように配分するのかをライフステージごとに考えておくことを就活の前に、ある程度自身のなかで考えが整理できていることが理想ではないかと思うのです。
就活前の志望先を選択する際には、自分が満足する仕事に就くことにフォーカスした思考に偏りがちですが、志望先群を決める際には4Lを考慮して選択をすることが大切ではないかと思うのです。
さらにハンセンは、6つの重要課題を私たちに問うています。
- グローバルな状況を変化させるためになすべき仕事を探す
- 人生を意味ある全体像のなかに織り込む
- 家庭と仕事の間を結ぶ
- 多元性と包括性を大切にする
- 個人の転機と組織の変革に共に対処する―チェンジ・エージェント
- 精神性、人生の目的、意味を探究する
6つの課題は職業人に対して問われているものですので、学生によっては全ての問いに答えることが難しいこともあるでしょうが、26・27年卒予定の皆さんは、今一度この課題に向き合ってみるといいでしょう。
今回紹介したようなことを就活前に深考することで、3年3割問題と言われている、若年層の早期離職問題の軽減にもつながるのではないかと考えています。
新入社員の早期離職は、本人のみならず企業や、就活時に関わった方々にとって、一つもプラスを生み出さない、実に悲しい事であることが少なくないことを人材教育の現場で実感して参りました。
近年では、「自分に合っていなかった」といった離職時の声が少なくないようです。そのような声を内に秘めて離職をするリスクを就活前にちゃんと知っておくことも大切なことだと思うのです。
10月末に、26年卒対象にWEBキャリア相談を行います。キャリア形成支援のプロである国家資格キャリアコンサルタントに直接話を聞いてもらえる機会を活用ください。