【職場環境・働き方改革:Day 6】地方中小企業が勝つ!柔軟な働き方を求めるターゲット層へのアプローチ
中小企業のHR担当者の皆様、こんにちは!
前回の記事では、働き方改革の成果を核にした採用ブランディングの戦略を解説しました。その中で、地方の中小企業にとって、リモートワーク、短時間勤務、フレックスといった柔軟な働き方は、都市部の企業との競争を有利に進めるための最も強力な差別化要因となりうるとお伝えしました。
地方企業が抱える「地理的なハンデ」は、柔軟な働き方の導入によって、一転して「地方在住の専門人材」や「潜在的な優秀な労働力」を獲得するための「優位性」に変わる可能性があります。
本日は、この優位性を最大限に活用し、柔軟な働き方を求めるターゲット層を具体的に惹きつけるための、地方中小企業のための戦略的な人材獲得ノウハウを深掘りします。
1. 柔軟な働き方を求めるターゲット層と、そのニーズ
柔軟な働き方(リモート、フレックス、短時間)を求めるターゲット層は、単に「楽をしたい」わけではありません。彼らは、「自分のスキルを最大限に活かしつつ、私生活も充実させたい」という、高い自律性と貢献意欲を持つ優秀な層です。
地方在住の「専門スキルを持つ人材」の潜在ニーズ
ITエンジニア、Webデザイナー、高度な事務処理能力を持つ人材など、専門スキルを持ちながら、都市部への通勤や移住を望まない地方在住の潜在層は多く存在します。彼らは、「場所」に縛られずに「貢献の機会」と「適正な評価」を求めています。
- HRの視点: 求人メッセージでは、「どこに住んでいても、あなたのスキルは最大限に評価される」というメッセージと、「フルリモートでの実績に基づく評価制度」を明確にアピールすべきです。
育児・介護を両立させたい「女性・ミドル層」の戦力化
育児や介護と仕事の両立を強く望む女性やミドル層は、優秀な人材の大きな宝庫です。彼女たちは、「時間的な制約」があるだけで、「能力」や「貢献意欲」は非常に高いことが特徴です。
- ドラッカーの教え: 人手不足時代において、「制約を持つ人材」を戦力化できるかどうかが、企業の競争力を左右します。短時間正社員制度、時間単位の有給休暇など、細やかな制度の充実が鍵となります。
「ワーク・ライフ・バランス」ではなく「ワーク・ライフ・ブレンド」を求める若年層
現代の若年層は、仕事と私生活を完全に分離する「バランス」よりも、仕事を通じて自己成長し、私生活に活かすという「ブレンド」を求めています。柔軟な働き方は、このブレンドを実現するツールとなります。
- 採用ブランディング: 「フレックスタイムで午前中に資格勉強の時間を作り、午後に集中して仕事をする社員の事例」など、具体的なブレンドの成功例を提示しましょう。
セカンドキャリアを求める「シニア・ベテラン層」の活用
経験豊富なシニア・ベテラン層は、「これまでの経験を活かしつつ、体力的な負荷が少ない働き方」を求めています。彼らに「顧問・アドバイザー」や「週3日の短時間勤務」といった柔軟な役割を提供することは、組織の知識や技術の継承に繋がります。
- HRの視点: 「キャリアの知恵」を活かせる柔軟な役割設計(ジョブ型雇用に近い設計)をすることで、彼らを単なる労働力としてではなく、知識資産として獲得できます。
2. 柔軟な働き方で差別化を図るための具体的なアプローチ
地方中小企業が、自社の柔軟な働き方制度を、ターゲット層に効果的に伝えるための具体的なアプローチとノウハウを解説します。
アプローチ①:「地理的フリー」を強調した求人メッセージの作成
求人情報や採用サイトで、「勤務地は自宅(全国どこでも)」と明確に打ち出し、「通勤時間ゼロ」というベネフィットを強調しましょう。これにより、都市部の企業との「場所の競争」から脱却できます。
- 実践ノウハウ: 求人媒体の「勤務地」欄に、地域名だけでなく「リモートワーク可(全国)」と記載し、潜在的なリモートワーカー層に情報を届けましょう。
アプローチ②:「貢献の場」を明確に提示するジョブディスクリプション
募集するポジションについて、「その仕事を通じて、会社や地域にどのような貢献ができるか」という貢献の意義を明確に記載したジョブディスクリプション(職務記述書)を作成しましょう。
- ドラッカーの視点: 知識労働者は「貢献の場」を求めています。ジョブディスクリプションに「単なる作業」ではなく、「解決すべき課題」を明記することが重要です。
アプローチ③:「多様な働き方」をしている社員の「生の声」を動画で公開
リモート、短時間、フレックスといった多様な働き方をしている社員に焦点を当て、「制度導入前と後で、キャリアと私生活がどう変わったか」を語る動画コンテンツを制作しましょう。
- 心理的効果: 「この企業に入れば、自分も両立できる」という「実現可能性」を求職者に感じさせることが、応募への強い動機付けになります。
アプローチ④:「スキルシェア」を前提とした外部人材活用プラットフォームの利用
一時的な専門スキルを補うために、副業・兼業人材やフリーランスと企業を繋ぐ外部プラットフォームを積極的に活用しましょう。これにより、柔軟な雇用形態で優秀な人材を「試用」することも可能になります。
- HRの視点: 外部人材活用は、組織内の知見を広げ、社員の「学びの機会」を提供することにも繋がります。
アプローチ⑤:採用プロセスでの「柔軟性」の体験提供
採用面接や選考プロセス自体を、「いかに柔軟に対応できるか」という企業の姿勢を示す機会としましょう。応募者の都合に合わせた面接時間の調整や、オンラインでの即日対応などが有効です。
- 実践策: 応募者に対して、「お忙しい中ありがとうございます。ご希望の時間帯があれば調整します」という配慮のメッセージを添えることで、企業への好感度を高めましょう。
3. 柔軟な働き方で獲得した人材を定着させるための組織戦略
柔軟な働き方を導入して優秀な人材を獲得しても、その後の定着が重要です。獲得した人材を長期的に組織に繋ぎとめるための組織戦略を解説します。
「貢献の成果」に基づいた公平な評価制度の徹底
リモートワーカーや短時間社員に対して、「働いている時間」ではなく、「生み出した貢献の成果」に基づいて公平に評価する制度を徹底しましょう。「見えないこと」による不公平感は、離職の最大の原因となります。
- ドラッカーの教え: 成果主義は、「成果の定義」が明確であって初めて機能します。評価制度を見直し、定量的・定性的な貢献目標を明確に設定しましょう。
「キャリア自律」を促すための個別キャリア相談の提供
柔軟な働き方をする社員は、「自分のキャリアは自分で築く」というキャリア自律の意識が高い傾向があります。彼らに対して、外部のキャリアコンサルタントによる個別相談の機会を提供し、自律的な成長をサポートしましょう。
- 心理的効果: 会社が「長期的なキャリア形成を支援している」というメッセージは、社員のロイヤリティと定着率を高めます。
「相互理解のためのリフレクション」の定期的な実施
多様な働き方をする社員がいるチームでは、「お互いが、いつ、どのように働いているか」を理解するためのリフレクション(内省)を定期的に実施しましょう。
- 実践策: 「私はこの時間帯に集中して仕事をしているので、緊急時以外は連絡を控えてほしい」など、お互いの働き方のルールを共有し、相互に配慮する文化を育みましょう。
「非公式なメンター制度」による組織への統合
リモートワーカーが組織に孤立しないよう、部署や役職を越えた「非公式なメンター(相談役)」を割り当てましょう。メンターは、業務知識だけでなく、「会社の文化や人間関係」といった非公式な情報を伝える役割を担います。
- HRの視点: メンターには、傾聴スキルと心理的安全性を担保するためのトレーニングを施しましょう。
「柔軟性」を「企業文化」として定着させる
柔軟な働き方を「制度」としてだけでなく、「社員の自律性を尊重する企業文化」として定着させましょう。制度に「柔軟性」がなくても、「自律的な判断と行動」が承認される文化が、最高の定着要因となります。
4. まとめ:柔軟性を武器に、地方中小企業の競争力を高めよう
中小企業のHR担当者の皆様、柔軟な働き方は、地方企業にとって人材獲得の最大の武器です。
都市部との競争で不利になるのではなく、リモートワークや短時間制度を戦略的に活用し、地方在住の専門人材や潜在的な優秀な労働力に積極的にアプローチしましょう。そして、貢献に基づく公平な評価制度とキャリア自律の支援を通じて、獲得した人材を長期的に組織に定着させてください。

柔軟性を武器に、貴社の競争力を高めましょう。来週は「人材教育」の視点から、生産性向上を内製化するためのHRD戦略を解説します。