【職場環境・働き方改革:Day 8】社員の「学習意欲」と「貢献意欲」を高めるキャリア開発支援と教育制度
中小企業のHR担当者の皆様、こんにちは!
前回の記事で、「生産性向上の内製化」のためのスキル教育の重要性を解説しました。しかし、社員が自律的に学び、貢献し続けるためには、「この組織にいれば、自分のキャリアが拓ける」という未来への期待感と、「自分の仕事が誰かの役に立っている」という貢献の実感が必要です。
特に、働き方改革で生まれた「時間的な余裕」を、社員が「自己投資」へと自律的に振り向けられるかどうかが、組織の持続的な成長を左右します。
本日は、ドラッカーの「知識労働者の貢献」の視点と、心理的報酬の重要性を踏まえ、社員の学習意欲と貢献意欲を最大化し、定着に繋げるための具体的なキャリア開発支援と教育制度について深掘りします。
1. なぜ「学習意欲」と「貢献意欲」が定着の鍵となるのか
社員が組織に定着し、長く貢献し続ける最大の理由は、「金銭的な報酬」よりも「心理的な報酬」、すなわち「成長と貢献の実感」にあります。
ドラッカー:知識労働者の最大の報酬は「貢献の機会」である
ピーター・ドラッカーは、知識労働者にとって最も重要な動機付けは、「仕事を通じて自己の強みを活かし、大きな貢献ができる機会」だと説きました。社員が「自分の能力が活かされ、それが組織の成果に繋がっている」と感じる時、彼らのロイヤリティ(忠誠心)は最大限に高まります。
- HRの視点: 貢献の実感を高めるため、社員の仕事の成果が「誰に、どのような良い影響を与えたか」を可視化する仕組みを構築しましょう。
「キャリア自律」の支援が社員の未来への期待感を高める
「自分のキャリアは会社任せ」ではなく、「自分で主体的に築く」というキャリア自律の意識が高い社員ほど、組織へのエンゲージメントも高い傾向があります。会社がその自律的な学習と成長を支援することで、社員の「未来への期待感」が高まり、定着に繋がります。
- 実践策: 自己啓発への費用補助だけでなく、「外部のキャリアコンサルタントによる個別相談」の機会を提供し、社員の自律的なキャリア計画策定を支援しましょう。
「心理的報酬」:貢献の承認が学習意欲を維持する
人間は、自分の努力や成果が「誰かに承認された時」に、最も大きな心理的報酬を得ます。この心理的報酬は、次の行動への強力な動機付けとなり、学習意欲を維持させます。
- HRの視点: 「貢献の承認」を、単なる上司の口頭での褒め言葉で終わらせず、評価制度や表彰制度に組み込み、組織文化として定着させましょう。
働き方改革で生まれた時間を「自律的な学習」に振り向ける支援
働き方改革で残業が削減され、社員に「時間的な余裕」が生まれたとしても、それを「受動的な休息」や「無駄な時間」に費やしてしまう可能性があります。
- 教育の役割: 「自己啓発の重要性」を啓発する研修を実施し、「生まれた時間を自己投資に使うこと」を推奨する組織的なメッセージを発信し続けましょう。
「貢献の機会」を「異動・配置」で意図的に創出する
社員の学習意欲を高める最も効果的な方法は、「新しい挑戦の場(貢献の機会)」を提供することです。社員の「強み」や「学びたいこと」を考慮した戦略的な異動・配置を行うことで、組織内の学習が活性化します。
2. 社員の「強み」と「学習意欲」を最大化するHRDプログラム
社員が自らの強みを最大限に活かし、内発的な学習意欲を持ってスキルアップできるような、具体的なHRDプログラムの設計方法を解説します。
「強み」を活かしたOJTプログラムの設計と運用
OJT(On-the-Job Training)は、単に業務を教える場ではなく、社員の「強み」を実践で活かし、磨き上げる場として再設計しましょう。
- 実践策: OJTトレーナーに対し、「部下の強みを把握し、その強みが最大限に活きるタスクを意図的に割り当てる」という強みベースのOJTの指導法を研修で徹底させましょう。
「メンター制度」を「非公式な知識交換の場」として再定義
メンター制度を、「上司-部下」のような硬直した関係ではなく、「異なるスキルや経験を持つ社員同士が、非公式に知識やキャリア観を交換する場」として再定義しましょう。
- 心理的効果: 非公式な場での知識交換は、心理的安全性の高い学習環境を提供し、メンティーの自律的な学びを促します。
「スキルマップ」の作成と「学習経路」の可視化
組織が求める「スキルマップ」を明確にし、社員一人ひとりが「どのスキルを身につければ、自分のキャリアが次に進めるか」という学習経路を可視化しましょう。
- HRの視点: スキルマップと連動した学習コンテンツ(eラーニング、書籍購入補助など)を提供することで、社員の「何を学べばいいか」という迷いを解消します。
「社内講師制度」の導入による学習の習慣化
社員が自分の知識やスキルを他の社員に教える「社内講師制度」を導入しましょう。「教えること」は、「自分の知識を定着させる」ための最も効果的な学習方法です。
- ドラッカーの視点: 組織内の知識を循環させ、「教え、教えられる」文化を創ることは、「学習する組織」を創るための基本です。
外部のキャリアコンサルタントによる「貢献の棚卸しワーク」の定期実施
外部のキャリアコンサルタントが、社員に対し「この1年で、自分の強みを活かし、組織にどのような貢献ができたか?」を棚卸しさせる「貢献のリフレクションワーク」を定期的に実施しましょう。
- 目的: 貢献の実感を言語化することで、社員の自己肯定感とロイヤリティが向上し、「来年もこの組織で貢献したい」という定着への強い動機付けとなります。
3. 貢献を可視化し、承認する「フィードバック制度」の戦略的設計
貢献を評価し、承認するフィードバック制度は、社員のモチベーションと定着率を左右する最も重要なHR制度です。心理的報酬を最大化するための制度設計を解説します。
評価を「成果」と「行動プロセス(貢献度)」の二軸で設計する
評価制度を、「達成された成果(定量的)」だけでなく、「その成果を達成するまでのプロセスでの貢献(強みの発揮、チームへの協力など:定性的)」という二軸で設計しましょう。
- HRの視点: 特にリモートワークなど柔軟な働き方では、「貢献度(プロセス)」を評価することが、時間や場所にとらわれない公平な評価に繋がります。
「360度フィードバック」を「相互承認」のツールとして活用する
360度フィードバックを、「欠点を指摘するツール」ではなく、「同僚や部下からの貢献への感謝を伝える相互承認のツール」として活用しましょう。
- 実践策: フィードバック項目に「あなたの強みが活かされ、私が助けられた具体的な事例」といったポジティブな相互承認の要素を組み込みましょう。
フィードバック面談を「キャリア対話の場」として機能させる
上司とのフィードバック面談を、「評価を伝える場」ではなく、「社員の強みと貢献を承認し、今後のキャリア目標を共に考える対話の場」として機能させましょう。
- 心理的効果: 上司が「部下のキャリアの味方である」という姿勢を示すことで、上司と部下の間の心理的安全性が高まります。
「貢献が組織に与えた影響」を経営層から直接伝える
年に一度の全社集会などで、「社員一人ひとりの貢献が、組織全体の成果にどのように影響したか」を経営層から直接伝える機会を設けましょう。
- ドラッカーの視点: 組織のミッション(使命)を達成する上での「自分の役割の重要性」を理解することは、最高のモチベーションとなります。
「心理的報酬」を最大化する「サンクス&アワード制度」の導入
小さな貢献や日々の努力を、金銭的報酬だけでなく、「感謝状」「表彰状」「表彰ランチ」といった心理的報酬で承認するサンクス&アワード制度を導入しましょう。
まとめ:成長と貢献の実感が、最高の定着戦略となる
中小企業のHR担当者の皆様、5日間にわたる働き方改革の戦略、本当にお疲れ様でした。最終的に、組織活性化、法令遵守、採用力強化といったすべての成果を定着させる鍵は、「人材教育」にあります。
社員の「学習意欲」と「貢献意欲」を最大化し、「この組織にいれば、自分のキャリアが拓ける」という未来への確信と「自分の貢献が組織に必要だ」という実感を与えること。これこそが、最も効果的で持続可能な定着戦略です。

成長と貢献の実感が、貴社の最大の競争力、そして最高の定着戦略となります。この12月の総点検を、貴社の持続的な成長の第一歩としてください。
2025年を締めくくるHR担当者の皆様へ
この一年、さまざまな形で「あおもりHRラボ」にご参加くださりましたこと、心より感謝申し上げます。HR担当者の皆様の熱意と努力が、日本の労働環境を確実に良くしていくと信じております。
本日12月27日で、弊社の業務も仕事納めとなります。皆様の企業でも、この一年、さまざまな困難を乗り越え、組織のために尽力されたことと存じます。本当にお疲れ様でした。
来年も引き続き、中小企業のHR担当者の皆様が、「社員の可能性を最大限に引き出し、組織の成果に繋げる」ための、洞察に満ちた良質な情報発信に努めてまいります。
来る2026年は、皆様の戦略が社員様の未来を拓く!良いお年となりますよう、心からお祈り申し上げます。