年末年始で自分を「最強の味方」にする5日間ワーク Day 2
Day 1では、セルフマネジメントの3要素の中でも特に重要な「思考」「感情」「身体感覚」の概念と、モヤモヤした出来事を3要素に分解するワークに取り組みました。
Day 2では、そのうちの「思考」に焦点を絞ります。私たちのモチベーションや行動は、普段意識すらしていない「思考のクセ」や「無意識の前提」によって強く影響を受けています。
就活の面接で「頭が真っ白になる」とき、そこには必ずネガティブな自動思考が潜んでいます。
この章では、認知行動療法(CBT)の視点に基づき、自分の「思考パターン」を客観視し、それをポジティブなエネルギーに変えるための具体的な方法を習得しましょう。
行動を制限する「自動思考」と「無意識の前提」の正体
認知心理学では、私たちは意識的な思考とは別に、刺激に対して瞬間的に頭に浮かぶ「自動思考(Automatic Thoughts)」を持っているとされています。例えば、選考に落ちた瞬間、「やっぱり自分はダメだ」と反射的に考えてしまうのが自動思考です。
この自動思考の背後には、「私は常に完璧でなければならない」「失敗は致命的だ」といった、その人固有の「無意識の前提(スキーマ)」が隠されています。
この「思考のワナ」に気づき、客観視するプロセスこそが、自己肯定感を高め、就活における自己理解の質を飛躍的に高める鍵となります。
「自動思考」のパターン:ネガティブなループを断ち切る
自動思考は、しばしば現実を歪曲するネガティブなパターンを持ちます。代表的なものは「全か無か思考」(成功か失敗かの極端な二択)、「過度の一般化」(一つのネガティブな出来事をすべてに当てはめる)、「すべき思考」(義務感で自分を縛る)などです。
このネガティブな思考パターンに気づき、それを客観的にラベリングすることで、その思考が「事実ではなく、単なる解釈である」ことを認識できるようになります。これが、ネガティブなループから抜け出す第一歩であり、思考をハックするための基盤となります。このアウェアネス(気づき)は、建設的な行動を選ぶための冷静な余地を生み出します。
口癖や日記から「無意識の前提(コア・ビリーフ)」を炙り出す
自動思考のさらに奥深くにあるのが、その人の人生観や自己概念を形成する「無意識の前提(コア・ビリーフ)」です。例えば、「自分には価値がない」「世界は危険だ」といった根源的な思い込みです。これを見つけるには、Day 1で記録したモヤモヤの記録や、日常の口癖を分析するのが有効です。
「どうせ無理」「でも」「私なんか」といった言葉は、自己評価が低いという前提を示唆しています。この前提を特定し、「本当にそうか?」と問い直すことが、自己肯定感を高めるための重要な作業となります。
自分の深層心理にある前提を知ることで、就活における「なぜその企業を選ぶのか」という根拠も明確になります。
「脱中心化」の技術:思考と自分を切り離して観察する
セルフマネジメントにおける思考への気づきとは、「思考と自分を同一視しない」ことです。この技術を「脱中心化(Decentering)」と呼びます。例えば、「私は失敗者だ」という思考が浮かんだとき、「私は失敗者だと考えている」というように、思考を客観的な対象として捉え直します。
これにより、思考に感情を乗っ取られることを防げます。この訓練は、マインドフルネスの実践を通じて培われ、面接で想定外の質問が来た時や選考結果を待つ間など、精神的なプレッシャーがかかる状況で、冷静さを保つための強力な武器となります。
この客観視のスキルは、感情的な反応を抑制し、論理的な判断を優先するために必須です。
「ソクラテス式問答法」による思考の前提への挑戦
自分の無意識の前提を修正するためには、「本当にその前提は正しいのか」と論理的に問い詰める「ソクラテス式問答法」が有効です。具体的な問いとしては、「その思考の証拠は何か?」「反対の証拠は何か?(過去の成功体験はないか?)」「その思考を持ち続けることのメリット・デメリットは何か?」などがあります。
このプロセスを経ることで、感情論で固まっていた思考の前提に論理的な亀裂が入り、より柔軟で建設的な新しい解釈を生み出すことができます。例えば、「失敗は悪である」という思考を、「失敗は学びの機会である」という「成長マインドセット」に置き換える訓練です。
この論理的な検証こそが、自信の根拠となります。
就活での応用:ネガティブな自己PRをポジティブな「強み」に変換する
自分の思考パターンを理解することは、自己PRの質を根本的に変えます。「私の短所は、心配性なところです」という自己PRを考えてみましょう。この短所の背後には「失敗を恐れる」という自動思考があります。この思考を客観視し、ソクラテス式問答法で問い直すと、「心配性」は「リスクを事前に特定し、準備を徹底する慎重さ」という強みに変換できます。
自分のネガティブな思考パターンを理解することで、短所と見えていたものが、実は強みと表裏一体であるという深い自己理解に到達し、面接での説得力を飛躍的に高めることができます。
この「内省と変容のプロセス」こそが、採用担当者が求める成長ポテンシャルの証明となります。
自分の「自動思考」を発見するための実践:ワーク 2
Day 2のメインワークである【ワーク 2】「自動思考」発見シートは、皆さんの頭の中で常に流れている無意識の「心の声」を記録し、その背後にある「前提」を探るための具体的な訓練です。
このワークを通じて、皆さんは自分自身の思考の傾向を、まるで第三者であるかのように冷静に観察するスキルを身につけ、感情的な反応から論理的な対処へと移行する準備をします。
ワーク 2:「自動思考」発見シートの作成と記録
まずはノートやデジタルツールに「出来事」「自動思考」「感情」「行動」の4つの欄を作成してください。
出来事(例:エントリーシートで不採用通知が来た)に対し、その瞬間に頭に浮かんだ反射的な心の声(自動思考)、それに伴う感情(絶望、焦燥感)、そしてその後の具体的な行動(SNSを見るのをやめられなくなった)を記録します。これを最低5つ記録し、思考と感情の連鎖を視覚化しましょう。
この視覚化こそが、ネガティブな連鎖反応を客観的に観察し、介入するポイントを見つけるための最も重要なステップです。
自動思考の背後にある「前提」の特定
記録した自動思考を一つ選び、「なぜ私はそう考えたのだろう?」と深掘りする問いを繰り返します。
(例:「自分だけ内定がない」)→「なぜ?」→(皆は成功しているはずだ)→「なぜそう思う?」→(成功しなければ価値がないという前提があるからだ)。
この「なぜ?」の問いを繰り返すことで、「成功しなければ価値がない」といった、より根源的な「無意識の前提」を突き止めます。
この根源的な前提を理解することが、セルフマネジメントによる思考のハックの鍵となり、自己変革のスタート地点となります。
「二重矢印」:思考と感情の相互作用を理解する
記録シート上で、自動思考と感情の間に「二重矢印」を書き入れてみましょう。これは、「思考が感情を生み、その感情がさらに思考を強化する」という相互作用(ループ)を示しています。
例えば、「自分はダメだ」という思考が「絶望感」を生み、その「絶望感」がさらに「自分はダメだ」という思考を強化する、といった悪循環です。
このループの存在に気づくことで、思考、感情のどちらかの要素を意図的に変えることで、ループを断ち切れることがわかります。この理解は、自己制御の有効性を明確に示します。
「代替思考」の生成:ポジティブな解釈を試みる
無意識の前提を特定したら、その前提を打ち消すような「代替思考」(Alternative Thought)を意図的に生成します。古い前提:「失敗は致命的だ」に対し、新しい代替思考:「この失敗は、より深く学ぶ機会であり、次の成功のために必要なデータである」といった具合です。
この代替思考を声に出して読み上げる、あるいは目につく場所に書き出すことで、ネガティブな自動思考が浮かんだときに、意識的に新しい解釈を選び取れるように訓練します。
この訓練が、自己効力感とレジリエンスを高めるための重要な習慣となります。
Day 1のワークとの統合:モヤモヤの記録と思考の関連づけ
Day 1で記録した「モヤモヤした出来事」の「思考」の欄を、今日のワークで発見した「自動思考」と「無意識の前提」で深掘りしてみましょう。これにより、皆さんの内面的な葛藤が、より具体的で論理的な構造として理解できるようになります。
この客観的な構造化が、セルフマネジメントによる行動変容を可能にするための重要なステップです。自分の思考のクセが、どの具体的な出来事で発動しているかを把握することは、予防的なセルフマネジメントに繋がります。
まとめ:思考をハックし、就活の可能性を広げる
Day 2では、自己マネジメントにおける「思考」の重要性を深く掘り下げ、行動を制限する「自動思考」や「無意識の前提」を客観視し、修正するための心理学的なワークを学びました。
思考のオーナーシップを取り戻す
皆さんの思考は、皆さんの「自己認識」によって生まれます。その思考に支配されるのではなく、「思考のオーナーシップ」を取り戻し、意識的に思考を選ぶ訓練をすることが、セルフマネジメントの究極的な目的です。
ネガティブな自動思考は、皆さんの可能性を制限します。この思考のオーナーシップを取り戻すことは、自分のキャリアパスを他人に依存させず、自律的に決定するための基盤となります。
ハックした思考を就活の武器に
自分の思考パターンを客観視し、より建設的な代替思考を生み出すスキルは、就活で直面するあらゆる困難に対するレジリエンス(回復力)を高めます。
この思考のハック技術こそが、不安や焦りを乗り越え、自己PRや志望動機を深く、そしてポジティブに語るための最強の武器となります。自分の思考に気づき、それをコントロールする力を手に入れたあなたは、もう過去の自分に縛られません。
あなたの思考が、就活における可能性を大きく広げます!
自分の思考に気づき、それをコントロールする力を持てば、もう過去の自分に縛られません。
あなたの思考が、就活における可能性を大きく広げます!

【編集後記・あおもりHRラボより】
記事を読んで「もっと深く自分のセルフマネジメント力を高めたい」「このワークを就活にどう活かすか、個別のアドバイスが欲しい」と感じた方は、ぜひ「あおもりHRラボ」にご相談ください。
あおラボでは、Webを活用した個別ワークゼミや、あなたのキャリアに寄り添う伴走スタイルキャリア相談を実施しています。自己理解を深め、自信を持って就職活動に臨むための支援を全力で行っています。お気軽にお問い合わせください。